刑事法の起草とは? わかりやすく解説

刑事法の起草

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 00:18 UTC 版)

ギュスターヴ・エミール・ボアソナード」の記事における「刑事法の起草」の解説

法典の編纂は、まず刑法典治罪法典(現在の刑事訴訟法)から行われた。その理由は、江戸時代までは各藩が独自の法度制定し、藩によって刑罰まちまちであったため、その統一急務であったからである。明治期入り明治政府仮刑律1868年)、新律綱領1870年)、改定律例1873年)と立て続け刑事法制定行ったのも刑罰権新政府独占するためである。しかしその骨子従前同様中国法直接継受して作られたもので、これまでの日本における律令大きな違いはなく、改定律例西洋刑法思想取り入れ律的罪刑法定主義ともいわれるほど個別犯罪要件個別的に明確に規定していたもの近代刑法と呼ぶに及ばないものであった。そこでボアソナード母国フランス刑法治罪法模範として刑法典ならびに治罪法典の起草命じられた。 ボアソナード近代刑法大原則である『罪刑法定主義』をとした刑法ならびに刑事手続の法を明文化した治罪法フランス語起草し、それを日本側が翻訳するという形で草案がまとめられた。起草された草案元老院審議経て旧刑法明治13年太政官布告36号)、治罪法明治13年太政官布告37号)として明治13年1880年制定され2年後施行される至った明治初期刑事手続では、江戸時代制度受け継いだ拷問による自白強要が行われていたが、これを偶然目にした彼は自然法反するとして直ぐさま明治政府拷問廃止訴えた1875年)。お雇い外国人の中で拷問廃止訴えたのはボアソナードけだったと言われている(正式に拷問廃止されたのは1879年)。 1878年司法省民法編纂会議の下で編纂されていた民法草案完成見たが(いわゆる明治11年民法」)、フランス法直訳であり修正すべき点が多いとの理由廃棄されることとなった刑事法編纂決着したことから、明治12年1879年)からボアソナード民法典起草着手した不平等条約撤廃交渉過程列強各国民法はじめとする近代法典の不在治外法権正当化理由としていたことから、江戸幕府引き続き明治政府早くから既に民法典編纂着手していたのであるが、日本民法典存在しなかったこともあってその起草は容易ではなく箕作麟祥らがナポレオン法典翻訳し民法草案幾度も作成されたが司法卿大木喬任直輸入的な草案拒絶し日本の実態即した民法典起草ボアソナード命じたのである(なお、家族法部分については伝統習慣影響極めて大きいため日本人の手によって起草)。 なお、民法典起草にあたって重要な参考資料とするために、大木全国慣例習俗2度渡って調査し、『全国民慣例類集』を編纂している(これは全国各地習慣を各土地長老有力者から聞き取り調査したものをまとめたもので、幕末から明治期における日本の風俗や習慣を知る上で貴重な史料である)。 ところが、1886年明治19年)に旧制東京大学帝国大学改称しイギリス法学を導入し始めると元老院民法編纂局は閉鎖されることとなり、大木内閣を介してボアソナード草案元老院提出するも、審理外務卿井上馨要請により保留され新たに設置され外務省法律取調委員会草案審理することとなった起草始めてから10年歳月経た明治23年1890年)、全1762条からなる民法明治23年法律28号及び第98号旧民法)が公布されたが、民法典論争結果旧民法施行延期され結局施行されることなく民法公布施行され、これにより旧民法廃止された。 もっとも、ボアソナード自身起草した草案施行されることこそなかったが、民法典出来前には、一時事実上法源として法曹法学者研究・利用された。当時国家試験主要科目でさえあったという。また、物権債権財産権などの原理原則現行民法受け継がれ、全条文のうち少なくとも半分くらいはフランス法影響があると主張する論者もいる(星野英一など)。そのため、現在においてもフランス留学する民法学者少なくない

※この「刑事法の起草」の解説は、「ギュスターヴ・エミール・ボアソナード」の解説の一部です。
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