建築物の特徴と保存方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/24 22:10 UTC 版)
「佐原の町並み」の記事における「建築物の特徴と保存方法」の解説
忠敬橋を中心として、小野川沿い約700メートル、香取街道(千葉県道55号佐原山田線)沿い約1000メートルの範囲、および下新町通りに歴史的建造物が多く存在する。小野川沿いは、かつて米問屋や醸造業を営んでいた店が多いことから、比較的大規模の店が多い。道沿いには柳の木が植えられ、また、川から荷物を揚げるのに用いられた「だし」と呼ばれる階段が復元されている。香取街道沿いは小型な切妻平入り2階建ての店が多い。また、銀行として使われた洋風の建物もあり、変化に富んでいる。下新町通りには町屋は少なく、醸造家や地主の大規模な敷地が目立つ。 建造物の特徴としては、江戸時代(主に土蔵)から明治(正文堂など)、大正(三菱館など)、昭和まで、幅広い年代の建造物が混在していることが挙げられる。ただし1892年に大火が起こったため、現存する建物の大半はそれ以後に建築されたものである。また、その火事の影響から、防火設備を施したものも多い。 現在でも当時の商売を続けている店舗が多く、生きている町並みであるといわれている。商業都市としての機能が薄れたにもかかわらず店舗が保存されてきた理由としては、繁栄当時の富の蓄積があったことや、店の規模は縮小しても住居として使用しているため空き家にならなかったことが挙げられている。実際、本地区の人口自体は、商業活動が衰退した後もしばらくは大幅な減少が見られなかった。これは、通勤圏に成田空港の関連企業や鹿島臨海工業地帯が作られたため、佐原に住み続けてこれらの勤務地に通う住人がいたことも影響していると考えられている。 しかしながら、近年は観光客向けの店が増えてきており、生活感が失われてきていると指摘する意見もある。また、廃業して住宅地や廃屋となった店舗も見られる。特に小野川沿いは舟運に依存した店が多かったこともあり、廃業し現代的な建物の住宅地となった区域が多い。1989年からは佐原の中心市街地の人口も減少を続けており、建物の維持管理や後継者問題などの課題も抱えている。 空き家の解消として、空き店舗を活用して新たな商売を始めるところも現れてきている。また、空き家を香取市が譲り受けて修繕したのちに、地域活性化施設として事業者に期間限定で提供する活動を始めた。2017年からは地元の団体「やまゆ」がこの店舗を使用してイベント等を開催している。 建築物の改築や修繕については、香取市佐原地区歴史的景観条例(合併前の「佐原市歴史的景観条例」に相当するもの)に則っている。この条例では町並みを「伝統的建造物保存地区」と「景観形成地区」に分けており、建物の改築等を行う際には、前者は許可が、後者は届出が必要になる。また、建物の修繕を行うにあたっては、助成率に応じた助成金が支給される。2007年の時点で、伝統的建造物保存地区で90件、景観形成地区で35件の修理を行った。 建物の改築にあたっては、街路沿いの景観を守るために、高さは3階以下、構造は伝統的建築様式を基本とする、などといった一定の規制を設けている。しかし工法や材質の基準は緩やかであり、例えば瓦については「黒色または鼠色の日本瓦」であればよい。ただし、町並みに対する意識が高まりによって、1998年ごろからは旧来の方式による燻し瓦を使用することが多くなったという。街路の奥にある住宅部分に関しては制限が無いため、現代風に改築される例が多い。 様々な年代の建築物が残されているため、改築にあたっては特定の時代設定をせず、どの時代を再現した建築にするかは建物によって異なる。また、建物を古く見せるための古色塗りを行わずに、新しい木材をそのまま使い、年月を経ることで周囲となじませるようにしているのも特徴である。 空き地に新しく木造建築を建てる場合、都市計画法の防火地域に指定されていると建築の制限を受けるが、本地区では防火地域の指定を解除した。代わりに「まちかど消火栓」を複数設けて初期消火に対応している。
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