刑事法上の論点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 04:39 UTC 版)
「立川反戦ビラ配布事件」の記事における「刑事法上の論点」の解説
本事件においては、刑事法上、以下の3点が特に問題とされている。 本件起訴は公訴権濫用にあたるのではないか。 被告人らが立ち入った場所は刑法130条(住居侵入罪)が規定する「住居」「人の看守する邸宅」への「侵入」に該当するのか(構成要件該当性の問題)。 形式的には住居侵入罪に該当するとしても、処罰するほどではないのではないか(可罰的違法性の問題) 公訴権濫用については最高裁が非常に制限的な立場を採っており、それに照らせば、この理論によって公訴提起が違法とされる公算は低い。この点については最高裁は特に判断を示していない。 被告人らが立ち入った場所は、入ろうと思えば誰でも入れる官舎の階段や通路部分に過ぎないことから、その部分は「住居」「人の看守する邸宅」ではないとの主張がある。弁護側もこれを採用した。しかし、共用部分(更には屋根等も)「住居」あるいは「邸宅」に該当するとするのが裁判判決例・学説の多数である[要出典]。検察側は住居説で起訴し、第1審は構成要件該当性の判断に当たって住居説を採用したが、控訴審及び上告審は邸宅説を採用した。 問題とされている場所がマンション等の共用部分(階段、通路等)であることは、そこへの立入りが「侵入」ではない、又は、処罰するほどの違法性(可罰的違法性)はない、との文脈で考慮されることが多い[要出典]。最高裁判所昭和58年4月8日判決(刑集37巻3号215頁)は、「他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ること」が住居侵入罪における「侵入」であるとしている。第一審、控訴審、上告審ともに基本的にはこの枠組に従ったものである。 「住居」又は「邸宅」への「侵入」であるとしても、可罰的違法性がないとして犯罪の成立を否定する余地がある。これは判例・学説ともに認めるところである[要出典]。可罰的違法性の有無は個別具体的な事案ごとの判断とならざるを得ない。第1審は、可罰的違法性が無いとして、無罪にしたわけであるが、控訴審及び最高裁は、管理権者から被害届などの提出がなされていることなどから、法益の侵害が著しく軽微であるとはいえないとして可罰的違法性を肯定している。 また、最高裁は住居侵入罪について管理権説を採用したが、憲法21条1項との関係で「私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。」とも言及しており平穏説に一定の配慮をしたとも思える表現を用いている。
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