映画賞・映画祭による評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 18:18 UTC 版)
「この世界の片隅に (映画)」の記事における「映画賞・映画祭による評価」の解説
本作は第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞、第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位、第71回毎日映画コンクール日本映画優秀賞・大藤信郎賞、第21回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞するとともに、日本国外では第41回アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門審査員賞、第19回富川国際アニメーション映画祭長編部門グランプリを受賞し、第45回アニー賞長編インディペンデント作品賞、第21回オンライン映画批評家協会賞アニメーション映画賞にノミネートされた。監督の片渕は、第67回芸術選奨文部科学大臣賞、第59回ブルーリボン賞監督賞、第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画監督賞などを受賞した。またチームとして第65回菊池寛賞を受賞した。 キネマ旬報ベスト・テンにおいてアニメーション映画が日本映画ベスト・テン第1位に選出されるのは、宮崎駿監督『となりのトトロ』以来28年ぶり2度目である。また、ブルーリボン賞、キネマ旬報ベスト・テンにおいてアニメーション映画の監督が監督賞を受賞するのは、それぞれ史上初である。 第67回芸術選奨は、本作について「緻密な映像・音響設計で映画ならではの深い感動を観客に体験させる。すずや家族の慎ましい生活の細部、そして、時間的、空間的な距離感がリアルに迫る。戦争を知らない世代が戦争の恐怖とともに、世界の片隅にある何気ない日常の大切さ、そして希望までを観(み)る者に静かに感じさせる」、また片渕の業績について「綿密な取材と丁寧な作画で日本映画史に残る傑作を生み出した」と評した。 第31回高崎映画祭は、ホリゾント賞を監督の片渕と主演声優ののんに贈賞し、「時代を伝えること、世界を広げること、を可能にする懐の深い映画であった。企画・構成・演出・手法 あらゆる面で、この先の日本映画に一筋の光を照らした作品となった」「ゆったりと朗らかに発話するのんさん演じるすずに、私たちはその世界に心地よく誘われ、また諭された」と評した。 第71回毎日映画コンクールは、大藤信郎賞の贈賞について「全編、温かみのある水彩画風の美術世界と細やかな動きで彩られ、時に切り紙やフィルムに描くシネカリ技法のタッチを取り入れるなど、アニメーションでしか表現し得ない美しさと楽しさに満ちた、まさに絵に命が吹き込まれた珠玉作である」と評した。 第65回菊池寛賞は、「戦時下の広島・呉を舞台に、市井の日常を、緻密な時代考証と見事なアニメーション表現で活写。商業ベースに乗りにくいテーマを資金集めに苦心しながらも制作、大ヒットに結びつけた。」と評した。 第22回AMDアワードは、本作の制作に対して年間コンテンツ賞「優秀賞」を贈賞し、「クラウドファンディングの導入やSNSでの感動の広がりは新時代を象徴していた。大ヒットとなった実績とともに、その熱意とアイデアを高く評価」と評した。 第21回文化庁メディア芸術祭は、アニメーション部門の大賞を本作に贈賞した。審査委員の横田正夫は、贈賞理由として次のように評した。 『この世界の片隅に』は、刺激的で動きの激しいアニメーションの多い中、日常動作に動きの美しさを見出している点で特筆すべき作品と思われる。肩に掛かる荷物の重さや、持ち上げる時の動作のように、日常の当たり前の、普通ならば何気なく見過ごしてしまうものに、その動作を行う個人の人格の表れを見せてくれている。そうした人格を持つ個人が、実は数多く存在し、日常のこまごまとしたことに、ささやかな喜びを見出している。食事の用意から近所付き合いなど、日常がごく平凡に過ぎてゆくことが大事なのだと教えてくれる。この教えが切実なものと感じられるのは、背後に戦争という現実があるからでもある。しかし翻ってみると、われわれの周辺には、大きな災害がいきなり襲い掛かってくることもある。『この世界の片隅に』の描いている現実は決して遠い過去のことではなく、まさに今の日本にもあり、かえってより切実となっているとも言えるのであろう。
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