宇宙開発計画に与えた影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 14:28 UTC 版)
「コロンビア号空中分解事故」の記事における「宇宙開発計画に与えた影響」の解説
コロンビア号を喪失したことにより、シャトル計画は一時的な中止を余儀なくされた。またシャトルは国際宇宙ステーション(ISS)の区画を宇宙に運搬する唯一の手段であったため、ISSの建設にも大幅な遅延が生じた。この間物資の補給にはロシアのプログレス補給船が、飛行士の送迎には同じくロシアのソユーズ宇宙船が使用され、ステーションの運営は最小人員の2名でまかなわなければならなくなった。 2003年7月下旬にAP通信が行った世論調査では、アメリカ国民は依然として宇宙開発計画を強く支持していることが明らかになった。調査では全体の3分の2がシャトルの飛行を続けるべきだとし、宇宙開発に予算を投入することに賛成した者は4分の3に達した。また火星への有人探査がよい考えだと思う者は49%、反対だと思う者は42%で、教師のような民間人を宇宙に送ることに賛成する者は56%、反対する者は38%であった[要出典]。 事故から1年も経たない頃、ブッシュは「宇宙開発の展望」を表明し、その中でシャトルは国際宇宙ステーション建設において「関係各国に対する我々の責務を果たすべく」今後も飛行を続けることを命じ、2010年のISSの完成とともに退役させ、その後は月面着陸や火星飛行のために新規に開発された「有人開発船(Crew Exploration Vehicle)」に置き換えることを明らかにした。NASAは2004年9月頃までにはシャトルを復帰させたいと考えていたが、実際には2005年7月にまでずれ込んだ。 2005年7月6日午前10時39分(東部標準時)、最初の「リターン・トゥ・フライト(飛行再開)」ミッションとして野口聡一飛行士が搭乗するディスカバリー号が発射台を離れた。そのSTS-114は全体としてはきわめて成功裏に終了したが、またしても外部燃料タンクのいくつかの部分から断熱材が剥落するのが確認された。破片が軌道船と衝突することはなかったが、NASAは原因分析と対策のため、次回以降の発射の延期を決定した。8月9日、着陸地点の天候不順のため再突入の日程は2日遅れたものの、 アイリーン・コリンズ(Eileen Collins)船長とジム・ケリー(Jim Kelly)飛行士の操縦により機体は無事に帰還した。この月の終わり、ルイジアナ州ニューオーリンズにある外部燃料タンクの製造工場「ミシャウド(Michoud)組立施設」がハリケーンカトリーナの被害を受けた。このため当時進行中だったすべての作業は9月26日までキャンセルされ、シャトルの飛行は2ヶ月あるいはそれ以上の遅延を余儀なくされるのではないかと懸念された。 2度目のリターン・トゥ・フライト計画STS-121は、発射台周辺の雷雲と強風の停滞による2度の延期の後、技術主任と安全主任の反対があったものの2006年7月4日午後2時37分55秒(米東部夏時間)に決行された。この飛行により、ISSの長期搭乗員は3名に増えることになった。直前になってETの発泡断熱材に130mmの亀裂が発見されたため安全への影響が懸念されたが、飛行運営幹部は発射を決定した。ディスカバリーは7月17日午前9時14分43秒(東部夏時間)、ケネディ宇宙センター15番滑走路に無事着陸した。 2006年8月13日、NASAはSTS-121では予想していた以上の断熱材の剥落があったことを公表した。このことが影響したわけではなかったが、次のSTS-115の発射は当初8月27日に予定されていたものの、ハリケーン「エルネスト(Ernesto)」がフロリダを直撃して機体が落雷の被害を受けたり、またETのセンサーに故障が発生するなど天候や技術上の問題があったため9月9日まで延期された。9月19日、軌道上で船体のすぐ近くに何かの物質が漂っているのが発見され、その検証のために帰還が数日遅れたが、結局機体には何も損傷を受けていないことが明らかになったので、アトランティスは9月21日に無事帰還した。 2008年12月30日、NASAはコロンビア号搭乗員の検死報告書を公表し、その中でオリオンなどの将来の宇宙船においては、搭乗員が生存できる可能性をさらに高めなければならないと言及した。そのための対策としては、飛行士の座席への束縛方法の強化、船室の急激な減圧に対するより効果的な対処方法の発見、仮に壊滅的な事故に陥った場合でも飛行士が生存できるような「ゆるやかに崩壊」する機体の開発、自動パラシュート装置の設置などが挙げられている。
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