普及の経緯および背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/05 00:08 UTC 版)
「(っ)す」という丁寧語がいつ頃から使用され始めたかは明らかではないが、1954年10月12日朝日新聞に掲載された漫画『サザエさん』に既に「す」を用いた台詞が確認されている。なお、ですます体が確立した時期はこれに前後する1952年である。 1970年代に関する聞き取り調査によれば、この頃は運動部の学生や職人の若者が「っす」体を使用していたとされる。またこの時期ドラマでとび職を演じた男優が、自分のセリフの中には「っす」体のものが多かったとも答えている。1990年代には二十代の男性を中心に「(っ)す」の使用は更に拡大した。2000年代には、体育会系のような上下関係の厳しい組織では女性も使用することが確認されている。2021年現在、「っす」体の中でも特に形容詞への接続は普及の只中にあり、今後は低文体の共通語表現として定着するものと予測されている。 日本語話者は敬語に対して保守的な傾向が強く、「っす」体は激しい反発を受けてきた。若者ことばと見なされる「っす」体が年配の話者から非難される事は不自然なことではないが、同じ若者である女子大生を対象として2016年度に行われたアンケートにおいても、この文体を使わない層からは「きたないことばだと思う」「(自分に使われたら)馬鹿にされてるのかと思う」「彼氏が使っていたら嫌だ」「使う人は家族に紹介できない」などと厳しい評価が返されている。この逆風にもかかわらず、「っす」体は衰退することなくむしろ普及の途上にある。普及の動機として専門家が共通して挙げるのは、この文体が敬意と親しみを同時に表現できるという点である。かつて上下関係に基づいて使い分けられるものであった日本語の敬語は、現在では親疎関係に基づいた使い分けがより重視されるように変化している。「親疎関係に基づく」とは面識のない人物を仲間よりも丁重に扱うということであるが、裏を返せば「仲間と見なされていない」という疎外感を相手に与えるリスクが敬語に内包されるようになったことも意味する。敬意と親しみを同時に表すという「っす」体の性質は、この込み入った敬語の現状を解決するための一助となる。
※この「普及の経緯および背景」の解説は、「「っす」体」の解説の一部です。
「普及の経緯および背景」を含む「「っす」体」の記事については、「「っす」体」の概要を参照ください。
- 普及の経緯および背景のページへのリンク