い‐もの【鋳物】
鋳物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/27 03:33 UTC 版)
鋳物(いもの)とは、加熱して溶かした金属を型に流し込み、冷えて固まった後、型から取り出して作った(鋳造)金属製品。
概説
高温で溶融した液体の金属を、砂、耐火物、金属などで作られた型に流し込み、凝固させて目的の形状を得る加工法を鋳造という[1]。鋳物は複雑な形状のものを一体型で作り出す点が魅力とされる[1]。金属を叩いて気泡を潰したり、結晶を整えたりする鍛造と比べて、鋳造は強度が劣るが、手間がかからない[2]。
鋳物は、材質によって銅鋳物、銑鉄鋳物、ステンレス鋳鋼、アルミニウム鋳物、マグネシウム鋳物、亜鉛鋳物などに分けられる[1]。歴史的には、銅合金から鋳鉄、鋼(鋳鋼)に変遷し、さらにアルミニウムやマグネシウムの鋳物が登場した[1]。
鋳型造型技術には古代には石型や粘土型が用いられた[3]。木で模型を作り、それをもとに砂で鋳型を造る方法は、18世紀以降のヨーロッパで鉄の溶解技術が進歩するのとともに発達し完成された[3]。
砂を用いる利点として以下が挙げられる。
- 型の成形が容易である
- 熔けた金属が固まる時にガスを放出するが、砂型は砂粒の間に適度な隙間があり、ガスが速やかに放出される。
- 砂の比熱は小さく、また保温性があるので、流し込んだ金属は急冷される事無く、緩やかに冷却されるので良質の鋳物が出来る。なお、金属の比熱への寄与は、格子[4]よりも電子[5]においてより大きい。
- 製品を型から取り出す時には、簡単に型が崩せるので複雑な造形が可能。
- 使用後の砂型は、砕いた後、成分を調整して再利用が出来る。
現代では自動車用部品、携帯電話、パソコンフレームなど工業製品に幅広く利用されている[1]。
日本の鋳物
日本に鋳物技術が伝わったのは弥生時代と推測され、銅鐸や銅鏡、銅剣などが出土している。古墳時代や飛鳥時代以降、各種の器や工芸品、仏像などが作られた。
金属製品やその代替品の大量生産・供給が難しかった江戸時代以前には、各地で鋳物づくりが行われた。岩手県の南部鉄器、富山県の高岡銅器などは、その歴史を受け継ぐ伝統工芸である。埼玉県川口市のように、明治時代以降に、近代的な金属工業として鋳物産業が集積した地域もある[6]。
日本では鋳物師(いもじ)という称号があり、「鋳物師」「鋳物師町」といった地名が各地に残る。朝廷から免許を受けた「御鋳物師」の流れを受け継ぐ16事業者が、現在も「御鋳物師会」を組織して1~2年ごとに交流会を開いている[7]。現代に残る鋳物師としては、鎌倉時代に創業した梵鐘製造の小田部鋳造(茨城県桜川市)、戦国時代に岐阜城下で創業したナベヤなどがある。
脚注
参考文献
- 板倉勝高「文政11年改諸国鋳物師名寄記」『流通經濟論集』第3巻第1号、1968年、57-68頁。
- 板谷憲次「御鋳物師会と天明鋳物」『素形材』第48巻第10号、素形材センター、2007年、32-35頁、ISSN 0910-1985、 オリジナルの2020年8月1日時点におけるアーカイブ。
関連項目
外部リンク
鋳物
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桑名の代表的な地場産業で全国的に高い知名度を持つ。かつては日本の二大鋳物産地の一つとして「東の川口、西の桑名」と言われた。桑名には約34社の鋳物工場があり、1,300人以上が従事している。製品出荷額は約394億円(2002年)で、全国でも有数の規模を誇っている。製造される鋳物製品は多種にわたっており、日用品、土木建築用資材(マンホール、グレーチングなど)、産業機械器具部品、電動機器部品などがある。
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鋳物
「鋳物」の例文・使い方・用例・文例
- われわれは高品質の鋳物製品作りに日々努力しています
- 鋳物が金型からすっぽりとれた。
- 青銅の鋳物.
- その鋳物にはきずがある[ひびが入っている].
- 鋳物から鋳型をはずす.
- これは鋳物か打物か
- 鋳物師
- 鋳物場
- 鋳物の型
- かなり初期の方法で稼働する鋳物工場
- 鋳物用の垂直な筒状の溶銑炉
- 金属の鋳物を作る労働者
- 鋳物をつくる型
- (鋳型に溶融金属を流し込んで)鋳物をつくること
- 鋳物を彫金のように見せかけたもの
- 鋳物の各部を付着させる
- 鋳物師という職業
- 鋳物製造の工程で,余分に溶融金属を補給すること
- 鋳あげただけで,磨いていない鋳物
- 定盤という,鋳物と石膏細工の底を検査するための鉄板
鑄物と同じ種類の言葉
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