猪谷発電所とは? わかりやすく解説

新猪谷ダム

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/18 21:49 UTC 版)

新猪谷ダム
左岸所在地 岐阜県飛騨市神岡町西茂住
位置
河川 神通川水系高原川
ダム諸元
ダム型式 重力式コンクリートダム
堤高 56 m
堤頂長 154 m
堤体積 74,000
流域面積 762 km²
湛水面積 28.0 ha
総貯水容量 1,608,000 m³
有効貯水容量 1,203,000 m³
利用目的 発電
事業主体 北陸電力
電気事業者 北陸電力
発電所名
(認可出力)
猪谷発電所 (22,900kW)
新猪谷発電所 (33,500kW)
新猪谷ダム発電所 (500kW)
施工業者 西松建設
着手年/竣工年 1961年/1963年
出典 [1]
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新猪谷ダム(しんいのたにダム)は、岐阜県飛騨市一級河川神通川水系高原川に建設されたダム。高さ56メートルの重力式コンクリートダムで、北陸電力発電用ダムである。同社の水力発電所・猪谷発電所・新猪谷発電所・新猪谷ダム発電所に送水し、合計最大5万6,900キロワットの電力を発生する。

歴史

猪谷発電所の建設

岐阜県飛騨市神岡町、古くは奈良時代から採掘が行われていたとされる神岡鉱山で、初めて電灯によるが灯されたのは1894年明治27年)のことである。その電気は神岡鉱山が所有する自家用水力発電所からの供給によるものであった[2]鉱山および高原川の水利権を所有する三井鉱山(現・日本コークス工業)は五大電力の一角・大同電力と共同出資して神岡水電を設立し、電源開発を推進。1924年大正13年)に跡津発電所(当時6,850キロワット)、1926年(大正15年)7月に中山発電所(当時1,000キロワット)、1929年昭和4年)に猪谷発電所(当時2万2,300キロワット)と、3か所の水力発電所が続けざまに運転を開始した。3社の事業分担であるが、発電所の建設を三井鉱山が行い、完成後に神岡水電へ譲渡。発生した電力は三井鉱山が使用し、その余りを大同電力が引き取って大都市圏に供給する、というものであった[3]。その後、1939年(昭和14年)になって日本発送電が設立されると、1941年(昭和16年)、神岡水電は中山発電所・猪谷発電所を日本発送電に出資[4]1942年(昭和17年)、猪谷発電所の上流において、日本発送電の委託のもと進めていた浅井田ダム・東町発電所・牧発電所の建設を終えると、跡津発電所を三井鉱山に譲渡し、解散した[5]

新猪谷ダム・新猪谷発電所の建設

1951年(昭和26年)、日本発送電の分割民営化に伴い、高原川における水力発電は北陸電力が継承した。同社は1950年代に神通川(神一ダム神二ダム神三ダム)や常願寺川常願寺川有峰発電計画)など、いくつもの大規模な水力発電所を完成させてきた。1960年代に入っても水力開発の手が休むことはなく、猪谷発電所に再開発の機運が訪れ、新たに新猪谷ダムおよび新猪谷発電所(3万3,500キロワット)が建設されることになった。新猪谷発電所は1964年(昭和39年)1月22日に運転を開始[6]。猪谷発電所については取水口を新猪谷ダムに付け替え、今日に至るまで運転を継続している。

新猪谷ダム発電所の建設

2012年平成24年)12月21日、北陸電力は新猪谷ダムからの河川維持放流水を活用し、最大500キロワットの電力を発生する新猪谷ダム発電所の運転を開始した[7]。ダム直下右岸に設けた建物内に、横軸フランシス水車同期発電機からなる水車発電機を1台設置[7]。設備は明電舎製である[8]。年間400万キロワット時電力量を発生し、年間1,200トン二酸化炭素排出削減を見込む[7]

周辺

岐阜県飛騨市神岡町、神岡鉱山から高原川に沿って国道41号を北上すると新猪谷ダムに至る。ダムには両岸に取水口が設けられており、右岸が猪谷発電所、左岸が新猪谷発電所用である[9]

下流にある新猪谷発電所の隣にあるのは中山発電所である。高原川の支流・ソンボ谷で取り入れた水を使用して発電するものである[10]。猪谷発電所に先んじて運転を開始し、建設が進められている猪谷発電所の工事用電力をまかなった[11]

脚注

  1. ^ 電気事業者・発電所名(認可出力)については「水力発電所データベース[1] [2]」、「新猪谷ダム発電所 営業運転の開始について」、その他は「ダム便覧」による(2012年12月26日閲覧)。
  2. ^ 『北陸地方電気事業百年史』11ページ。
  3. ^ 『北陸地方電気事業百年史』149、150ページ。現在の最大出力は跡津発電所が1万1,850キロワット、中山発電所は1,100キロワット、猪谷発電所が2万2,900キロワットである(「水力発電所データベース[3] [4] [5]」2012年12月26日閲覧)。
  4. ^ 『北陸地方電気事業百年史』862ページ。
  5. ^ 『北陸地方電気事業百年史』408、863ページ。
  6. ^ 『北陸地方30年史』(1982年3月20日、北陸電力株式会社発行)563ページ。
  7. ^ a b c 北陸電力「新猪谷ダム発電所 営業運転の開始について」2012年12月25日付、2013年1月2日閲覧。
  8. ^ 明電時報 2013 No.1 通巻338号 平成24年の技術成果』明電舎、2013年、10ページ
  9. ^ 国土地理院の地図より。2010年9月19日閲覧。
  10. ^ 水力発電所データベース」2012年12月26日閲覧。
  11. ^ 『北陸地方電気事業百年史』150ページ。
  12. ^ 国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成(1977年度撮影)

参考文献

  • 北陸地方電気事業百年史編纂委員会編『北陸地方電気事業百年史』北陸電力、1998年。

関連項目

外部リンク


猪谷発電所

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 15:23 UTC 版)

神岡水電」の記事における「猪谷発電所」の解説

位置北緯3627分59.3秒 東経13714分51.7秒 / 北緯36.466472度 東経137.247694度 / 36.466472; 137.247694 (北陸電力猪谷発電所) 三井鉱山1919年7月水利権得た高原川第四水力」では、同社の手により猪谷発電所が1923年大正12年10月着工された。岐阜県吉城郡船津町大字土(現・飛騨市神岡町土)にて高原川本流ダム構築し富山県上新川郡大沢野村大字猪谷(現・富山市東猪谷)まで導水して同地発電所設け設計である。1929年昭和4年6月完成し7月1日より発電開始した前述通り完成後の1931年1月中山発電所とともに三井鉱山から神岡水電へと譲渡されている。 発電所の概要以下の通り河川名高原川 発電所出力最大2万2300キロワット常時1万1150キロワット 使用水量:30.61立方メートル毎秒 有効落差:93.939メートル ダム長さ30.3メートル、高さ16.970メートル 水車縦軸フランシス水車2台(電業社製) 発電機三相交流発電機容量1万3500キロボルトアンペア2台 周波数50ヘルツまたは60ヘルツ50ヘルツ商用電源周波数使用される関東方面60ヘルツ使用される関西方面双方へと送電できるように周波数の変更設備設けた変圧器:4台(芝浦製作所製) 猪谷発電所と中山発電所発生電力三井鉱山では消化できないため、すべて発電所渡しにて大同電力売電された。なお、大同電力神岡水電から受電した電力立山水力電気供給していたが、1927年昭和2年上期からは日本電力通じて大阪方面へと送電するようになり、次いで日本水力計画が元となっている昭和電力北陸送電幹線1929年6月富山県から大阪府まで完成すると、昭和電力発電所渡しにて神岡水電から電力購入大阪大同電力へと供給する体制へと変更された。

※この「猪谷発電所」の解説は、「神岡水電」の解説の一部です。
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