中部地方整備局の中止事業
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「国土交通省直轄ダム」の記事における「中部地方整備局の中止事業」の解説
中部地方整備局管内における中止したダム事業は旧建設省時代を含め16ダムあるが、その大半は木曽川水系におけるものである。 木曽川水系では木曽特定地域総合開発計画において、木曽川の丸山ダムを始め多数の多目的ダムが計画されたが、木曽三川のほか流域面積では木曽川水系最大の支流である飛騨川流域において河川総合開発が計画されていた。当時飛騨川は中部電力による飛騨川流域一貫開発計画に基づく水力発電事業が積極的に実施されていたが、木曽特定地域総合開発計画により建設省が新たにダム計画を定めていた。飛騨川本流の久田見ダムをはじめ支流に大規模な多目的ダムを建設するほか、中部電力が施工していた朝日ダム(飛騨川)を丸山ダムと同様に多目的ダム化する計画も存在していた。また揖斐川流域(揖斐川、根尾川、牧田川)にも横山ダム以外にダムを建設するほか、長良川支流の板取川にも大規模ダムを建設。さらに木曽川本流中流部の愛知県犬山市に犬山ダムを建設するのが当初の計画だった。 しかし計画は変更されて揖斐川・長良川流域のダム計画は横山ダムを除き中止され、飛騨川のダム計画も久田見、岩屋、岩瀬3ダムに縮小された。代わりに信濃川水系との導水計画が加わって木曽川最上流部に薮原ダムが計画され、信濃川水系奈良井川との間にトンネルを建設して導水する予定であった。だがこれらの計画も変更されほとんどのダム計画が立ち消えとなり、最終的に完成したのは丸山、横山および二子持ダム計画から治水目的を除き愛知用水の水源とした牧尾ダムの3ダムである。なお中止したダム計画のうち幾つかは、その後別なダム事業として事実上の前身となる例があった。その例として薮原ダム地点に味噌川ダム、東杉原ダム地点に徳山ダムが建設され、岩屋ダムは1969年に旧計画を大幅に凌駕する大規模ダム計画として復活した。また根尾ダム地点付近には中部電力により1995年(平成7年)、奥美濃揚水発電所の下部調整池・上大須ダム(根尾東谷川)が建設されている。 一方1990年代の公共事業見直しにより中止した事業としては矢作川水系の2ダムがある。矢作川本流に1971年(昭和46年)より計画された矢作川河口堰は矢作川河口より1.7キロメートル上流に計画され、矢作川河口部の治水と衣浦臨海工業地域への工業用水道供給を目的としていたが、水道事業者である愛知県が水利権を返上して事業から撤退し事業継続の必要性が低下、2000年(平成12年)に事業が中止された。また支流上村川に計画されていた上矢作ダムは東海豪雨による矢作川・上村川流域の被害が甚大であったものの、費用対効果と迅速な治水事業の進捗という観点で矢作ダムの有効活用と河川改修を重点に置くという矢作川水系河川整備基本方針の策定を受け、2009年(平成21年)に事業は見送りとなり鳩山由紀夫内閣の前原誠司国土交通大臣によるダム事業見直しで中止が決定した。天竜川水系では戸草ダム(三峰川)があり、2001年に当時の長野県知事である田中康夫が利水事業からの撤退を表明、2008年(平成20年)には国土交通省が事業中止を表明したものの伊那市など地元の反発により中止を撤回した経緯があるが、2012年(平成24年)7月に行われた事業再検証の結果、多目的ダムとしての戸草ダム事業は中止し、治水ダムとして再度計画を検討する方向性となった。 所在水系河川ダム型式高さ総貯水容量分類水特法備考出典長野 天竜川 三峰川 戸草ダム 重力 140.0 61,000 特定 長野 木曽川 木曽川 薮原ダム 重力 50.0 9,000 味噌川ダムの前身 長野 木曽川 王滝川 二子持ダム 重力 75.0 68,500 牧尾ダムの前身 岐阜 矢作川 上村川 上矢作ダム ロックフィル 150.0 54,000 特定 岐阜 木曽川 飛騨川 朝日ダム再開発 重力 92.0 34,400 岐阜 木曽川 飛騨川 久田見ダム 重力 60.0 76,000 岐阜 木曽川 小坂川 落合ダム 重力 70.0 67,250 岐阜 木曽川 馬瀬川 旧岩屋ダム 重力 70.0 24,000 1969年計画復活 岐阜 木曽川 和良川 岩瀬ダム 重力 50.0 17,500 岐阜 木曽川 板取川 洞戸ダム 重力 60.0 155,500 岐阜 木曽川 揖斐川 東杉原ダム 重力 72.0 184,000 徳山ダムの前身 岐阜 木曽川 根尾川 黒津ダム 重力 84.0 130,000 岐阜 木曽川 根尾東谷川 根尾ダム 重力 45.0 16,000 岐阜 木曽川 牧田川 一之瀬ダム 重力 32.0 6,710 愛知 矢作川 矢作川 矢作川河口堰 堰 6.2 20,000 愛知 木曽川 木曽川 犬山ダム 重力 35.0 35,150
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