日本の行政改革
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日本においては、1998年(平成10年)1月に行政改革推進本部に設置された規制緩和委員会(後に規制改革委員会へ名称変更)によって、「公的な業務独占資格について資格要件や業務範囲等の在り方を含めた見直し」が行われた。 当該見直しにおいては、業務独占資格が特定市場への参入障壁として機能しており、その競争制限性により弊害を生じる可能性が指摘された。 2002年(平成14年)には、規制改革推進3か年計画(改定)(平成14年3月29日閣議決定)において、業務独占資格について、資格の廃止、相互乗り入れ、業務範囲の見直し、報酬規定の廃止、試験合格者数の見直し等を推進することにより、各種業務分野における競争の活性化を通じたサービス内容の向上、価格の低廉化、国民生活の利便向上等を図ることが基本方針として定められた。 具体的には、以下のような18項目について再検討が行われた。 (別紙1)業務独占資格の見直し (1) 業務範囲が余りに細分化されている資格については、業務範囲の見直し、資格間の相互乗り入れを検討する。また、業務独占資格者の業務のうち隣接職種の資格者にも取り扱わせることが適当なものについては、資格制度の垣根を低くするため、他の職種の参入を認めることを検討する。(2) 以下の資格については、廃止を含めその在り方を検討する。 ・資格者以外でも実施可能な専門性の低いもの ・資格取得に当たって、試験合格等の特段の要件を必要としないもの ・試験合格率又は講習終了率が極めて高いもの ・社会的使命が終了したこと等により、年間の資格取得者数が少ないもの ・資格取得の要件が試験合格を原則としているにもかかわらず、資格取得者のほとんどが試験合格以外の特例による取得者であるもの ・類似資格が民間資格において存在するもの(3) 法律上資格試験を行うこととされている資格については、試験を実施する。(4) 明確で合理的な理由のない受験資格要件については、その廃止を検討する。(5) 受験前の実務経験、試験合格後の修習・講習等の義務付けについては、合理的な理由なくして参入規制として機能しないようその在り方を見直す。(6) 障害等を理由とする欠格事由については、その合理性について検討し、所要の措置を講ずる。(7) 受験資格及び資格取得に係る特例措置の認定基準については、明文化・公表を進める。(8) 合格人数制限を行っているものについては、参入規制とならないよう、これを見直す。(9) 関連・類似資格等については、統合又は試験・講習科目の共通化・免除若しくは履修科目の免除を進めることについて検討する。(10) 合否判定基準、配点、模範回答等の公表、不合格者に対する成績通知を行うほか、合格発表を迅速化する。(11) 例えば以下の方法を採用することにより、資格取得の容易化を検討する。 ・合格科目の積み上げ方式による合格方式の推進・再受験における既合格科目の免除制度の推進 ・試験問題の公表 ・持ち帰りの推進(12) 受験料の積算根拠を精査する。(13) 公正有効な競争の確保等の観点から、登録・入会制度の在り方について検討する。(14) 公正有効な競争の確保や合理性の観点から、報酬規定の在り方を見直す。(15) 公正有効な競争の確保や合理性の観点から、広告規制の在り方を見直す。(16) 有効期間・定期講習の義務付けの合理性について検討する。(17) 資格者に対する利用者の複雑多様かつ高度なニーズにこたえるとともに、資格者による継続的かつ安定的な業務提供や賠償責任能力の強化などの観点から、必要に応じて資格者の法人制度の創設を検討する。 (18) 経済社会の複雑多様化、国際化に適切に対応するため、専門性をいかした高度なサービスが提供されるよう、必要な場合、資格者数の増大を図る。 これらの方針に先立ち、行政書士では2000年(平成12年)に受験資格が廃止されている。2002年には(平成14年)司法書士で、2003年(平成15年)には弁理士で、2005年には土地家屋調査士で業務範囲が拡大され、それぞれ簡裁訴訟代理等関係業務、特定侵害訴訟代理業務、民間紛争解決手続代理関係業務などの、従来は弁護士にのみ認められていた業務の一部が解禁された。 通訳案内士は、従来は業務独占資格として位置づけられていたが、2018年(平成29年)からは通訳案内士法から業務独占規定が削除され、資格名称が「全国通訳案内士」と「地域通訳案内士」に改められ、単なる名称独占資格となった。 従来は、成年被後見人、被保佐人などの制限行為能力者は、弁護士や医師などの一部の業務独占資格において、一律で免許の取得ができなかった(絶対的欠格事由)。2019年(令和元年)に成年被後見人等の人権尊重・不当な差別防止を目的として、「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」が施行された。これによって、弁護士法や医師法から欠格条項削除が削除され、併せて個別に適格性を審査する規定が設けられた。
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