平均律クラヴィーア曲集 第1巻とは?

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バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻

英語表記/番号出版情報
バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻Das wohltemperierte Clavier, 1 teil, 24 Praludien und Fugen BWV 846-BWV 869作曲年: 1722年  出版年: 1801年  初版出版地/出版社Simrock, Hoffmeister & Kühnel, Nägeli 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第1番 ハ長調 C Dur BWV8461分10
2 第2番 ハ短調 c Moll BWV847 1分12秒
3 第3番 嬰ハ長調 Cis Dur BWV848 1分21
4 4番 嬰ハ短調 cis Moll BWV8492分40
5 第5番 ニ長調 D Dur BWV850 1分10
6 第6番 ニ短調 d Moll BWV8510分52
7 第7番 変ホ長調 Es Dur BWV8524分20
8 第8番 変ホ短調 Es Moll BWV8533分00
9 第9番 ホ長調 E Dur BWV854 1分20
10 10番 ホ短調 e Moll BWV855 2分20
11 11番 ヘ長調 F Dur BWV856 1分10
12 12番 ヘ短調 f Moll BWV857 1分40
13 13番 嬰ヘ長調 Fis Dur BWV8581分30
14 14番 嬰ヘ短調 fis Moll BWV859 1分40
15 15番 ト長調 G Dur BWV860 1分00
16 16番 ト短調 g Moll BWV861 1分40
17 17番 変イ長調 As Dur BWV862 1分20
18 18番 嬰ト短調 gis Moll BWV863 1分40
19 19番 イ長調 A Dur BWV8641分30
20 20番 イ短調 a Moll BWV865 1分20
21 21番 変ロ長調 B Dur BWV866 1分10
22 22番 変ロ短調 b Moll BWV867 2分10
23 23番 ロ長調 H Dur BWV868 1分10
24 24番 ロ短調 h Moll BWV869 3分00

作品解説

2007年5月 執筆者: 朝山 奈津子

 「うまく調律されたクラヴィーアDas Wohltemperirte Clavier)、あるいは、長三度つまりドレミ短三度つまりレミファにかかわるすべての全音半音を用いたプレリュードとフーガ音楽を学ぶ意欲のある若者たち役に立つように、また、この勉強にすでに熟達した人たちには、格別時のすさびになるように。元アンハルトケーテン宮廷楽長室内楽監督ヨハン・ゼバスティアン・バッハ起草完成1722年。」

 18世紀前半にはまだ、現代的な意味での平均律(1オクターヴ12音の各弦長比を2の平方根12乗とする調律法)を実践できなかったが、少なくともバッハは「24の調がすべて綺麗弾けるように自分楽器調律することを学んだ」(フォルケル)と言われている。この曲集が《インヴェンション》と同じく教程として編まれたことは間違いない。しかし同時に、全調を用いて音楽の世界踏破するという大きな理念込められていた。「世界」の普遍的な秩序捉えること。これは16-17世紀通じて希求された究極神学課題である。《平均律クラヴィーア曲集》は、神の秩序をうつしとった、小さな完成された「世界」(ミクロコスモス)なのである
 このことは音楽的にどのように確かめられるだろうか
 ひとつの調には自由な書法プレリュード厳格な書法フーガが1曲ずつ配されるが、多く場合、これらは調以外にはほとんど何ら関連もない。両者は「自由」/「厳格」という対立項ですらないし、プレリュードは文字通りフーガの「前奏」であるわけもないプレリュードにはきわめて多様な新旧書法形式様式のものが現れる。またフーガにせよ、簡明、あるいは比較的自由なものから、厳格対位法極限追究するものまで、さまざまである。それでも、各曲は24の調の世界の中で自らの位置を保ち、全体秩序を成す。まさに「多様な中にも多様なものの統一」であり、これこそ「世界」の似姿なのだ。《平均律》は言うまでもなく、つねに全24調を通して弾くことを想定した曲集ではない。しかしどの1曲を取り出してもそこには「世界」の一角が宿っている。
 ここで、「調の性格」という概念について考えてみなければならないバッハ同時代ハンブルク音楽家マッテゾンは、各調がそれぞれ固有の絶対的性格表現する、という硬直した考え再三警告を放ったうえで、「荘重にして高貴」(ニ短調)、「洗練きわめる」(ヘ長調)、「荒削りで頑固」(ハ長調)、「鋭く頑固」(ニ長調)などと性格付け試みた。バッハも、こうしたそれぞれの調に対す一般的なイメージ顧み、さらに当時はほとんど馴染みのなかった――簡単に言えば調号の多い――調に初め固有の性格与えた。(もっとも、原曲移調して曲集に加えられたものもあり、マッテゾン言うとおり、調の持つ表現多様性無視てはならない。)調性格論のさらなる展望を得るには、声楽曲を含めたバッハ創作全体を見渡す必要があるが、《平均律》第I巻では少なくとも、シャープ系は輝かしく、フラット系は柔和な傾向にある、ということができよう。

 作曲は1720-22年、ケーテン務め時代、また長男フリーデマン音楽の手ほどきを始め時代にあたる。フリーデマン音楽帖にはすでに11プレリュード原曲見られる1722年浄書された。18世紀には筆写譜を通じ広く伝えられ、モーツァルトベートーヴェンもよく研究した。出版譜は1801年19世紀始まり告げる年に、ドイツ語圏3つの出版社から同時に刊行された。ライプツィヒのホーフマイスター・ウント・キューネル社(のちのペータース社)ではフォルケルボンジムロック社ではシュヴェンケ、チューリヒネーゲリ社はネーゲリ自らが校訂している。この出版がバッハ・ルネサンスの嚆矢となった。(なお、フォルケル出版上の手違いから第II巻を先に刊行した。)

※《平均律クラヴィーア曲集 第2巻》もご覧下さい



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