球団の動向
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逮捕当日、事態を知った若生照元(取締役球団本部長)以下、大洋球団社員らは慌ただしく電話対応に追われ、同日夜には大洋球団代表・桜井薫が球団事務所(横浜市中区)で会見し、球団社長・岡崎寛のコメントを代読する形で「青少年に夢を与えるプロ野球選手がこのような事件を起こしてしまい誠に申し訳なく、深くお詫びする。球団としても管理不行き届きを陳謝したい。処分はあす(26日)決めるが、厳しい処分を考えざるを得ない」と述べた。大洋球団では1987年のシーズン開幕日に若手数選手が傷害事件を起こし、警察の取り調べを受けたことはあったが、今回の強制わいせつのような悪質な犯罪容疑で一流選手が逮捕されたケースは同球団に限らず、球界としても前代未聞の大事件だった。プロ野球の現役スター選手が性犯罪で逮捕されたこの事件は大洋球団のみならず、神奈川県民・横浜市民やプロ野球選手に憧れる少年を含めた野球ファン・球界関係者らにも大きな衝撃を与えた。 大洋球団は翌26日9時から球団事務所で、球団幹部6人(岡崎球団社長・若生球団本部長ら)と弁護士2人の計8人により、中山に対する処分を決める緊急幹部会議を開き、中山との翌年度の契約を白紙に戻し、日本プロフェッショナル野球協約第66条に基づき「次年度選手契約締結の権利を保留する選手」(保留選手)(=「契約未更改の大洋選手」扱い)とした上で、処分については「捜査当局の結論を待ってから、解雇も含め厳しく対応する」ことを決めた。会議終了後、記者会見に応じた岡崎は「夢を与えるプロ野球関係者がこのような事件を起こしたことに対し深く反省するとともに、被害者やその家族の皆様に深くお詫びする」とコメント・謝罪した。同日には高校の後輩・中山が起こした不祥事を受け、須藤監督も球団事務所入りし、被害者・球界関係者および社会に対し謝罪したほか、日本野球機構 (NPB) 会議室(東京都中央区銀座)でも吉國一郎コミッショナーや、川島廣守セントラル・リーグ会長、原野和夫パシフィック・リーグ会長ら球界首脳が出席して実行委員会を開き、川島は会議後の記者会見で「今回の事件でプロ野球の信用が失われ、取り返しがつかない。同情の余地は全くない。球団は厳重に処分すべきだ」と述べた。 岡崎・桜井は同年12月27日に大洋球団の親会社である大洋漁業の本社(東京都千代田区大手町)で中部慶次郎球団オーナーに事件を報告した。同日、岡崎は「今年は(開幕投手を務めた)中山で始まり、中山の大暴投で終わった」「来年は事件が早く解決し、チームが飛躍できる年にしたい」と話した。吉國NPBコミッショナーは同日にコミッショナー事務局にて記者会見し、「中山投手が再びマウンドに立つのは難しいか?」との質問に対しては「事件が事件だけに難しいだろう。DNA型鑑定もするというし、報道されている警察の発表が事実なら残念だ」と厳しい見解を示した。一方で落合博満選手(中日)は1994年1月4日に横浜市内で開かれたトークショーにて、「情状酌量の余地があるならばの話だが、将来のことを考えると球界復帰への道をつけてやってもいいのではないか?この事件で(球界を引退して)社会に復帰したとしても中山を受け入れてくれるところはもうないだろう。それなら『更生の道は野球から着けてやるべきではないか?』と思う」「もし自分が被害者の親だったら示談にしても許せないが、中山を自由契約にすることで誰の責任でもなくなる。今の状態だと中山はどこに行っても人の目を気にしなければ生きていけない。罵声・野次を正面から浴びせられるマウンドで償うチャンスを与えてはどうだろうか。大洋球団やセ・リーグ連盟が見守った上で、中山に恥をかかせながら更生の道を探るべきだ」と発言した。 中山は1992年1月5日、釈放後に緑区内の自宅へ帰宅し、15時15分から約1時間にわたり若生球団本部長・荒木球団管理部長と面接した。若生は面接後、「中山は反省の色が濃い」と述べていたほか、須藤監督も同日にセ・リーグ連盟へ「中山を無期限謹慎処分に処した上で、著しい反省の色・社会情勢の変化などを見て処分を有期限に緩和する」案を打診した。これは須藤自身が中山の更生を望んでいたことに加え、大洋球団にとっても中山は「故障が治れば2桁勝利(10勝)できる投手」だったため、試合に出場できない身分の中山に対し月額約53万円の保留手当を支払うことになってでも、将来的に復帰させることを目論んでいたためだった。しかし連盟は「球団の処分は甘すぎる。社会的な償いを受けることは避けられない」として処分差し戻しを求め、須藤監督も最終的には連盟の対応に従い、中山の契約解除に至った。
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