基本邦語文献
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批判法学について体系的に学べる、邦語の基本文献を紹介する。 ○松井茂記(1986)「批判的法学研究の意義と課題(1)(2)」『法律時報』58巻9号・10号 著者は著名な憲法学者。当時の批判法学の主要文献を総覧的に紹介したもの。 ○内田貴(1990)『契約の再生』弘文堂 著者の関係的契約理論を打ち出すにあたり、関連する先行研究の一つとして批判法学を検討。 ○デイビット・ケアリズ編(1991)『政治としての法――批判法学入門』松浦好治他訳、風行社 批判法学者による編著で、必読文献の一つ。訳者解説も秀逸。ただし、底本は第1版のものであり、現在は第3版が出版されている。 ○和田仁孝(1996)『法社会学の解体と再生――ポストモダンを超えて』弘文社 著者の提唱する「解釈法社会学」を論じるにあたり、先史として批判法学を検討している(第2章)。 ○佐藤憲一(1998)(1999)「法の不確定性――法理解のパラダイム転換に向けて(1)(2)」『法学論叢』143巻2号・144巻6号 法の不確定性を論じるにあたり、批判法学の議論を多く参照。 ○中山竜一(2000)『二十世紀の法思想』岩波書店 第4章において、ポストモダン法学の一つとして批判法学を紹介している。なお、批判法学をポストモダン法学として考えるべきか否かは一つの論点である。 ○吉田邦彦(2000)『民法解釈と揺れ動く所有論』有斐閣 民法学者による検討。実定法学の観点から、批判法学の日本への適用の可否について論じている。 ○那須耕介(2001)「法の支配を支えるもの」『摂南法学』25号 批判法学とリベラル・リーガリズムの対立を掘り下げ、法の支配の存立条件を問い直すことを試みた論考。 ○三本卓也(2002)(2003)「法の支配と不確定性(1)(2)――ロベルト・アンガー『構造』概念の変容とその示唆」『立命館法学』2002年5号・2003年2号 アンガーについての本邦初の本格的研究。未完の著作であるが、ロナルド・ドゥオーキンとの比較はとりわけ示唆に富む。 ○スティーブン・フェルドマン(2005)『アメリカ法思想史――プレモダニズムからポストモダニズムへ』猪俣弘貴訳、信山社 表題のとおり、アメリカの法思想史について論じたもの。批判法学がモダニストであることを強調している。 ○吾妻聡(2005)「2つの逸脱主義的運動――ロベルト・M・アンガーの批判法学運動と新しい社会運動:社会の理想と権利の理想の呼応」『法社会学』 2005年 2005巻 63号 p.186-216,267, doi:10.11387/jsl1951.2005.63_186 著者はアンガーの下に留学(ハーバード)。日本法社会学会の学会奨励賞を受賞。本論考以外にもアンガーについての著作多数あり、アンガーの議論を障害法学に対し応用することを試みている。 ○船越資晶(2011)『批判法学の構図――ダンカン・ケネディのアイロニカル・リベラル・リーガリズム』勁草書房 著者はケネディの下に留学(ハーバード)。本邦初の批判法学についての単著で、必読文献の一つ。天野和夫賞を受賞。吾妻の論考と併せて読むと、アンガーとケネディの対立点がよく理解できる。本著以外にもケネディ流の批判法学についての著作多数。 ○大屋雄裕(2014)「批判理論」瀧川裕英他編『法哲学』有斐閣 根元的規約主義を法解釈に応用したことで知られる著者による批判法学の解説。法解釈に関する立場は批判法学に近いが、おそらくそれゆえに、評価は総じて批判的。 ○有賀誠(2018)『臨界点の政治学』晃洋書房 政治学者による論文集で、第I部・第II部において批判法学について論じている。数少ない法学者以外の研究。 ○見崎史拓(2018)「批判法学の不確定テーゼとその可能性(1)(2)(3・完)――法解釈とラディカルな社会変革はいかに結合するか」『名古屋大学法政論集』276・278・279号 法の不確定性論に対する批判法学(とりわけアンガー)の応用可能性を検討。 ○関良徳(2020)「人権論のパラドクスと抵抗への権利――コスタス・ドゥジナスの批判法学」『一橋法学』19巻1号 イギリスにおける批判法学の代表的論客であるコスタス・ドゥジナスの近年の主張について紹介・検討したもの。著者はポストモダン法学、とりわけミシェル・フーコーに造詣が深く、森村進編(2016)『法思想史の水脈』法律文化社のコラム「批判法学」も担当している。
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