入学・復学拒否問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 05:59 UTC 版)
「年齢主義と課程主義」の記事における「入学・復学拒否問題」の解説
また不登校児童生徒が13万人を超えたが、不登校経験者が復学する場合に対する教育の場の保障の観点から、年齢に固執しない学校が求められている。現状では、生徒が1年休学しても、学校側は進級後の学年への復帰を促している。また学齢期の不登校生徒に対しては各方面から学校復帰の働きかけがあるが、学齢を超過すると今までとは打って変わって、学校復帰を望んでも困難となってしまうという、年齢によって正反対の対応をされるという問題がある。こういった強制進級・強制卒業問題のため、生徒によってはかえって学校に復帰しにくくなっている(ただし、逆に原級留置がなされることによって復帰しにくくなる生徒も存在する事も忘れてはいけない)。休学期間中に学力が伸びていない場合は、進級した学年の内容に付いていこうとすると、家庭や学習塾などで猛勉強をしなければならず、かえって不登校以前より疲労することになる。学業不振が原因の不登校の場合は、なおさらそういった問題が大きい。現状では、そういった元不登校者の受け皿は民間の塾やフリースクールしかない。塾やフリースクールはどんなに設備が充実している所でも、プール・校庭・体育館・理科室などはないであろうし、授業料も高いという問題がある。また通常の塾は学校の生徒の空き時間に合わせて開業しているため、午前中は開いていない場合が多い。このため、なかなか学校の代替となる民間施設はない。こういった状況下で、一度学齢を超過すると復学が困難となるという問題があると、小中学校段階で不登校になった生徒に対する教育機会が保障できなくなる。なお、学齢超過者が入学できる中学校として有名なものには夜間中学校があるが、地域限定である上、かなり授業時間が省略されており、その上夕方以降に通わなければならないなど、多くの問題があるために一般の中学校の代替にはなっていない。 文部科学省からの支援もあって、生涯学習のかけ声は高いが、現在は大学や大学院などの高等教育においてのみ適用されている嫌いがあり、高校では高年齢者はあまり入学しておらず、中学校以下はほぼゼロである。不登校による初等教育・前期中等教育未修了者は、学校復帰しようとしても、現状では大多数が前期中等教育を修了しないまま(形式的卒業含む)高校などの後期中等教育機関や大学などの高等教育機関に進学する形となっており、基礎的な学習段階を十分に履修しないまま上級学校に行かざるを得なくなっている。また、高校以下の学校においては、同等学校の既卒者の再入学を認めないという取り扱いがなされる場合もあり、以前の卒業校では満足した教育が受けられなかった「形式的卒業者」への対応も求められている。 また、外国から日本に移住・帰国した小中学生が、日本でも小中学校に通おうとした場合、所属すべき学年よりも高い学年に所属させられてしまう場合がある(望まない飛び級と言われる)。ただし、こういった年齢相当学年の考え方が強い小中学校でも、外国籍の生徒に対しては、その制限がゆるい場合もある。しかし地域による差が強く、年齢が適合せずに拒否される例も多い。2009年春に文部科学省が経済危機に伴う定住外国人子ども緊急支援プランを策定し、都道府県教育委員会に対して「年齢相当学年」よりも低い学年への編入についての勧告を行った。しかし、岐阜県教育委員会は意向に反して、外国籍生徒の中学校編入学年を、学力に関係なく「年齢相当学年」にするよう岐阜県内の市町村教育委員会に勧告を行った。ただしその後、2009年11月に岐阜県教委は方針を転換し、国の方針に従うことにした。 参考:2010 昼間の中学校に編入可能な(年度内の)年齢の上限は? - このデータによると、都道府県によっては「年齢相当学年」での編入を原則としている所もあるが、制限なしとしている所もある。また市町村教育委員会の判断に任せている場合も多い。 こういった現状に対し、日弁連は、18歳未満の学齢超過外国人も編入するように求めている(後述)。 学校の設置者によって年齢主義の度合いが異なるため、甚だしい場合は日本国内同士でも、転居をした際に転出校と転入校で学年が変わってしまう場合、さらには小学校・中学校の垣根を飛び越えてしまう場合もある。小学校から中学校への進学は勿論、学校内での進級も、本来は下学年の履修が条件であるが、この場合においてはそのルールが守られていない。 あーすぷらざ外国人教育相談報告書 この文書には、外国の文化を持つ人々が日本の硬直的な年齢主義の学校社会についての知識を持たないまま現実に直面し、進路に躓いてしまう例が多く取り上げられている。特に南米系やフィリピン系などの落第が日常的である学校文化圏で育った家庭では、「いつか、行きたくなった時に中学校に行けばいい」(18ページ)と考え、日本語を修得するまで待ってから就学しようとしたり、下の子の面倒を見終わってから就学しようとしたりといった考え方をする傾向がある。その結果、入学するべき時期にはすでに「学年相当年齢」や学齢を過ぎていたということが起きやすい。また、年齢主義の風土に対するなじみのなさから、「いままで原級留置にならなかったから、学力は十分である」と思い込み、高校受験で不合格となる場合もある(36ページ)。
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