日本の木炭
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 05:00 UTC 版)
日本の木炭は、400℃あたりの温度で炭化を進めた後、精錬工程として細かな「ネラシ」が入るのが特徴である。白炭は空気を入れて未炭化成分を焼き飛ばすネラシを行い、黒炭は密閉した炉内で時間をかけて炭化を上げるネラシを行う。 ※ネラシ=炭化の終わりに炭窯の温度を上げて炭の中のガス分を抜き、同時に焼き締めること。 白炭…カシ系の硬い木材が使われる。叩くと鉄琴のような金属音がするのが特徴。炭窯の焚き口で燃料となる薪を燃やし、窯全体の温度を上げ、その後焚き口を閉じて窯内部を400℃あたりで5日間ほど熟成させる。この間、ほとんど酸素が供給されなくてもカシの可燃成分がガスとして徐々に出て、窯内の温度が維持される。窯の煙からは酢酸を含んだ強い刺激臭が出るが、その臭いや色が工程を見極める要素の一つでもある。その後、炭窯の焚き口を徐々に開いて未炭化成分を焼き飛ばし、炭の温度を1000℃ - 1200℃まで上昇させたのち、炭を数時間かけて窯の外に掻き出して、随時速やかに「消し粉」(土と灰を混ぜて水を含ませたもの)をかけ、1日かけて冷やす。これにより硬く焼き締められ、炭素純度が高く、灰により白っぽい外見となる。これら一連の作業には、伝統的な手作業による技法の場合およそ2週間を要する。これらの作業工程によって燃焼臭が非常に少なく、長時間安定した火力が持続する白炭が出来上がる。白炭はその特性から飲食店など業務用途で需要が高く、また白身魚など素材本来の香りが重視される調理にも向く。備長炭…紀伊国田辺の商人備中屋長左衛門(備長)が販売したことが名前の由来である。 黒炭…ナラ系の木材が多く使われる。400℃あたりで熟成させた後、炭窯の煙道を閉じ、徐々に700℃あたりまで温度上昇させ、次に焚き口と煙の出口も閉じて炭窯全体を密閉し、酸欠状態で時間をかけて鎮火、自然冷却を行い完成する。白炭よりも炭素以外の成分が多く残っていることから火力と、燻製のような芳香がはっきりあり、比較的着火しやすく燃焼時間も1〜2時間以内程度なので、バーベキュー(パーティー)など肉料理に向く。 成形木炭オガ炭…オガクズを加熱圧縮して製造された成型薪「オガライト」を炭化させたもの。形状と性質が製品ごとに均質であり、白炭に似た特性でありながら比較的安価で、爆跳の危険性も少なく、飲食業で多用されている。密閉した炭窯を1200℃近くまで上げ熟成させたあと、仕上げの最後に、一気に空気を入れて(または炉外に出して)未炭化成分を焼き飛ばし、急冷させ焼き締める(ネラす)。製法としては白炭に近く、性質も白炭に似る。オガ炭の多くは、コストの関係から日本企業の中国や東南アジアの現地法人などで製造されており、それらの大規模生産工場では一連の作業をオートメーション化している場合も多い。 竹炭 活性炭
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