単純部分発作
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 22:21 UTC 版)
単純部分発作は焦点局在部位によって、運動徴候を伴うもの、自律神経症状をともなうもの、体性感覚症状あるいは特殊感覚症状を伴うもの、精神症状を伴うものに分類される。一次運動野(中心前回)に発作焦点がある場合は対応する片側顔面、上肢、下肢に痙攣が生じる。間代性痙攣は、筋の過剰な収縮と弛緩がある程度規則的に反復されるガクガクとした痙攣である。過剰筋収縮が持続し、肢を伸展、すなわち突っ張るような、あるいは屈曲位を持続するのが強直性痙攣である。強直性痙攣から間代性痙攣に移行するのが強直間代性痙攣である。発作焦点から始まった局所的な大脳ニューロンの過剰放電が一次運動野にそって波及すると、顔の片側に始まった痙攣が同側の手指から前腕、上腕と波及していくことがある(「ジャクソンマーチ」)。痙攣したあとに痙攣した肢が一過性に麻痺することがあり、これを「トッドの麻痺」という。前頭葉眼球運動野に発作焦点がある場合は、眼球と頭部が病巣の対側に回旋するような向回発作が生じる。補足運動野に発作焦点があると、焦点と対側の上枝を伸展挙上し、これを見上げるように眼球と頭部を向ける姿勢発作が起こることがある。 運動発作名発作焦点焦点性運動発作 一次運動野 Jackson型発作 一次運動野 向回発作 前頭葉(側頭葉、頭頂葉) 姿勢発作 補足運動野 音声発作 補足運動野 感覚発作名発作焦点体性感覚発作 一次体性感覚野 視覚発作 後頭葉 聴覚発作 側頭葉聴覚野 嗅覚発作 側頭葉内側 味覚発作 側頭葉内側 回転性めまい発作 頭頂・側頭葉移行部 側頭葉内側を発作焦点とする自律神経発作、側頭葉を焦点とする精神発作もある。自律神経発作は上腹部不快感、嘔気、嘔吐、発汗、立毛、頻脈、徐脈といった自律神経症状をきたす発作であり、多くは大脳辺縁系のてんかん焦点に起因する。精神発作は既視感、未視感、恐怖感、離人感といった多彩な症状がある。側頭葉のてんかん活動に起因すると考えられている。精神発作は単純部分発作単独で出現することはむしろ稀であり、大部分は複雑部分発作の最初の症状として出現する。 単純部分発作の発作時、脳波は対応する皮質機能局在領野に始発する局在性反対側性発射であるが、頭皮上から常に記録できるとは限らない。発作発射(seizure discharge)は棘波の律動的発射の場合もあり、それより遅い種々の周波数の突発性律動波であることもありうる。臨床上単純部分発作であっても発作時あるいは発作間欠時に脳波上に焦点性突発波がみられない場合は少なくない。単純部分発作の間欠期の脳波は簡単にいうと局在性反対側発射である。 正常な脳が何故、てんかんを起こさないのかという問いかけに対して、2007年現在、薬理学では次のような解答が出されている。正常な中枢神経にはニューロンのシグナル活動を微調整する機構が備わっている。それはイオンチャネルの不応期とGABA作用性の介在ニューロンによる周辺抑制という機構である。 部分発作が発生するには電気活動の亢進による細胞レベルでの発作開始、周辺ニューロンとの同期、脳の隣接領域への伝播という3つのプロセスがある。発作開始時はある一群のニューロン内部で発作性脱分極性変位(PDS)が起こる。この脱分極は200msに及び、これが発生するとニューロンは活動電位を非常に早く連続的に発生するようになる。局所的な放電の場合、周辺抑制のため焦点に閉じ込められた放電が無症状に終わる。周辺抑制を乗り越えるにはGABA抑制作用の低下、ニューロン発火の増加による細胞外カリウム濃度の上昇、NMDAチャネルの開口が考えられている。周辺抑制を乗り越えると、同期放電が出現して症状が発現する。このときの同期放電が十分に強いと、隣接領域へ同期発火が伝播する。この伝播が前兆として知覚される。そして、皮質領域を結び付ける「U fiber」、脳梁、視床皮質投射線維を介して全体に広がることがある。 周辺抑制が認められる場合、「発作は起こらない」と考えられている。これらの機構が破綻する原因の一つに「癲癇発作がある」と考えられており、一部のてんかんにおいては、ナトリウムチャネルの異常が指摘されている。
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単純部分発作
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 08:55 UTC 版)
単純部分発作は焦点局在部位によって、運動徴候をともなうもの、自律神経症状をともなうもの、体性感覚症状あるいは特殊感覚症状を伴うもの、精神症状を伴うものに分類される。単純部分発作の発作時脳波は対応する皮質機能局在領野に始発する局在性反対側性発射であるが頭皮上から常に記録できるとは限らない。発作発射(seizure discharge)は棘波の律動的発射の場合もあり、それより遅い種々の周波数の突発性律動波であることもありえる。臨床上単純部分発作であっても発作時あるいは発作間欠時に脳波上に焦点性突発波がみられない場合は少なくない。単純部分発作の間欠期の脳波は簡単にいうと局在性反対側発射である。焦点発作の部位別の出現頻度では側頭前部焦点、半球性、側頭部、多発性、後頭部、頭頂部、前頭部の順に認められる。 Jasperによる1954年の検討では単純部分発作の焦点性発作性脳波異常は3つに分類することができる。 局在性表在性皮質焦点 頭皮上長径3~4cmの範囲内に散発性の持続の短い棘波が出現し、他の領域にはほぼ正常な脳波が認められる場合には表在性の皮質焦点が想定される。 埋没焦点と二次性両側同期 傍矢状焦点(一側大脳半球の内側)、基底部焦点(大脳半球の下面)、大脳内焦点などが知られている。 広汎性てんかん原領域
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