新生子豚-肥育豚
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 02:22 UTC 版)
新生子豚は、21日 - 24日の授乳期を経て1カ月程度で離乳させる。その後、肥育豚として主に配合飼料を給餌し、豚舎内で群飼肥育される。豚の寿命は10年から15年ほどだが、食用豚は6 - 7ヶ月で105 - 110キロ・グラム程度に仕上げられ、屠畜される。 新生子豚への外科的処置 歯切り 新生子豚には8本の鋭い歯が生えており、母豚の乳頭の取り合いをする際に、他の子豚や母豚の乳房を傷つける可能性がある。また、母豚が乳頭を噛まれ授乳を拒否したり、急に立ち上がったりすることにより、子豚のけがや圧死の原因となる可能性もある。歯切りは、このような事故等を防止するための手段の一つと考えられている。ただし、屋外放牧を行ったり、蜜飼いを避けるなどの、ストレスのない環境下では、歯の切断をしなくても損傷が起こらなかったり、かみつく行動が減ったりする。 歯切は、子豚に、神経感染症や出血、骨折等の痛みを引き起こすことが知られる。そのため、欧州連合(EU)では歯の切断を日常的に行うことを禁止しており、デンマーク、ノルウェーでは歯の切断自体を禁止している。 日本国内での法規制はなく、日本の農家の63.6パーセントが歯切りを実施しており、そのうち8割はほぼ根元から切断されている。歯切りは通常生後7日以内に無麻酔で行われる。また,、その道具として日本の農家の9割以上がニッパーを使用している。 断尾 目的は尾かじりを防止するためで、通常生後7日以内に、無麻酔で実施される。豚舎での過密飼い、換気の不備、梅雨時期の多湿や夏場の高温等、豚がストレスを受けた場合に、他の豚の尾をかじる行動や、耳や腹を噛む等の行動が見られることがある。尾かじりの行動が起きた場合には、その行動は群内にすぐに広まり、尾かじりを受けた豚は、ストレスにより飼料の摂取量や増体量が低下したり、怪我がひどい場合には死亡したりすることがある。尾かじりは代償行為であり、豚は好奇心が強いが、それが満たされない環境にあることで、尾かじり行動に転嫁する。.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}餌を得るための探査行動は動物にとって強い欲求を持つ行動の一つである。特にブタは嗅覚が優れており、強靭な鼻を利用して土を掘り起こすルーティングやものを噛むチューイングといった行動に対して強い発現欲求を持っている。その行動を制限されることでブタは強い欲求不満状態に陥る。十分に発現できない行動に対してブタは、施設をかじることや他個体の尾や耳をかじること、もしくは攻撃行動といった行動に転嫁して発現するのである。 —月刊「畜産技術」2014年12月号27ページ- 日本国内での法規制はなく、82.2パーセントの農家で断尾が実施されている。一方で、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、リトアニアでは麻酔なしでの尾の切断を禁止あるいは規制しており、カナダでは2016年7月1日から、年齢にかかわらず痛みを制御する鎮痛剤を用いて行われなければならないとされている。フランスでは、豚の尾の切断により罰金に処せられたケースもある。 雄豚の去勢 去勢は食肉とされた時の雄独特の雄臭を防ぐ目的と、闘争を減少させ怪我を防止するために行われる。去勢は通常生後1週間以内に実施され、鋭利なカミソリでふぐり(陰嚢)を切開し睾丸を取り出し、引き抜き、切り取る、という方法で行われる。処置中だけでなく処置後も痛みが継続する。音の分析では、麻酔なしで去勢した場合、通常の悲鳴よりもはるかに強い。1985年にWemelsfelder と Puttenによって、去勢したブタと、去勢していないブタの鳴き声の比較研究が行われた。(子豚に)単に手を触れている間に起こる悲鳴の周波数は3500ヘルツだったが、最初の切開後には4500ヘルツになり、2度目の切開後には4857ヘルツに達した。音声に発生する周波数と周波数領域に渡る音声分布の変化の大部分は、去勢後により高くなった。去勢直後の子豚は動きも少なく、ふるえたり足がぐらついたり滑ったり尾を激しく動かしたり、嘔吐する豚も見られたが、初めは皆横に寝そべったりはしないで、臀部の痛みが収まり始めてから横たわる。2~3日間これらの行動の変化のいくつかが引き続き見られることにより、痛みの持続期間を指し示した。 —集約的に飼育された豚の福祉 < EC 獣医学委員会報告書>、 そのため無麻酔の去勢は福祉的に貧困であるといえる。臭いは、雄豚が成熟した時に発現する。そのためブタが成熟してそういったものが発現する前に屠殺するのであれば必要はない。また、痛みを伴わないよう、外科的去勢は、十分な長時間持続性鎮痛剤を使用するという条件ならば行われるべきである。 日本国内での法規制はなく、ほぼ100パーセントの雄豚に無麻酔で去勢が実施されている。 一方で、外科的去勢を規制する国も出てきている。欧州連合では、2018年からは、自主的に外科的去勢を「原則」終了することとした。スイスは2009年に、デンマークは2019年に、無麻酔去勢を禁止した。カナダでは2016年以降麻酔なしでの豚の去勢は禁止、ドイツでは2019年1月から国内外の子豚の無麻酔去勢が禁止される。2022年1月1日からフランスでも無麻酔去勢の禁止が決定した。 また去勢をほとんど行っていない国もある(去勢率:イギリス2%、ポルトガル12.5%、スペイン15%、オランダ20%)。オーストラリアでは性成熟を迎えて臭いが出てしまう前のと殺や、インプロバックなどの製剤による免疫学的去勢(ワクチンを2回接種することで、精巣機能を阻害する抗体を産生させ、性成熟を遅らせることができる)が一般的であり、動物福祉の観点から外科的去勢はほとんど行われていない。
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