【OH-58】(おーえいちごじゅうはち)
Bell OH-58 Kiowa(カイオワ)
アメリカ陸軍が運用している観測ヘリコプター。
本機のルーツは、H-13「スー」の後継として陸軍が1960年代に提示したLOH計画までさかのぼる。
このときベル社が試作機として供した「YOH-4A(モデル206)」は、提示価格などを理由にしてOH-6Aに敗れた。
しかし、YOH-4Aに可能性を感じていたベル社は、独自に民間型のベル206A「ジェットレンジャー」を開発し、1965年に初飛行させた。
それまでにない流麗な外観と、ターボシャフトによる強力な機体、それでいて従来のレシプロ式ヘリコプターと変わらない経済性が評価され、民間タービンヘリコプターの草分け的存在となり、多くの機体が使われ続けている。
一方、LOHとして採用されたOH-6Aが納期や価格などの面で問題を起こしたため、急遽代替の機種が必要とされた。
そこで陸軍は1968年に再度入札をおこない、ジェットレンジャーを軍用に再々設計したOH-58「カイオワ」を採用するに至る。
1981年にはAHIPにより、改善型のOH-58D「カイオワ・ウォリアー」が開発される。
ローターを複合材の4枚ブレードにし、エンジンを強化して飛行性能を強化するとともに、MMSを取り付け、AH-64などの味方機にデータリンクして観測情報を送信する。
また、初期引渡し分のうち15機は自身も武装することが可能となり、AIM-92空対空ミサイル、AGM-114対戦車ミサイル、M260ロケット弾ポッドや12.7mm機銃などを運用することができる。
近年では、OH-58Dをさらに強化した民間型のベル407などが登場し、アメリカを代表するロングセラー機のひとつとなっている。
OH-58Dの発展型としてARH(武装偵察ヘリコプター:RAH-66の代案)型のARH-70が開発されていたが、コスト高騰等の理由により開発中止。
現在は延命改修型のOH-58Fが開発されている。
スペックデータ(OH-58D)
乗員 | 2名 |
全長 | 12.85m |
胴体長 | 10.48m |
全高 | 3.93m/2.73m(MPLH折り畳み時) |
主ローター直径 | 10.67m |
回転円盤面積 | 89.4㎡ |
空虚重量 | 1,492kg |
最大離陸重量 | 2,495kg |
最大兵装搭載量 | 907kg |
エンジン | アリソン T703-AD-700ターボシャフト(推力485kW)×1基 |
速度 (最大/巡航) | 128kt/114kt |
超過禁止速度 | 130kt |
燃料容量 | 454リットル |
海面上昇率 | 4,875m/min |
実用上昇限度 | 4,575m |
ホバリング高度限界 (IGE/OGE) | 3,050m/2,105m |
航続距離 | 223nm |
兵装 | M296 12.7mm機銃 AIM-92 2連装ランチャー×2基(左右1基ずつ。) M279 2連装ランチャー×2基(左右1基ずつ。AGM-114を搭載。) M260 7連装ロケット弾ポッド(ハイドラ70 70mmロケット弾を装備)等 |
OH-58のバリエーション
- YOH-4A:
初期試作型。以降の機種とは異なり球形の風防機首を持つ。 - ベル206A「ジェットレンジャー」:
OH-4Aを改良した民間機型。 - TH-57A「シーレンジャー」:
206Aをアメリカ海軍が練習機として採用したもの。 - OH-58A「カイオワ」:
206Aを再々設計した観測ヘリコプター型。 - OH-58B:
オーストリア空軍向け。 - OH-58C:
エンジンの換装(アリソン T63-A-720(313kW))や電子機器類のアップグレードが行われた型。
アメリカ陸軍及びドミニカ共和国が採用した。 - ベル206B:
206Aのエンジンを420馬力に強化したタイプ。 - TH-57B:
206Bを米海軍が練習機として採用したもの。 - TH-67「クリーク」:
206Bを基にした米陸軍用練習機。 - ベル206L「ロングレンジャー」:
キャビンを延長した7人乗りタイプ。 - ジェミニST:
206Lをトライドエア社が双発に改造したもの。 - ベル206LT:
ジェミニSTの同等品をベル自ら新規製造したもの。
- OH-58D「カイオワ・ウォリアー」:
飛行・観測能力を強化し攻撃力を追加したもの。 - OH-58D(I): D型の武装携行型。
兵装パイロンが胴体両側面に取り付けられ、トランスミッションの出力が強化されている。 - ベル406CS「コンバットスカウト」:
OH-58Dのアビオニクスを制限し、武装を軽装備化した輸出モデル。 サウジアラビア陸軍で13機が使用。 - OH-58X:
簡易ステルス型として開発され、1992年に初飛行したが採用はされていない。 - OH-58F:
OH-58Dの延命改修型として開発中。2013年初飛行。
アビオニクスが強化され、MMSの代わりに新型FLIRが採用されている。
OH-58 (航空機)
(OH-58 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/05 15:39 UTC 版)
OH-58D カイオワ・ウォリア
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