法の下の平等および人権との矛盾
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 09:31 UTC 版)
「天皇制廃止論」の記事における「法の下の平等および人権との矛盾」の解説
「法の下の平等」および「人権」も参照 日本国憲法では天皇は世襲で、皇室典範では男系男子のみが皇位継承資格を持つ。このため法の下の平等や男女平等、基本的人権などと矛盾するとの意見がある。 世襲身分制は旧民法の家制度に象徴される家父長制であり、世襲である天皇や皇族は生まれながらにして一定の職務と生活水準とを保障された一種の世襲国家公務員であり、日本国憲法第14条で禁止された「門地による差別」であり、法の下の平等と矛盾する、また皇室のためのみに存在する宮内庁も公務員の地位について定めた日本国憲法第15条(すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない)に違反する、などの意見がある。また世襲である天皇および皇族は、職業選択の自由や居住移転の自由、言論の自由、信教の自由など自己決定権にかかわる多くの基本的人権を制限されており、法の下の平等を定めた日本国憲法第14条と矛盾するとの意見がある。1946年11月に三笠宮崇仁親王は枢密院に意見書を提出し、退位を発議する自由を認めないならば「天皇は全く鉄鎖につながれた内閣の奴隷と化する」と日本国憲法第18条(何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない)の指針に反しないかと疑問を投げかけた。 天皇が憲法上の「国民」であるかどうかも議論がある。国民では無いために国民としての権利や義務は原則として存在しないとの意見がある。他方で、個人としての天皇は国民であり国民の人権と自由を原則として享有する主体だが、象徴担荷者であるための制約を受け、また象徴担荷者としての名誉に相応しい額の歳費が国庫から支出されるとの意見などがある。 なお天皇や皇族は戸籍法の適用を受けず皇統譜に記載されるが、住民登録はされており、固定資産は国有財産である皇室用財産のため課税されないが、金融資産(預金や有価証券)に対する利子や出版物の印税など個人資産の収入については所得税や住民税を納めており、また相続の際には相続税も発生する。なお相続税法12条の非課税財産のうち第1号「皇室経済法第7条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物」すなわち「皇位とともに伝わるべき由緒あるもの」については非課税であるが、その他の財産、例えば有価証券や預金などは一般私人の財産と同等の性質を持つものとして課税対象になる。昭和天皇は貞明皇后あるいは秩父宮の相続に際して相続税の納税申告を行った。。また昭和天皇の崩御に際して明仁親王は4億2,000万円の相続税を納めた。 2005年、憲法学者の奥平康弘は著書『「萬世一系」の研究―「皇室典範的なるもの」への視座』で、万人に適用されるべき権利義務が天皇には適用されておらず、全ての人に保障されるべき権利や自由が構造的に奪われている場合には「脱出の権利」が保証されるべきと主張した。長谷部恭男は共著『憲法の尊厳』で奥平の「脱出の権利」を評価し、天皇制は近代国家像を反映した日本国憲法における身分制秩序の「飛び地」で、飛び地に住む人には基本権(人権)は無いが、仮に脱出権を認めても皇室メンバーに制度を守る「心がけ」があれば天皇制と両立し、また仮に「心がけ」が無ければ脱出の権利が無くても天皇制は枯死する、と述べた。 法学者の井上達夫は「天皇制廃止論者」を自称し、天皇家廃絶ではなく、人権が制限されている現行制度から解き放ち、三島由紀夫が「雅」と表現した美的・文化的存在として新たに位置づけなおす事を主張した。 社会学者の橋爪大三郎は、本人の自由意思、職業選択などが認められない不合理に皇族を縛り付ける国は人権と民主主義の国では無いとして、本当に皇室を敬うなら象徴天皇制に幕を引き共和制に移行すべきと主張し、これを「尊王共和制」と呼んだ。皇室は戦前より特権が減り義務は重くなり、我慢と犠牲の人生となった。皇室は国家機関であることをやめ、無形文化財として自由にお過ごしいただく、国民の拠出する寄付金で財団を設立して経済的基盤にする、象徴として政治に関与しない大統領を置く、などを主張した。
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