普及の課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/20 18:49 UTC 版)
上記のような用途が本格化するのは、リーダのインフラストラクチャーが十分に整った後の話であり、そこまで普及するためには、数々の問題を克服しなければならない。 RFタグの価格 流通用途に大量に使用するためには、タグの価格を低く抑える必要がある。10円以下という話がよく引き合いに出されるが、実際の運用では1円以下が望ましいともいわれる。タグを基材に収めるためにレーザー溶着が利用されていることがコストアップ要因となっている。 RFタグの付加 従来のバーコードと同じく、単品毎にRFタグを付加しなくてはいけない(単品毎にタグを付加するのではなく、コンテナ、パレット、あるいはケース単位にタグを付加する場合もある)。メーカーで製造される時点で付加されるソースタギングまたは、自前で付加するインストアタギングの工程が必要となる。コストの低減を行うには自動化の実施は必然となり、それに対応する機械も開発、普及が望まれる。 データベースシステムとの連動 RFIDのシステムで誤解されやすいが、RFタグ自体に、例えば野菜の生産方法や農薬の使用状況などのさまざまな情報(トレーサビリティ情報)が保存されていることはほとんどなく、タグに記録されているのはおおむね個体を識別する情報のみであることに注意する必要がある。前述のような、本来参照したい情報については、個々の識別情報に対応したデータベースを構築し、これを参照することで得られるものである。この点については、現在広く使用されているバーコードシステムと同じである。 今後、RFタグを利用して食品のトレーサビリティ情報を一般に公開していくとすれば、そのIDからひも付きデータを引っ張ってくるためのデータベースシステムが、今以上に重要になってくる。また、RFIDの情報と、データベース情報のひも付けについては全くユーザ側からは見えない部分であることから、その信憑性についてどのように保証するかという点も重要になる。 現状でも、大規模なデータベースを構築するには、多大な費用と労力を要するが、それ以上のものを低価格でいかに信頼性を高く作るかが、あまり注目されていない隠れた大きな課題である。 プライバシーの保護 最近ではRFタグに搭載される記憶素子の容量と機能(読み書きなど)は増加傾向にあり、トレーサビリティ情報が直接記載されるケースもあるため、それらを不正に組み込まれた場合は、個人情報漏洩にもつながる。考え得るトラブルRFタグが付いている服を着て街を歩けば、その人がどのブランドの、どの素材を使った、どんな価格の物を購入したのかが周辺に判ってしまう。 乗車カードなどのRFIDカードをポケットに入れている場合には、リーダを持って近づけば個人情報を所有者に知られずに取得できるため、個人情報の入手がRFID普及前に比べて容易である。 所持品が紛失した場合は所在を調べるのに役立つが、個人が持ち歩けばその個人の行動経路も第三者に知られてしまう。 意図的に個人や物品にタグを付けて商業的なリサーチを行う場合、悪意を持ってそのタグを関係のない物に付けると精度の低いデータとなってしまう。 IDのみを記録したRFタグを利用する場合であっても、1は、IDと商品情報がリンクされているデータベースが漏洩すると起こりうる。2、3のトラブルは無条件で起こりうる。 経済産業省と総務省は「電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン」(2004年)を作成し、「タグ内に個人情報を含む場合には個人情報等が、消費者が気付かないうちに、望まない形で読み取られる等のおそれ」があることを指摘、運用上の注意を公表している。 上記ガイドライン等にもあるとおりRFタグの利用においては、装着されていることの表示をする、用途が終われば取り外す、不必要な情報は記録しないなど、プライバシーを守るための対策が求められる。具体的には、大根に付けられたタグは、スーパーのレジで精算をすると同時に、その機能を消去し、消費者にはタグを利用していることが分かるよう表示を行うなどの仕組みを入れることである。 電波の影響の考慮 RFタグは「短距離無線機器」と見なされ、一般無線機器と同様の規制を受ける。電波法令に従うだけでなく、人体の防護、植込み型心臓ペースメーカを含む医用電子機器への影響、電磁両立性規格などに注意しなければならない。
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