絹本著色唐太宗花鳥図とは? わかりやすく解説

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絹本著色唐太宗花鳥図〈小田野直武筆/〉

主名称: 絹本著色唐太宗花鳥図〈小田野直武筆/〉
指定番号 1971
枝番 00
指定年月日 1999.06.07(平成11.06.07)
国宝重文区分 重要文化財
部門種別 絵画
ト書
員数 3幅
時代区分 江戸
年代
検索年代
解説文:  小田野直武一七四九-八〇年)は、その代表作絹本著色不忍池図」(昭和四十三年四月二十五日指定重文)にみるように、江戸時代後期洋風画最初期清新な印象洋風画生み出した秋田蘭画称される画派代表する画家である。
 三幅うち中幅にはを手にした唐朝第二皇帝太宗を描く。太宗は、山水図衝立背障として濃い青色雲文金襴をかけた椅子坐した姿で表されている。衝立傍らには文房具置いた卓が配される太宗左手の掌にをのせ、正面よりやや左を向いて前方見据えている。本図飢饉もたらしたの害を民に代わって自らが負うため、臣下制止にもかかわらず飲み込んだという『貞観政要』の故事に基づく鑑戒主題作品であり、秋田藩士である直武が漢画伝統的ジャンル西洋画法で表現しようしたものである。
 細部描法精細で、隈を用いた指の立体的な把握顔貌細部描写、『解体新書』の耳によく似た耳の表現等は、それまで伝統的画法とは明確に異なる表現を示す。ことに注目されるのは、それまで日本絵画にも中国絵画にも主要な要素であった輪郭線が「唐太宗図」にはほとんどみられず、代わりに墨の隈、彩色濃淡隣り合わせ境界輪郭表現している点、また、一方向からの光を表現しようとしている点である。
 例えば、雲龍文のある黄色の袍は両脇袖口・膝で幾重にも襞をなすが、通常太い墨線によって表される衣文はまったくなく、墨隈用いて襞を表現している。また、他にも何らかの塗料重ねて塗ったらしく、襞の周辺部分の黄色暗く発色している。一方太宗頭部右側面、右肩垂下する長い右袖には陰影を表す墨隈施されている。さらに床におちる椅子と沓台の影、卓の上文房具の影も比較的濃い墨隈用いて画面向かって右から左方向へと描かれており、光が画面右方向から射していることを表している。
 さらに沓台の螺鈿細工、卓の朱漆青花の壺等には、各々質感表現追求されている。
 直武の主君であり、直武と並ぶ秋田蘭画代表的作家である第八秋田藩佐竹曙山一七四八-八五年)は、『画法綱領』(安永七年奥書)において、「画ノ用タルヤ似タルヲ貴ブ」と述べ、より実物に似る絵画優位であると主張し、「書家ニ倣イテ筆法ヲ主トスルトキハ実用ヲ失ウ」と述べて筆法基本とする画法退け、「無筆跡」画を唱導している。曙山の命を受けた直武の江戸で絵画学習には宋紫石通じた写生的な沈南蘋画風の強い影響看取されるが、西洋画法を身につけることこそが主眼であったはずである。本図輪郭線を回避する強い傾向と光の方向性意識した表現は、筆法重視した南蘋派とは一線を画するものであり、『画法綱領』が主張する画法を直武が忠実に実践していたことを証している。
 次に左右幅は、「不忍池図」の芍薬匹敵する花鳥表現である。二幅の「花鳥図」は、ともにはるかに遠景をのぞむ水辺であり、右幅の「白梅図」は、白梅古木青木二羽を、左幅の「海棠小禽図」は海棠八手に番らしい黒色小禽配している。これら花鳥画陰影法は「唐太宗図」ほど顕著ではないが、秋田蘭画特徴的な遠近表現みられるまた、葉叢緑色部分のみに塗布されたものがあり、現在は変色している。確証はないが、前述の曙山著作の「丹青部」にアラビアゴムとある珍しい舶来ゴムの艶を表現するために塗布され可能性考えられる
 このように、「唐太宗図」は現在知られる武人物画中最も優れた出来映え示し花鳥画以上に西洋画法の実践顕著であり、秋田蘭画独自の特質がよく表れている。「花鳥図」も「唐太宗図」同様、技巧的に優れている本作品は伝統的に漢画様式表現されてきた主題西洋画をもって表した秋田蘭画特質をよく示す優品といえよう
 なお、「唐太宗図」には画面左下に「直武画」の款記と白文方形「直武之印」印と朱文方形子有」印がある。「白梅図」は画面右下隅に白文方形「直武之印」印、「海棠小禽図」は画面左下隅に白文方形「直武之印」印を捺す



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