文献等に基づく集団自決の理解とは? わかりやすく解説

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文献等に基づく集団自決の理解

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/13 05:24 UTC 版)

大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判」の記事における「文献等に基づく集団自決の理解」の解説

座間味島における集団自決について 座間味島では、昭和20年3月23日忠魂碑前に集合した多数住民集団死亡した認められその際に、軍事装備である手榴弾利用されたことは証拠から認めることができる。この集団自決梅澤命じたとの記載のある『鉄の暴風』『秘録 沖縄戦史』『沖縄戦史』等には、その取材源等は明示されておらず、『秘録 沖縄戦史』のようにその作者死亡しているような書籍については、座間味島集団自決発生して当の年月発生している現在ではその取材源等を確認することは困難である。 しかし『沖縄県第10巻』『座間味村下巻』『沖縄証言』には多く集団自決に関する体験談記述があるほか、本件訴訟契機とし新聞報道されたり本訴陳述書として提出されたりしている。こうした体験談等は、いずれも自身実体験に基づく話として具体性迫真性を有するものといえ、また多数体験者らの供述昭和20年3月25日夜に忠魂碑前に集合して玉砕することになったという点で合致しているから、その信用性相互に補完し合うものといえる。また、こうした体験談多く共通するものとして、日本軍兵士から米軍捕まりそうになった場合には自決促され、そのための手段として手榴弾渡されたことを認めることができる。 沖縄配備され第三二軍防諜意を用いていたことは、日本軍による住民対す加害行為端的に表れている。1.渡嘉敷島において、防衛隊であった国民学校訓導渡嘉敷島身寄りのない身重婦人子供安否気遣い数回部隊離れたため敵と通謀するおそれがあるとしてこれを処刑したこと、2.渡嘉敷島で、赤松大尉が、集団自決怪我をして米軍保護され治療受けた二名少年米軍庇護のもとから戻ったところ、米軍通じたとして殺害したこと。3.渡嘉敷で、赤松大尉が、米軍捕虜となりその後米軍指示投降勧告にきた伊江島の住民男女六名対し自決勧告し処刑したこと、これらは第三二軍防諜意を用いていたことに通じる。第二戦隊の隊長昭和20年 2月8日慶留間島住民に対して「敵の上陸は必至。敵上陸暁には全員玉砕あるのみ」と訓示た行為や、米軍の「慶良間列島作戦報告書」の座間味村状況についての「明らかに民間人たちは捕らわれないために自決するように指導されていた」との記述第三二軍防諜意を用いていたに通じる。 原告梅澤率い座間味島駐留した第一戦隊の装備は「機関短銃九のほか、各人拳銃弾薬数発)、軍刀手榴弾携行」というものであり、慶良間列島沖縄本島などと連絡遮断されていたから、食糧武器補給困難な状況にあった認められ装備品殺傷能力比較する手榴弾極めて貴重な武器であった認められる。そして、原告梅澤本人尋問において村民渡せ武器弾薬はなかったと供述していることも判示したとおりである。 こうした事実加えて座間味島渡嘉敷島始め慶留間島沖縄本島中部沖縄本島西側美里伊江島読谷村沖縄本島東部具志川グスクなどで集団自決という現象発生したが、集団自決発生した場所すべてに日本軍駐屯しており、日本軍駐屯しなかった渡嘉敷村前島では集団自決発生しなかったことを考えると、集団自決については日本軍深く関わったものと認めるのが相当であって沖縄においては第三二軍駐屯しており、その司令部最高機関として各部隊配置され第三二軍司令部最高機関とし、座間味島では原告梅澤頂点とする上意下達組織であった認められるから、座間味島における集団自決原告梅澤関与したことは、十分に推認できるというべきである。 もっとも、原告梅澤による自決命令伝達経路等は判然とせず、原告梅澤言辞直接聞いた体験者を本件証拠から認められない以上、取材源等は明示されていない鉄の暴風』『秘録 沖縄戦史』『沖縄戦史』等から直ちに『太平洋戦争』にあるような「老人・こどもは忠魂碑の前で自決せよ。」との梅澤命令それ自体まで認定することには躊躇禁じ得ないしかしながら,以上認定したように,梅澤座間味島における集団自決関与したものと推認できること加え平成17年度までの教科書検定状況学説状況、諸文献存在そうした文献等についての信用性に関する裁判認定判断家長三郎及び被告大江本件各書籍の取材状況等を踏まえると、原告梅澤座間味島住民対し太平洋戦争』の内容自決命令発したことを直ち真実断定できないとしても、この事実については合理的資料若しくは根拠があると評価できるから、本件各書籍の各発行時において、家長及び被告大江らが前記事実真実であると信じるについての相当の理由があったものと認めるのが相当である。 渡嘉敷島における集団自決について 渡嘉敷島では、昭和20年3月25日西山陣地北方盆地集合した多数住民集団死亡した認められその際に、軍事装備である手榴弾利用されたことは証拠から認めることができる。この集団自決赤松大尉が命じたとの記載のある『鉄の暴風』『秘録 沖縄戦史』『沖縄戦史』等には、その取材源等は明示されていないことなどは、座間味島における集団自決について先に判示したのと同様である。 渡嘉敷島における集団自決についても、多くのの集団自決体験者の体験談等があり、これらの体験談等は、いずれも自身実体験に基づく話として具体性迫真性を有するものといえ、信用性有することも、座間味島における集団自決について先に判示したのと同様である。 沖縄配備され第三二軍防諜意を用いており、赤松大率い第三戦隊の渡嘉敷島住民らに対す加害行為(注:上述の項目「座間味島における集団自決について」)はそうした防諜行為通じ第二戦隊の隊長言動米軍の「慶良間列島作戦報告書」の記載防諜意を用いていたに通じる。 渡嘉敷島における集団自決は、 昭和20年3月27日渡嘉敷島上陸した翌日である同月28日赤松大尉の西山陣地北方盆地への集合命令の後に発生しており、赤松大率い第三戦隊の渡嘉敷島住民らに対す加害行為考えると、赤松大尉が上陸した米軍渡嘉敷島住民捕虜となり、日本軍情報漏洩することをおそれて自決命令発したことがあり得ることは容易に理解できる赤松大尉は、防衛隊であった国民学校訓導渡嘉敷島身寄りのない身重婦人子供安否気遣い数回部隊離れたため、敵と通謀するおそれがあるとして処刑しているところ、これに反し米軍上陸した後、手榴弾持った防衛隊員が西山陣地北方盆地集合している住民のもとへ部隊離れて赴いた行動赤松大尉が容認したとすれば赤松大尉が自決命令発したことが一因ではないか考えざるを得ない赤松大尉が率い渡嘉敷島駐留した第三戦隊の装備は「機関短銃五(弾薬〇〇〇発)のほか,各人拳銃(弾薬一銃 につき四発),軍刀手榴弾携行であった認められ慶良間列島沖縄本島などと連絡遮断されていたから、食糧武器補給困難な状況にあった認められ装備品殺傷能力比較する手榴弾極めて貴重な武器であった認められる。そして,第三戦隊に属していた中隊長上述のI証人)が手榴弾交付について「恐らく戦隊長了解なしに勝手にやるようなばかな兵隊はいなかったと思います。」と証言しており、手榴弾集団自決使用されている以上、赤松大尉が集団自決関与していることは、強く推認される。 こうした事実加えて先に座間味島における集団自決について判示したとおり、沖縄県集団自決発生した場所すべてに日本軍駐屯しているおり、日本軍駐屯しなかった渡嘉敷村前島では集団自決発生しなかったことを考えると、集団自決については日本軍深く関わったものと 認めるのが相当であって沖縄においては第三二軍駐屯しており、その司令部最高機関として 各部隊配置され第三二軍司令部最高機関とし、渡嘉敷島では赤松大尉を頂点とする上意下達組織であった認められるから、渡嘉敷島における集団自決赤松大尉が関与したことは、十分に推認できるというべきである。 もっとも、赤松大尉による自決命令伝達経路等は判然とせず、赤松大尉の命令直接聞いた体験者を本件証拠から認められないことは、座間味島における集団自決と同様であり、取材源等は明示されていない鉄の暴風』『秘録 沖縄戦史』『沖縄戦史』等から、直ちに『沖縄ノート』にあるような「部隊は、これから米軍迎えうち長期戦に入る。したがって民は、部隊行動さまたげいために、また食糧部隊提供するため、いさぎよく自決せよ」との赤松大尉の命令内容それ自体まで認定することには躊躇禁じ得ないことも、座間味島における集団自決における梅澤命令と同様である。 しかしながら,以上認定したように、赤松大尉が渡嘉敷島における集団自決関与したものと推認できること加え平成17年度までの教科書検定状況学説状況、諸文献存在そうした文献等についての信用性に関する裁判認定判断被告大江沖縄ノート取材状況等を踏まえると、赤松大尉が渡嘉敷島住民対し沖縄ノート』にあるよう内容自決命令発したことを直ち真実断定できないとしても、この事実については合理的資料若しくは根拠があると評価できるから、『沖縄ノート発行時において、被告らが前記事実真実であると信じるについての相当の理由があったものと認めるのが相当である。

※この「文献等に基づく集団自決の理解」の解説は、「大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判」の解説の一部です。
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