募集と訓練
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/21 07:29 UTC 版)
多くの操縦士は、所属する連隊からRFCに転属するとまず観測員になった。RFCの地上要員(下士官兵も多かった)が観測員としての飛行勤務を志願した場合も補助飛行手当を支給された。観測員に対する正規の訓練は1917年まで行われておらず、彼らの多くは操縦士から飛行機に関する簡単な説明を受けただけで任務に赴いた。十分な資格を持つと判定されると、観測員には待望の片方の翼のついた徽章が与えられた。これは一身に所属するものであるため、一旦与えられたら剥奪されることはなかった。当初、RFCにおいては、他の大部分の初期の空軍と同じく、観測員が名目上航空機を指揮し、操縦士は「お抱え運転手」のような位置づけだった。しかし実際のところRFCではこれは早いうちに覆され、操縦士が航空機を指揮するようになった。当時の作戦用複座機のほとんどには(F.K.8を例外として)複操縦装置が備えられておらず、そのため操縦士の死亡や無能さは、通常、避けがたい墜落を意味していた。しかしそれにもかかわらず、基本的な操縦技術を獲得する観測員は多かった。経験豊かな観測員が操縦士訓練課程に選抜されることはごく普通のことだった。 飛行機搭乗員の志望者はみな、集団での基礎訓練を終えると士官候補生としてRFCに入隊した。その後、士官候補生はみなレディングとオックスフォードにあった軍事飛行学校に進んだ。そしてそこで理論学習を終えると、イギリス国内・国外にあった訓練飛行隊に配属された。 第60飛行隊の指揮官であったロバート・スミス=バリー大佐は、訓練を終えたばかりの操縦士の技量の低さと、1915年から翌年に掛けての訓練中の死亡率の高さに驚愕した。彼は操縦士訓練のための包括的なカリキュラムを組んで、トレンチャードの合意のもと、イギリスに戻ると、1917年にゴスポートでその訓練思想を具体化した。効き目はすぐに現れ、訓練中の死亡事故は半分になった。 訓練カリキュラムは、座学による理論学習と、並行した飛行教練の組合せに基礎を置いていた。それは、訓練生に危険な機動をさせないのではなく、制御された環境下であえてそうした危険にさらし、その判断の誤りを正しく修正することを学ばせるためだった。 二重飛行教練は飛行に不適格なものを除くのに有効だった(入学者の約45%が該当した)。残った訓練生は次に教官(初期には、前線勤務の期限が満了してフランスの作戦部隊から休暇で戻されたパイロットが、特段の教官としての訓練を受けることなく務めていた)によって空中で教えられた。二重飛行訓練を10ないし20時間行った後、候補生は晴れて単独飛行に臨んだ。 1916年5月には、訓練中のパイロットに対し、空中での戦いのためのさらなる訓練が行われることになった。特別飛行訓練のための学校はターンベリー、マースク、セッジフォース、フェーストン、イーストフォーチュンおよびエアに置かれた。ひとまず訓練を終えたパイロットたちはそこで、ベテランの教官たちの監視のもと、模擬空中戦を行った。 1917年、アメリカとイギリスとカナダの各政府は、訓練のための統合部隊を作ることで合意した。1917年4月から1919年1月にかけて、オンタリオ州のキャンプ・ボーデンが訓練を担当し、飛行、無線、空中射撃および写真撮影を指導した。訓練を受けたのはRFCカナダのパイロット1,812人と、アメリカ合衆国のパイロット72人だった。訓練はオンタリオ州の他の数箇所でも行われた。 1917年から翌年に掛けての冬の期間に、RFCの教官はアメリカ陸軍の通信隊、3飛行場の合計約6,000人とともに、テキサス州フォートワース近くのキャンプ・タリアフェロ(Camp Taliaferro)で訓練を行った。訓練は過酷で、RFC士官と士官候補生合計39名がテキサスの地で死亡した。その地に埋葬された11名は1924年にイギリス連邦戦争墓所協会(Commonwealth War Graves Commission)の墓地に改葬された。現在、その地には彼らの犠牲に敬意を表する記念碑が建てられている。 エジプトには5箇所の補給ステーションに7個訓練飛行隊が配置されていた。 戦争が近付くにつれ、RFCは南アフリカ、カナダ、オーストラリアを含む大英帝国全体から要員を集めた。アメリカからは、アメリカ参戦前に200人以上がRFCに加わった。カナダ人は結局RFCの飛行機搭乗員のほぼ3分の1を占めるに至った。 戦争が進行するにつれて訓練はどんどん安全なものとなっていったが、それでも戦争の終りまでに訓練または事故で死亡した人員は約8,000名に上った。
※この「募集と訓練」の解説は、「イギリス陸軍航空隊」の解説の一部です。
「募集と訓練」を含む「イギリス陸軍航空隊」の記事については、「イギリス陸軍航空隊」の概要を参照ください。
- 募集と訓練のページへのリンク