第2部の惨状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/31 06:01 UTC 版)
第2部は、ディストピアと化した2120年のアメリカ(主にシカゴ周辺)が描かれる。第2章からが本編であり、ジュリアン9世の語りが始まるのだが、自己紹介を交えながら、1頁の間に1~6の点が述べられる(『月からの侵略』 25頁、『月人の地球征服』 27頁)。また、続く5頁で、7~14の事が語られる(『月からの侵略』 26頁-30頁、『月人の地球征服』 28頁-32頁)。以後、折に触れて15以下の事実が提示される。 結婚制度が非合法となって久しい。 読み書きのできる知識階級は、急速に減っている。 アメリカ人の印刷技術は失われた。 公共図書館は、100年ほど前(2020年頃まで)に破壊され尽くした。 書籍の私有は知識人の証であり、カルカール人から侮蔑・迫害の対象とされる。 シカゴは50回ほど戦乱の場になり、廃墟と化した地域がある。 <24人衆>は読み書きを教えることを禁じている。しかし、命令の発布には文書を使う。 カルカール人は印刷局を一つ残しており、そこで紙幣を発行している。しかし、貨幣経済は崩壊しており、火をつける以外に用途がない。 税は金銀か農作物でしか受け取らない。 金銀は、親の代までに姿を消している。 物々交換は、カルカール人が内容を把握するために市場で行うのが原則となっている(腐りやすい物などは例外)。ただし、相場は一定しておらず、課税の際には最も高かった相場が適用される。 鉄道を維持する技術者がいないので、廃止は時間の問題。2120年現在、ワシントンからゲーリー(ハヤワカ版ではゲイリー)までを一週間で走破するのは無理。 また、過去75年間(つまり、2045年以降)、新しい機関車が造られていない。 飛行船、自動車、蒸気船、電話は、親の代までに使えなくなった。 人名を呼ぶ際、「兄弟」をつけることを強要される。例:「兄弟ヨハンセン」。 スパイと密告者が民間に潜んでいる。 星条旗の所持は死刑。 闇取引(私的交換)は10年の炭鉱送りか、死刑。 カルカール人は、1~2年で女(妻)を代える。地球人の追従者も同様。 刃渡り15センチ(ハヤカワ版は6インチ)以上の刃物の所持の禁止。 女性の価値は、雌牛、雌山羊、雌豚並みか、それ以下。 宗教の弾圧。 女児殺し(間引き)の一般化と、女性自身が顔を傷つけることの一般化(カルカール人の手中に落ちないための自衛措置)。 カルカール人は創意工夫、労働とは無縁の寄食階級。 男女の双子が生まれ、女児が死産と聞かされた。「女児の死産」は一般的(実は子殺し)。 カルカール人は商業と工業を破壊した。 女性は政治信念を持たない。 カルカール人はアメリカ人をヤンキーと呼んで蔑んでいるが、アメリカ人にとっては尊称。 宗教が弾圧されているため、残った門徒は宗派を問わず結束している。ジュリアン9世の会合には、メソジスト、プレスビテリアン(長老教会派)、バプティスト、ローマ・カトリック、ユダヤ教の信者が集まっている。 女性は男性の共有物。 医学は学べなくなったため、医者はおらず、民間療法に頼るしかない。やけどの際には小麦粉を塗る、寒い時は石炭で部屋ごと暖める。 5000名のアメリカ人捕虜の看守が、たった50名。 以上のうち、4と14は年表と矛盾する(オーティスとカルカール人の侵攻は2050年)。これの解釈は3通りある。 バローズのミス。 カルカール人に寄らない原因。 「口伝のため、正確性に欠ける」という状況の演出。 なお、ヒロインのファンナがオル・ティス将軍に貞操を奪われそうになった時、創元版では「犯されたか」と、ストレートな表現になっている(ハヤカワ版では「まちがいをしでかしたか」)。他のバローズの日本語訳作品の場合、遠まわしな表現(「死ぬよりひどい目」など)になっている場合がほとんどで、『月からの侵略』のシビアさが際立っている。
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