日本国内のサブカルチャーへの影響
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「Jam (自販機本)」の記事における「日本国内のサブカルチャーへの影響」の解説
『Jam』はその破天荒な編集方針と独自性から『ガロ』『遊』『宝島』といった日本を代表する超カルト的サブカルチャー雑誌と並び、後続のサブカル誌・アングラ誌のルーツとして黎明期のサブカルチャー文化に大きな爪痕を遺した。 竹熊健太郎は『Quick Japan』(太田出版)や『危ない1号』(データハウス)などのアングラ系サブカルチャー雑誌の源流として『Jam』を挙げており、元『実話ナックルズ』編集長の久田将義も「サブカルの発生はエロ本から。特に高杉弾から始まったのではないか」と指摘している。 事実『Jam』『HEAVEN』は「鬼畜系」と呼ばれるサブカルチャーの分野にも多大な影響を与えており、鬼畜系文筆家の草分けである青山正明(データハウス刊『危ない薬』『危ない1号』編著者。うつ病と薬物乱用の悪化に伴い2001年に自殺)は本誌に感銘を受け、1981年4月に『HEAVEN』の廃刊と入れ替わる形で変態ミニコミ誌『突然変異』(突然変異社, 1981年 - 1982年)を創刊。同誌はその斬新かつ過激な内容から椎名誠を巻き込んだ大きな論争に発展して当時のミニコミ界・ロリコン界に一大ムーブメントを巻き起こした。この野心的な編集スタイルは後に青山が編集長を務める超変態世紀末虐待史『サバト』(三和出版, 1985年)や『危ない1号』(データハウス, 1995年 - 1999年)に直接引き継がれていくことになる。 また、『Jam』のゴミ漁り企画に影響された鬼畜系・電波系ライターの村崎百郎(本名:黒田一郎、1961年 - 2010年7月23日)は世紀末に「鬼畜系」と称してゴミ漁りによる人間観察を啓発し、1996年にはデータハウスからゴミ漁り完全マニュアル『鬼畜のススメ 世の中を下品のどん底に叩き堕とせ!! みんなで楽しいゴミ漁り』を上梓するなど鬼畜系のあり方を身をもって体現したトリックスターとなった。なお、山崎春美は村崎の没後に上梓した初単行本『天國のをりものが 山崎春美著作集1976‐2013』(河出書房新社, 2013年)の中で「このゴミ拾いという『文化』はゴミ屋敷とか電波系、鬼畜系を孕みながら遂に、村崎百郎の刺殺事件(2010年7月)に至る。村崎とはロフトプラスワンで会ったことがあるけど、そしてピンと来ないかもしれないけど、実はボクも薄皮一枚の裏表でそのライン上にいる。現代の作家業には編集者的能力が必須である」とコメントしている。 ちなみに『Jam』以前にもエロ本の体裁をしたサブカルチャー雑誌『ウイークエンドスーパー』(末井昭編集・白夜書房発行。新宿ゴールデン街系の文化人を積極的に起用した伝説のエロ本。1977年創刊・1981年廃刊)が創刊されているが、『Jam』はそれ以上に何でもありのパンクで無軌道な内容であり、これは当時の音楽界と漫画界で隆盛を極めていたパンク=ニュー・ウェイヴの動きとエロ雑誌界が連動したものだったとする見方もある。実際に『Jam』は創刊号で「TOKYO PUNK SCENE SCRAP/NO PUNK! NO WAVE!」という本格的なパンク特集を行っていた(安田理央は本特集について「日本のパンクシーンの黎明期の貴重な資料となる特集」と評価している)。 『磯野家の謎』『バトル・ロワイアル』などのミリオンセラーをプロデュースし、1990年代サブカルシーンの主翼を担ったカルチャー雑誌『Quick Japan』を自費で創刊した赤田祐一(元飛鳥新社/太田出版編集者。現・エディトリアル・デパートメント『Spectator』編集部)は『Jam』終刊直前の1979年12月にエルシー企画を訪問して『Jam』の創刊号を直接購入した経験がある。また、赤田は当時の印象について「そのとき『Jam』編集長の高杉弾も編集部にいあわせて、ソファーに寝っころがりながら『GORO』を読んでいた。“筒井康隆の『美藝公』がついに始まったよ。横尾(忠則)さんとの組み合わせはすごいねぇ”と、仲間に喋っていたことを今でもはっきり覚えている」と後に回想している。なお、赤田は自身が編集を務める雑誌(赤田編集時代の『Quick Japan』『あかまつ』『Spectator』など)で『Jam』を深く掘り下げた特集を定期的に企画しているほか、自著『20世紀エディトリアル・オデッセイ』(ばるぼらとの共著, 誠文堂新光社)で紹介した1200点にも上る雑誌の中からベスト3に『ホール・アース・カタログ』『POPEYE』『Jam』の3誌を選んでいる。 このように同誌は廃刊後も、日本のサブカル史やエロ本史において、今日まで語り継がれる伝説的存在となっているが、エロ本という性質上から国立国会図書館などの公共機関での所蔵は皆無に等しく、古書店では幻の雑誌として数万円の高値が付くこともあり、全体を目にすることは極めて困難となっている。 本項では『Jam』の前身誌『X-MAGAZINE』(エルシー企画)と後継誌『HEAVEN』(アリス出版/群雄社出版)についても解説する。
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