構造と部品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 08:14 UTC 版)
面体 本体。鼻と口を包み外気を遮断する。下顎から鼻までを覆うものを半面マスク、下顎から額まで覆うものを全面マスクと言う。吸気口と排気口を別々にもち、それぞれ内側に逆止弁が付いている。排気口は着用者の口に近い場所にあることが多い。吸気口は一つないし二つ付いており、それぞれに吸収缶が取り付けられる。初期には別個の吸排気弁を持たず、吸収剤を往復する形で吸気・呼気を行う構造の製品も存在した。伝統的なゴムないしゴム引き布製に加え、アメリカ製のMCU-2/Pガスマスクやロシア製のGP-9・GP-21ガスマスクのように、本体を強化樹脂製とした製品も実用化されている。強化樹脂製は折り畳めないためゴム・ゴム引き布製に比べてかさばるが、折りぐせといった変形による気密不良が起きにくく、透明素材を使えば視野を広くできるという利点がある。 ベルト 面体を頭部に固定するためのベルト。あらかじめ使用者の頭に合わせておく。 旧ソ連・ロシアを中心に、ベルトがない形状のガスマスクも存在する。これは面体と頭巾がゴムで一体成型されていて、装面すると首から上がマスクにすっぽり包まれる。 吸収缶(キャニスター) 有毒物質を吸収したり、粉塵や飛沫を除去する濾材(ろざい)が詰まった缶である。吸気は吸収缶を通ってからマスクに入るようになっている。吸収できるガスの種類によって濾材が異なるため、塗装の色などで区別されている。サイズもさまざまあるが、小さいものは面体の側面か下部に直接ねじ込むようになっている。 初期には吸収缶を使わず、薬剤を染み込ませた布を面体に内蔵した製品も存在した。この場合は乾燥すると薬剤が効かなくなるため、グリセリンなどの保湿剤も配合された。 もともと吸収缶は正面に取り付けられていたり、面体から伸びたホースの先に取り付けられていたが、その後は左右のどちらかに選択して取り付けるものも登場した。これはマスクをしたまま銃を構えると吸収缶が銃と接触して扱いにくいためである。右利きの場合は銃と接触しないように左側に吸収缶を取り付ける。 アメリカで1959年に開発されたM17ガスマスクは吸収缶を使わず、面体の両頬の内側に直接吸収材を収納するよう設計されていた。この様式のガスマスクでは、吸収材を交換するためにはガスマスクを頭部から完全に外す必要があり、汚染された環境下で長時間運用するには難があった。それでもM17を手本とした製品が東ドイツ(M10)、日本(防護マスク3型)、ポーランド(MP-4)やブルガリア(PDE-1)など各国でも採用されている。 吸気弁 吸気口の内側に付属する逆止弁。空気を吸う方向には開くが、吐く方向には開かない構造になっている。 排気弁 排気口の内側に付属する逆止弁。空気を吐く方向には開くが、吸う方向には開かない構造になっている。 給水口 ガスマスクを装着したまま水が飲めるようにストローを装着する装置がある。 ボイスエミッター(伝声器) ガスマスクを装着していると声が外へ聞こえにくくなり、意思疎通が阻害されるため、音声を増幅してマスクの外へ出す装置がある。排気弁を大型化した製品のほか、電気的に作用する製品、無線機と接続して使用する製品もある。 アンプリファイアー ガスマスクを装着していると耳がフードでふさがれ、音が聞こえにくくなるため、補聴器のような装置を内蔵する製品がある。 吸気装置 ガスマスクはどうしても呼吸が苦しくなるため、装着したままの激しい運動には限界があり、呼吸の不規則化は集中力を低下させる原因にもなる。また酸素濃度が低過ぎたり、有害物質の濃度が高過ぎる環境下では、通常のガスマスクを使用できない。このような欠点を補って普通に呼吸できるようにするために電動式のファンを内蔵した物がある。 ただし、電源を必要とするために重量、コスト、活動時間などに制限を受ける、このため採用しているのは対爆スーツなどの極一部のみである。 乾燥剤 ガスマスクを長期保存する場合、キャニスターの活性炭素やフィルターの繊維が湿気を吸ってしまうと性能が低下するため保管中の乾燥状態を保つために必要である。 眼鏡 着用者が視力矯正を必要とする場合、ガスマスクと併用できるように設計された専用の眼鏡を用いる。製品によっては、ガスマスクのレンズ自体を度付きのものに交換できる場合がある。
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