内国電報の特殊取扱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 09:03 UTC 版)
局待電報 急いで返信を受け取りたい場合に、電報の差出人が発信局で待っていて、そこで返信を受けることができた。これを局待電報といった。指定略符号は和文はヤム。この指定をすることにより名宛人は差出人が局で待っていることを知り、局気付で返信を出した。付加料金は1音信に相当する料金(和文で15字分、欧文で5語分)。 再送電報 受信人の居所異動などの場合、受信人または宿所の者の請求によってその移転先の新居所に再送される。再送1回ごとに新たに電報を差し出したものとして相当する電報料が徴収されたが、通常受信人がこれを支払った。再送請求期間は着信日から3日間。指定略符号は和文はナチ(欧文符号でRF)。 至急電報 普通電報に先立って送達された。官報、局報及び私報があった。料金は、官報は通常電報料金の2倍、私報は通常電報料金の3倍であった。指定略符号は和文はウナ(欧文符号でUR)。 受信報知電報 電報が受信人に送達された日時を着信局から発信人に電報で報知したものである。指定略符号は和文はツニ(欧文符号でPC)。 照合電報 電文の誤謬を未然に防止する為に送受の際に名宛及び本文を反復照合して伝達される。付加料金は通常電報の4分の1であった。指定略符号はムニ。 親展電報 受信人以外の者による開披を憚る電報に対してその指定によって封緘を施されたもの。指定略符号は和文はニカ(欧文符号でCL)。発信人は指定を付加すればよく、付加料金は不要であった。 追尾電報 指定略符号はチラ。受信人が今日はA地、翌日はB地というように転々として移動する場合に、以下の2つの方法があった。発信人が受信人の所在地を予想して頼信紙にそれを記載する。 行先は配達局の調査に一任してわかるかぎり追尾する。 追尾は電信によるのであり、電報送達紙が郵便で送られるのではなかった。料金は追尾箇所1箇所ごとに新規料金を要し、既納料金で不足するときは受信人から不足料金を徴収した。 同文電報 同一の電信官署に着信し、または同一の市町村に宛てた電報で、電報本文が同一である時に、これを一括して「同文電報」として取り扱った。この場合は、原信に指定略符号ムヨを付加し、その他の各通には本文の記載を省略し、なお幾通を一括にするのかその通数を電報頼信紙の余白に付記した。料金は原信(一般電報料と同一料金)のほか1通ごとに15銭であった。同文電報のうち1通もしくは数通に対して至急、照校、時間外の特殊取扱を請求することはできなかったが、その他の、追尾、親展などの特殊取扱を請求することはできた。なお至急、照校、時間外の特殊取扱は原信についてのみ特殊取扱料を納付すればそれでよかった。 留置電報 電報の受取人が旅行、行商などをする者で、居所が一定しない場合に利用された。発行人は受取人が便利な電信局または郵便局を指定して発信する。留置期間は到着日から3日間、その日限内に受信人に交付することが出来ない時は着信電信官署に保管され、その旨、発行電信官署経由で発信人に通知された。指定略符号はムナ。有料文字数に算入されるほかは特別料金は要しなかった。 艀船配達電報 船舶に宛てられた電報で、艀船で配達された。料金は30銭。但し配達実費がこれを超過するもの、また配達上、別使と艀船の両方を要する場合発信人がその一方のみを指定した時も配達し、その不足額を発信人から追納させた。艀船配達料を受信人払とする取扱もあった。 別使配達電報 電報の直配達区域外に宛てた電報で、特使によって配達された。料金は着信局から8km以内は30銭、8kmを超えるときは4kmまでごとに25銭。発信人が納付した別使配達料で不足する時は受取人から徴収した。島嶼に配達する別使電報はその里程に関わらず30銭、配達実費が超過する時は実費額を徴収した。別使配達料を受信人払とする方法もあった。この電報が配達された時は電報受取紙に受信人が捺印または署名をなすことによって授受を明らかにした。予め受信人から自分宛の配達方の指定のない電報についてもその請求をすることが出来た。 返信料前納電報 電報を差し出すとき返信に要する電報料金を前納したものである。着信局所において前納料金額を記載された返信料前納証書を発行して、その電報と共に受信人に送達する。但し着信電報を電話により送達する時は前納証書を3日間、着信局所に留置き、もしも受信人がこれを使用しないときは、受信人に送達する。受信人は返信料前納証書で電報を発信することは差し支えないが、前納証書1通で数通の電報料金に充当し、または数通で1通の電報料金に充当することは出来ない。前納電報料が不足する時はそれに相当する不足額を追納すればよかった。返信料前納証書の使用期間は発行日から30日間。 年賀電報 新年の祝賀文のみを送る。受付期間は12月25日から1月6日までで、頼信紙の郵便切手欄に「年賀電報」と記載し、本文欄に逓信省で定めた新年祝賀文例からひとつを選び、或はその略号を記し、差し出す。同文電報以外の特殊取扱および着信電報の電報による送達は取り扱われない。12月31日までに受け付けられた年賀電報は1月1日の電報取扱時間開始の時刻に受け付けられたものと見なされて名宛人に送達される。送達紙はデザイン、図案が施されている。料金は祝賀文の字数にかかわらず定額。ほかに日満年賀電報、外国和文祝賀電報、新年祝賀特別外国電報などがある。 新年祝賀文例は、略号 - 文例の順番でイ - 謹ミテ新年ヲ賀ス ロ - 謹ミテ新年ノ御祝詞ヲ申上ゲマス ハ - 明ケマシテ御芽出度ウ御座ヒマス ニ - 新玉ノ年ノ始ノ御寿芽出度ク御祝ヒ申上ゲマス ホ - 謹ミテ新年ヲ賀シ御尊家ノ万福ヲ祈ル ヘ - 謹ミテ新年ヲ賀シ平素ノ御無音ヲ謝ス ト - 謹ミテ新年ヲ賀シ倍旧ノ御愛顧ヲ願フ チ - 新年御芽出度ウ御座ヒマス相変ラズ御引立テヲ願ヒマス リ - 謹ミテ年頭ノ御挨拶ヲ申上ゲ益〻御繁栄ヲ祈ル ヌ - 謹ミテ新年ヲ賀ス早々賀詞ヲ賜リ難有存ジマス ル - 洋上ヨリ遙ニ故国ノ新年ヲ賀ス ヲ - 新年ヲ賀シ御安着ヲ待ツ ワ - 謹ミテ新年ヲ賀シ一路平安ヲ祈ル カ - 新年御芽度ウゴザヒマス当方皆無事御安心下サイ。 慶弔電報 好評だった年賀電報を儀礼電報にも拡大したもの。内地だけでなく、外地や艦船・航空機へも発着できた。 略号/番号文例慶祝文例出産イ御安產ヲ祝ス 入学ロ御入學ヲ祝ス ハ御入學御目出度ウ 合格ニ御合格ヲ祝ス 卒業ホ御卒業ヲ祝ス ヘ御卒業御目出度ウ 結婚ト御結婚ヲ祝ス チ華燭ノ盛典ヲ祝シ御多幸ヲ祈ル リ謹ミテ御婚礼ヲ御祝ヒ申シマス 栄転ヌ御榮轉ヲ祝ス 栄進ル御榮進ヲ祝ス 入選ヲ御入選ヲ祝ス 入賞ワ御入賞ヲ祝ス 当選カ御當選ヲ祝ス 優勝ヨ御優勝ヲ祝ス 成功タ御成功ヲ祝ス 安着レ御安着ヲ祝ス 帰朝ソ無事御歸朝ヲ祝ス 寿賀ツ還歷ノ御祝典ヲ賀ス 会合ネ御盛會ヲ祝ス 落成ナ新築落成ヲ祝ス 開業ラ御開業ヲ祝ス ム御開店ヲ祝シ御繁榮ヲ祈ル 入営ウ御入營ヲ祝ス 凱旋ヰ光輝有ル凱旋ヲ祝ス 共通ノ御盛典ヲ祝ス オ御目出度ウ ク謹ミテ御祝ヒ申シマス 出発ヤ晴ノ鹿島立ヲ祝シ一路御平安ヲ祈ル 出征マ御出征ヲ祝シ皇國ノ爲御奮鬪ヲ祈ル 弔慰文例一謹ミテ御逝去ヲ悼ム 二謹ミテ御悔ミ申ス 三謹ミテ哀悼ノ意ヲ表ス 四御逝去ヲ悼ミ御冥福ヲ祈ル 五御永眠謹ミテ御悔ミ申シマス 六謹ミテ護國ノ英靈ニ對シ敬弔ノ意ヲ表ス 九御尊父樣ノ御逝去ヲ悼ミ謹ミテ御悔ミ申シマス 十御母堂樣ノ御逝去ヲ悼ミ謹ミテ御悔ミ申シマス 年賀文例エ謹ミテ新年ヲ賀ス テ謹ミテ新年ノ御祝詞ヲ申シ上ゲマス ア明ケマシテ御目出度ウ御座イマス サ新玉ノ年ノ始ノ御壽芽出度ク御祝ヒ申上ゲマス キ謹ミテ新年ヲ賀シ御尊家ノ萬福ヲ祈ル ユ謹ミテ新年ヲ賀シ平素ノ御無音ヲ謝ス メ謹ミテ新年ヲ賀シ倍舊ノ御愛顧ヲ願フ ミ新年御芽出度ウ御座イマス相變ラズ御引立テヲ願ヒマス シ謹ミテ年頭ノ御挨拶ヲ申上ゲ益御繁榮ヲ祈ル ヱ謹ミテ新年ヲ賀ス早早賀詞ヲ賜ハリ難有存ジマス ヒ洋上ヨリ遙ニ故國ノ新年ヲ賀ス モ新年ヲ賀シ御安着ヲ待ツ セ謹ミテ新年ヲ賀シ一路御平安ヲ祈ル ス新年御芽度ウ御座イマス當方皆無事御安心下サイ ン謹ミテ新年ヲ賀ス皇國ノ爲一層御奮鬪ヲ祈ル
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