日本の本土の龍柱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/22 08:21 UTC 版)
道教の寺院に多くある。そもそも日本に道教の寺院自体が少ないが、埼玉県坂戸市の聖天宮が、豪華な龍柱があることで有名。道教のモチーフとしての龍柱は、同じく道教のモチーフである八仙をしばしば伴っている。 仏教の寺院にもある。江戸時代以前に作られたものでは、東京都町田市の長福寺文殊堂や、神奈川県藤沢市の慈眼寺山門などが、豪華な龍柱があることで有名。現代に作られたものでは、茨城県小美玉市の鳳林院が有名で、山門(鳳林院山門、1715年築、小美玉市指定文化財)の向こうに林立する「清浄守護龍柱」が見どころ。 龍柱がある神社は、南九州に多い。特に、狭義の「龍柱(りゅうばしら)」がある神社、つまり向拝柱(本殿に上がる階段下にあって、向拝を支えている柱)が「龍と瑞雲を絡ませた柱」である神社は全国でも霧島神宮、鹿児島神宮、枚聞神社、新田神社、蒲生八幡神社(以上、鹿児島県)、兼喜神社、東霧島神社、白鳥神社(以上、宮崎県)の8社のみだと、鹿児島大学名誉教授の土田充義は主張している。いずれもかつての薩摩藩の領地で、いずれも島津氏とゆかりのある神社である。ただし、単に「龍が巻き付いた柱」と言う意味では、本殿に龍柱がある神社は全国に存在する。茨城県筑西市の桑山神社など、あまり有名でなくても文化財指定されているところは多い。足立区の大鷲神社本殿や品川区の居木神社摂社など、東京23区内にも見事な龍柱がある(いずれも非公開)。青森県五戸町の新山神社や弘前市の岩木山神社本殿など、青森県も割と龍柱が多いので、意外なところに龍がいることを青森県はアピールしている。北海道札幌市の手稲神社本殿内陣の龍柱は、北海道にある珍しい龍柱。神社は本殿に注目しがちだが、摂社や末社などに意外と見事な龍柱がある場合がある。 将軍や皇帝などの御廟にも多くある。戦前は東京市芝区(現在の港区)増上寺にある江戸幕府七代将軍徳川家継の霊廟、有章院霊廟・勅額門の龍柱が有名で、明治時代に人気を博した錦絵「千代田之御表 芝増上寺初御成ノ図」(豊原周延・画)にも描かれた、東京の名所であった。戦前の旧国宝に指定されていたが、1945年3月10日の東京大空襲で焼失した。 龍柱のデザインは、1本の柱に1匹の龍だけが巻き付いた「蟠龍柱」と呼ばれるデザインが定番だが、1本の柱に2匹の龍が絡みついた「双龍柱」(埼玉県の聖天宮にある)、柱に龍と瑞雲が巻き付いた「雲龍巻柱」(宮崎県の船引神社、生目神社、白鳥神社などの龍柱がこう呼ばれている)など、日本の宮大工が腕によりをかけて彫り上げた豪華なデザインもある。小さい神社だと素木(しらき、社殿の彫刻を彩色していない)のものが多いが、鹿児島神宮(大隅国一宮)や岩木山神社(津軽国一宮)など権威のある神社の龍柱だと龍に金箔を貼ったり極彩色で豪華絢爛なものが多い。いくつかの龍柱には「左甚五郎伝説」があり、例えば足立区の大鷲神社は左甚五郎の13代目が作ったという伝説があるが、あくまで伝説である。 霧島神宮の龍柱は、龍と木鼻に象の彫刻がある龍柱で、霧島神宮はその壮麗さから、同じく龍のデザインが多用されている日光東照宮と比較されて「西の日光」の異名を持つ。ただし、霧島神宮は国宝(2022年指定、日本唯一の国宝の龍柱)に指定されており、何十年かに一度行われる一般公開の時(2015年の造営300年記念、2021年の国宝指定記念など)以外は内部を自分の目で見ることはできず、写真撮影も不可である。なお、一般的に神社の本殿の内部には「神様」がいるため、本殿は非公開の所が多く、たとえ公開されていてもマナーとして龍柱の撮影が不可なところは多いので、撮影する際はあらかじめ確認した方が良い。特に観光地化されていない無名の寺社では注意が必要。 日光東照宮にも龍がデザインされた柱が多いが、龍以外にも色々いるので、あまり「龍柱」とは呼ばれない。日本では本殿正面両脇の柱が特に「龍柱」として崇められているが、特に「龍柱」とは呼ばれていなくても、日本の寺社のその辺の柱に龍がいるところは割と多い。 金持ちが自宅に龍柱を作ることもあり、天理大学附属天理参考館では19世紀の台湾の高位の官吏の家にあった龍柱が展示されている。 龍が1匹だけいるよりも「昇り竜」と「下り竜」で対になっていることが多い。雄と雌だという。 鳥居の柱が龍柱になっている「龍鳥居(双龍鳥居)」のある神社が全国にあるが、数は少なく、東京には杉並区の馬橋稲荷神社、高円寺の宿鳳山高円寺、品川区の品川神社の3か所しかないが、3社とも有名な神社なので、「東京三鳥居」として有名である。名古屋では中村区の白龍神社末社にあるものが有名。
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