ねずみ鋳鉄
黒鉛が片状に晶出している鋳鉄で、破面がねずみ色をしていることからこの名がある。普通鋳鉄とも呼ばれ、もっとも一般的な鋳鉄である。JIS G5501-1995では、種類はFC100~FC350までの6種類に分類される(引張り強さ100N/mm2以上~350N/mm2以上)。耐食性、耐摩耗性、振動吸収能などがよく、かつ鋳造性がよいので日用品から重工業材料まで用途が広い。自動車用鋳物部品では、シリンダーブロック、ブレーキドラムなどに使用されている。最近は高い材質目標に対応するため、ねずみ鋳鉄にクロム、スズ、アンチモンなどを添加して、硬度や強度のアップをはかることが多い。代表的なねずみ鋳鉄の成分は、FC250の場合、炭素3.00~3.40%、ケイ素1.85~2.25%、マンガン0.60~0.90%、リン0.30%以下、硫黄0.10%以下、そのほか合金元素の添加も可能である。
参照 強靭鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、鋳鋼ねずみ鋳鉄
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/03 00:19 UTC 版)
ねずみ鋳鉄(ねずみちゅうてつ、別名:普通鋳鉄)とは、鋳鉄の一種。片状のグラファイト(二次元断面の顕微鏡観察面での形状、三次元的には異なる)を含有し、基地組織によってその呼び名は異なる。ねずみという名称は破面が灰色、つまりネズミ色であったことに由来する。
鋳鉄は炭素量の多い鉄-炭素合金で、定義上2.14~6.67%の炭素を含む。一般的には2.5~3.5%の炭素を含むものが利用されている。この組成の鋳鉄を溶融させて鋳造した後、ゆっくりと冷やすとねずみ鋳鉄になる。炭素が片状のグラファイト(黒鉛)として存在するのが特徴である[1]。
鉄鋼材料としては引張強さが小さく展延性にも乏しい。これは金属中の片状黒鉛によると考えられている。一方で切削加工性、耐摩耗性、耐熱性や減衰性については優れている。用途の例としては、耐摩耗性を活かして機械の摺動面やマンホールの蓋、耐熱性を活かして炉や防火戸、減衰性を活かして機械部品などがある[1]。ブレーキディスクとしてもよく使用される。
なお、ねずみ鋳鉄は溶けた鋳鉄をゆっくりと冷却した場合に生じるが、急冷した場合は白鋳鉄という別の組織を有する金属になる。また、冷却速度によってはねずみ鋳鉄と白鋳鉄の中間的な組織(まだら鋳鉄)になることもある。
規格
JISではねずみ鋳鉄品として引っ張り強さや硬さなどの機械的性質が定められている。記号はFCであり、それに続く3桁の数字は引っ張り強さの基準を表す。
- JIS G 5501:1995 ねずみ鋳鉄品
- FC100
- FC150
- FC200
- FC250
- FC300
- FC350
参考文献
- ^ a b 坂本卓 『絵とき 機械材料 基礎のきそ』日刊工業新聞社、2007年、84頁-頁。ISBN 978-4526058479。
関連項目
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