殷時代前期とは? わかりやすく解説

殷時代前期(紀元前1600年頃 - 前1300年頃)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 17:45 UTC 版)

中国の青銅器」の記事における「殷時代前期(紀元前1600年頃 - 前1300年頃)」の解説

河南省鄭州市二里岡遺跡標式遺跡とする文化二里岡文化という。これは前節述べた二里頭文化に続く時期文化であり、その上限は紀元前16世紀とされている。二里岡では1970年大規模な都城址鄭州商城)がみつかった。その規模からみて、これを殷の都城とすることには異論はないが、これを殷王朝創設者天乙湯王)の都・亳とみるか、10代仲丁の都の隞(囂)とみるかで意見分かれる二里頭遺跡近く発見され偃師商城遺跡1983年発見)との関連含め、この問題についてはなお検討要するいずれにしても青銅器編年のうえでは、二里頭文化期続き殷墟文化期に先行するのがこの文化である。 二里頭文化が、現代河南省山西省にまたがる比較的狭い地域にしか広がりを持たなかったのに対し二里岡文化は北は河北省、南は湖北省、東は山東省および安徽省、西は陝西省至り東西約2,000キロ南北約1,300キロ広大な地域及んでいる。この文化期の青銅器特色としては、以下のことが挙げられる。まず、青銅器出土地広域にわたるとともに出土品数量増え、器自体大型化し、鋳造技術二里頭期よりは向上している。二里期に青銅器貴重品であり、限られた層の人々によって、祭祀などの特別の機会にのみ用いられたと考えられる二里岡文化期においても、青銅器単なる日用品ではなく祭祀などの特別な用途のためのものであった点は変わりないが、出土品数量二里頭期よりは大幅に増加している。二里頭期の青銅礼器は酒器限られ器種少なく小型の爵にほぼ限定されていたが、二里岡文化期には觚(飲酒器)、斝(温酒器)、盉(注酒器)・尊・罍(以上盛酒器)、鼎・鬲・簋(以上食器)、盤(水器)などの器種登場し酒器食器水器などの基本的器種が出揃っている二里頭期の青銅器無文か、文様があっても隆起線文、連珠文などのごく簡略なものであったが、二里岡文化期の青銅器には複雑な文様施されるようになり、饕餮文呼ばれる大きな眼を強調した獣面文や、横方向展開する動物文が登場する。ただし、後代青銅器のような彫り深く立体的に浮き出すような文様とは異なり二里岡文化期の青銅器文様線刻主体平面的なのである前代比べて大型の器が作られるようになったこともこの期特色である。一例として、鄭州城外、張寨南街出土の方鼎は重さ82.5キログラムもあり、23箇の鋳型使いいくつかの部分分けて鋳造したものを溶接して作られたもので、この時期すでにこうした大型複雑な作品鋳造するだけの技術水準があったことがわかる。前述のように、この文化期の遺跡広範囲分布しているが、いずれの地域においても青銅器器種文様共通している。青銅器鋳型坩堝(るつぼ)も各地出土していることから、中央製作され青銅器地方運ばれたのではなく共通した様式青銅器各地製作されたことがわかる。 殷代における青銅礼器は、神や祖先の霊を祀る祭器としての用途と、墓の副葬品明器としての用途が主であり、酒器重要な役割果たした。特に爵・觚・斝の3種セット出土することが多い。この時期には支配者権力強大化するとともに階層分化起こり小規模墓にも青銅器副葬されようになった小型の墓からも爵・觚・斝のセット出土するが、觚または斝を陶器製とするものもある。このような場合にも爵を陶器製とする例はほとんどみられず、このことは爵がもっと重要な祭器であったことを意味する殉死者を伴う墓もあるが、これは二里期に見られなかったものである殉死者を伴うのは有力者葬った大規模墓であり、こうした大規模墓には多量青銅器副葬された。

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