食品中の抗酸化物質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/27 02:14 UTC 版)
活性酸素種の違いによって活性も異なるため抗酸化物質の測定はその物質により多様である。食品科学では、酸素ラジカル吸収能 (ORAC) が食品、飲料および食品添加物の抗酸化物質濃度を評価する最新の業界標準になっている。米国食品医薬品局(USDA)が食品中のORACの値をかつて公開していたが、USDAは、食物に含まれる抗酸化物質の強さが体内の抗酸化作用に関連しているという証拠がないため、Selected Foods Release 2(2010)表の酸素ラジカル吸収能(ORAC)を示す表を2012年に削除した。この他にフォリン-チオカルトー試薬を用いる方法やトロロックス等価抗酸化能力分析法(TEAC法)がある。 抗酸化物質は野菜、果物、穀物、卵、肉、マメ、木の実などの食品に多量に含まれている。リコペンやアスコルビン酸のようないくつかの抗酸化物質は長期貯蔵または長時間の調理によって分解するものがある。一方、全粒小麦や茶などに含まれるポリフェノール系抗酸化物質は安定である。また、野菜に含まれる数種のカロテノイド類のように抗酸化物質の生物学的利用能を増加させることもできるため調理や加工による影響は複雑である。一般に、加工の過程で酸素に晒されるため、加工食品は非加工食品よりも抗酸化物質が少ない。 抗酸化物質抗酸化物質が多く含まれる食品ビタミンC(アスコルビン酸) 果物、野菜 ビタミンE(トコフェロール、トコトリエノール) 植物油 ポリフェノール(レスベラトロール、フラボノイド) 茶、コーヒー、豆、果物、オリーブオイル、チョコレート、シナモン、オレガノ、赤ワイン カロテノイド(リコペン、カロテン、ルテイン) 果物、野菜、卵 その他のビタミンは体内で合成させる。例えば、ユビキノール(補酵素Q)は腸で吸収されにくく、ヒトではメバロン酸経路にて合成される。また、グルタチオンはアミノ酸から合成される。グルタチオンは腸ではシステインとグリシンとグルタミン酸に分解されてから吸収されるため、グルタチオンの経口投与は体内のグルタチオン濃度にはほとんど影響がない。アセチルシステインのような含硫アミノ酸が高濃度であることによりグルタチオンが増加するが、グルタチオン前駆体を多く摂取することが成人健常者において有益であるという根拠はない。前駆体を多く摂取することは急性呼吸窮迫症候群、蛋白エネルギー栄養障害の治療、もしくはアセトアミノフェンの過剰摂取によって生じる肝臓障害の予防に役立つと考えられている。 食品中のある成分は酸化促進剤(プロオキシダント)として作用することにより抗酸化物質の含有量を経時的に低減させることがある。抗酸化物質が消耗した食品を摂取することで酸化ストレスが惹起される時には、身体は抗酸化防衛能を高めるように反応することがある。イソチオシアン酸やクルクミンなどは異常細胞の癌性細胞への変質を遮断したり、既存の癌細胞を殺したりする予防についての機能性化学種であると考えられている。 飲み物 抗酸化能 (n mol/mL) 赤ワイン 172 - 267 白ワイン 147 - 214 ビール 12.3 - 17.0 日本酒 0 コーヒー 23.6 緑茶 16.8 - 27.8 ほうじ茶 11.8 - 17.3 紅茶 5.5 昆布茶 0 各種飲み物の抗酸化能を調査した中で、赤白双方のワインの抗酸化能が高いと報告した例がある。
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