【彗星】(すいせい)
空技廠(海軍航空技術廠)D4Y2.
大東亜戦争中期に開発・生産された、日本海軍の艦上爆撃機。
当初、海軍は九九式艦上爆撃機の後継としてドイツのHe118を国産化する計画を立てていたが、機体構造や量産準備に問題があり、また国産の意見も強かったので、結局は国産に落ち着いた。
結果海軍は、昭和13年に空技廠で試作されていた「十三試艦上爆撃機」を量産化することとして開発を開始した。
最大速度519km/h、航続距離1842kmの要求はかなり厳しく、設計陣は徹底した空力的洗練を行うことで対応した。
そのためエンジンはダイムラーベンツ製の「DB-601A」液冷エンジンが採用(量産型はDB-601Aのライセンス生産品である熱田一二型を搭載)され、爆弾も爆弾槽に収納されることになった。
昭和15年1月には試作機が完成し、予想通りの高性能を発揮したが、各部改修や強度問題の発生などで採用が遅れ、昭和18年12月にようやく「彗星一一型」として制式採用された。
なお、制式採用より以前、爆弾槽にカメラを装備したタイプが「二式艦上偵察機」として蒼龍に先行して搭載され、ミッドウェー海戦にも参加した。
しかし、空冷エンジンを搭載した機体がほとんどだった日本製航空機には馴染みが薄く、整備しづらい傾向が強かった液冷エンジンは、不調による稼働率の低さに悩まされ、後に空冷エンジンに変更した機体も製作されている。
スペックデータ(彗星一二型)
機体略号 | D4Y2 |
乗員 | 2名 |
全長 | 10.22m |
全高 | 3.3m |
全幅 | 11.5m |
主翼面積 | 23.6㎡ |
自重 | 2,440kg |
最大重量 | 3,650kg |
プロペラ | ハミルトン定速3翅 |
発動機 | 愛知「熱田」三二型液冷倒立V型12気筒(公称1,340馬力)×1基 |
最高速度 | 580km/h(高度5,250m) |
上昇限度 | 10,700m |
航続距離 | 1,463~3,604km |
固定武装 | 7.7mm機銃×3門(機首固定2門(携行弾数各600発)、後上方旋回1門) |
爆装 | 500kg爆弾×1発もしくは30kg爆弾×2発 |
生産機数 | 2,157機(空冷型等含む) |
主なバリエーション
- 十三試艦上爆撃機(D4Y1):
DB 601A液冷エンジンを搭載した試作型。生産数5機。
- 二式艦上偵察機一一型(D4Y1-C):
偵察用カメラと爆弾倉内蔵式増加燃料タンクを追加した艦上偵察機型。
- 二式艦上偵察機一二型(D4Y2-C/R)
発動機をアツタ三二型に換装した艦上偵察機型。
派生型に後方旋回機銃を13mm機銃に強化した一二甲型(D4Y2-Ca/Ra)も生産された。
- 彗星一一型(D4Y1):
「熱田」二一型(公称1,010hp)発動機搭載の初期型
- 彗星一二型(D4Y2):
「熱田」三二型(公称1,340hp)発動機を搭載する艦上爆撃機型。
風防形状や照準器が変更されている。
- 彗星一二甲型(D4Y2a):
後部旋回機銃を13mm口径に変更した武装強化型。
- 彗星一二戌型(D4Y2-S):
偵察員席後方に20mm固定機銃(斜め銃)4丁を搭載した試作夜間戦闘機。
三〇二空を始めとする本土防空部隊と芙蓉部隊に配備された。
- 彗星二一型(D4Y1改):
航空戦艦への搭載用に、一一型の機体を強化し、発動機を熱田三二型に換装、カタパルト射出可能に改造した型。
- 彗星二二型(D4Y2改):
航空戦艦への搭載用に、一二型の機体を強化し、カタパルト射出可能に改造した型。
- 彗星二二甲型(D4Y2a改):
航空戦艦への搭載用に、一二甲型をカタパルト射出可能に改造した機体。
- 彗星三三型(D4Y3):
液冷エンジンの稼働率の悪さから、空冷の金星六一型または金星六二型(離昇1,560馬力)に換装した機体。
試作機を除き制動フック無し。
一二型同様、後方旋回機銃を13mm機銃に強化した三三甲型(D4Y3a)も生産された。
宇垣中将の最後の乗機も本機である。
- 彗星四三型(D4Y4):
後席を廃止し、防弾装備を強化、爆弾倉扉廃止などの改修を施した簡易型。
加速用の火薬ロケットを装備するために胴体下部にロケット装着用の大きな切欠きがある。
- 彗星五四型(D4Y5):
「誉」一二型(公称1,650hp)発動機搭載型。計画のみ。
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