配管設計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/23 15:20 UTC 版)
「福島第一原子力発電所1号機の建設」の記事における「配管設計」の解説
1号機の配管工事はGEより東芝がそのほぼ全てを受注し、更に当時関連会社だった石川島播磨に発注された。 主配管系全体の特徴を火力発電と比較すると、「原子炉-タービン-復水器-復水ポンプ-低圧給水加熱器-給水ポンプ-高圧給水加熱器-原子炉」の閉ループを形成する。このループはボイラの代わりに原子炉を設置し、脱気器を除いたもので大幅な差異は無い。しかし、原子炉、原子炉補機に関してはボイラ周りの系統と大幅な差異があった。『東芝レビュー』1969年1月号では同社が施行した配管系が一覧化されているが、総数34系統の内、原子炉周りの配管系は17系統であり、原子炉周りの殆どは安全上必要とされ設けられた系統であった。 本機の建設当時配管設計において特徴的な事項として挙げられたのは下記であった。 設計時の考慮 原子炉系配管には殆ど初層TIG溶接によるルートパス溶接が採用され、裏当金の採用は許されず、突合せ継手を使用する点が火力発電と相違する。ルートパス溶接は一般機器の溶接に比べ高度の技量を必要とし、溶接士の技量に依存する面が大きいので技量試験による確認がキーとなる。ただし、補助系配管では裏当て金も使用され、直径3インチ以下の小口径配管では隅肉溶接を採用する。但しインサートリングの使用は認められている。 格納容器を貫通(ペネトレーション)する部分には蛇腹(ベロー)を使用しフレキシビリティを持たせる。 現場の施工環境に即した施工法の研究が不足している。例えばインサートの要否・形状、アルゴンパージの要否、ステンレス系に対する層間温度の維持方法。 格納容器、原子炉建屋内では作業スペースが限られている上各系の配管が交錯しており、現場の溶接条件が悪い。そのために溶接士に特別の訓練を実施する必要がある。 配管加工 素管は鋼管の形状に仕上がった物を鉄鋼メーカーより入手するが、停止時冷却系統、給水系統、復水系統、一次格納容器スプレイ系など、呼び径が大きく厚肉の配管については、鋼板を入手してこれを曲げ加工によって成型する手法を取る。 曲げ部にはエルボの使用を優先し、現物合わせの施工が可能なクランプダイブ等による曲げ加工は忌避される傾向にある。特にステンレス配管の場合、熱間曲げによる温度管理、酸化防止策、熱処理、洗浄等で問題が多く、エルボの使用が望ましいとされた。 ルートパス溶接 初層TIG溶接によるルートパス溶接の前には、次の作業が重要である。 事前に配管レイアウトを図面通り配列する「開先合わせ」の作業。溶接面からは開先精度の維持が重要で、ルート間隙、食い違いは初層の溶け込み不良、抜け落ちに繋がるものとして、当時から警戒されていた。 もう一つの事前作業として、管内面が酸化するのを防止するため、溶接準備としてバックパージの実施が必要である。酸化度合いは炭素鋼、低合金鋼ではバックパージ不要な程低いケースもあるがステンレス鋼では激しいので完全なパックパージを必要とする。その一方で、使用するアルゴン、ヘリウム等の不活性ガスをチェックする方法が当時は不十分で、管系が長い場合や継手付近にオープニング(開口)がある場合、バックパージが不十分になりやすい。また、原子炉の大容量化により管の呼び径も大きくなる傾向にあり、大量のガスを使用し溶接の経済性も悪化する。更に当時は、ルートパス溶接で欠陥が発生した場合、「欠陥の補修は殆ど不可能に近い」とされていた。 突き合わせた開先にインサートリングを挟まずそのままTIG溶接を実施した場合、全姿勢で裏波ビードの仕上がりが良好となるが、本機のようなBWRでは初層条件がシビアな反面、上向き溶接に対してはかなりの熟練を要した。 異種金属溶接 素材から溶接を見直した場合、異種金属溶接について検討が必要であった。BWRでは炭素鋼と低合金鋼、或いはステンレス鋼といったように、異種金属の配管同士を溶接する機会がある。この場合溶接棒などは一般に溶接の困難な側(炭素鋼とオーステナイト系ステンレスの場合なら後者)に合わせる。またフェライト量の確保などの問題から溶接条件を良くするため、異種金属配管は工場溶接を基本とし、現地では同種金属溶接とする。このため工場溶接ではセイフエンドと呼ばれる同種金属溶接用の短い配管が溶接されて出荷される。 開先検査 BWRを含めた原子力発電の一次系配管が複雑な形状を取るのは、放射線遮蔽を考慮しているためでもある。その上、熱膨張による応力を低減する目的のコールド・スプリングが施工される配管系は開先合せが困難となる。 破壊モード 破壊モードとしては応力腐食割れの語こそ使用頻度が少ないものの、低応力下、材料鋭敏化での塩素、酸素による粒間割れなどは当初からオーステナイト系ステンレスなどで予測されていた。しかし、GEの予測は甘く、1号機建設後対策のため、放射化が問題視された配管については逐次SUS316L等の材料に置き換えされていった。 管系支持装置 火力発電所と比較した場合、蒸気条件が低く、熱膨張による管系の変位は相対的に少ないが耐震設計上の要求が多く、レストレイント、次いで油圧防振器が多用される。再循環系にはバネ式防振器が耐震目的で使用される。
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