ヴィレブロルト・スネルと現代の三角網
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「三角測量」の記事における「ヴィレブロルト・スネルと現代の三角網」の解説
現代のシステマティックな三角網の使用は、オランダの数学者ヴィレブロルト・スネル(スネリウス)が1615年にアルクマールからベルヘン・オプ・ゾームまでおよそ110 kmを33の三角形を含む四角形の連鎖を利用して測定したことに始まる。この二つの町はほぼ同一子午線上にあって、緯度にして1度離れており、この測定から地球の円周長を求めることができた。この業績は1617年の本Eratosthenes Batavus(オランダのエラトステネス)に示されている。スネルは、平面における公式をどのように地球の丸みに対応させて修正するかの方法を計算した。彼はまた、三角形の内側にある点の位置を、その地点において三角形の辺がなす角度から計算する後方交会法を示した。これは、コンパスを使わなければならない頂点の方位を求める方法よりも正確に測定することができる。これにより、まず1次の大規模三角網を最初に測量し、その後2次的な地点を1次網の中で決定していくという考えが生まれた。ただし、スネルの使用した測量器は極めて単純なもので腕木の両端に糸を張って見通しをつけただけのものであったため結果はあまり正確ではなかった。 スネルの測定した子午線は正確ではなかったが、彼の創案した測量の方法が優れた方法であることがわかると各国で三角測量が行われるようになった。スネルの方法は、1669年から1670年にかけてパリ子午線上で緯度1度の長さをパリから北へアミアン近郊のスルドン(フランス語版)の時計塔まで13の三角形の連鎖により測量したジャン・ピカールに引き継がれた。器具の改良と精度の向上により、ピカールは地球の半径をかなり正確に測定した最初の人物となった。18世紀を通じて有名なカッシーニ家の人間によりこの仕事はさらに進められた。1683年から1718年までの間、ジョヴァンニ・カッシーニとその息子ジャック・カッシーニはパリ子午線をダンケルクからペルピニャンまで測量した。1733年から1740年まで、ジャックとその息子セザール・カッシーニ(英語版)は子午線弧の再測量を含む全国土の最初の三角測量を行い、1745年に正確な原理に基づく初めてのフランスの地図を出版した。 この時点までに三角測量の技術は、地域的な地図作りに対しては十分確立された。しかし他の国が全国土に渡る地図を作るための詳細な三角網の測量を始めるのは18世紀も末になってからであった。 イギリス陸地測量部(英語版)(オードナンス・サーベイ)は1783年にグレートブリテン島の基本となる三角測量を開始したが、完了したのは1853年のことになった。1801年に開始されたインド大三角測量では、エベレストやその他のヒマラヤ山脈の山々を三角測量し地図を作った。ナポレオン帝政下のフランスでは、ジャン・トランショ(ドイツ語版)によって1801年にフランスの三角網がドイツのラインラントまで拡大され、1815年以降になってプロイセン王国の将軍カール・フォン・ミュフリンク(ドイツ語版)によって完成された。 この時期、有名な数学者カール・フリードリヒ・ガウスによって三角測量には優れた改良が加えられ他の方法を凌駕することとなった。1821年から1825年にかけてガウスはハノーファー王国の三角測量を委託された。当時、三角測量には教会の塔など高い建物が利用され、ガウスも教会の塔を目標に考えていた。しかし、1820年、ガウスが教会の塔を目印に三角測量を行おうとしたところ、空が霞んでいたため塔の姿を確認できなかったが、塔の位置は塔の色ガラスの反射で確認することができた。そこで日光の反射によって位置を示すヘリオトロープ(回照器)が三角測量に用いられるようになった。ガウスはヘリオトロープや櫓による測量方法の改良のほか、観測結果の整理法として未知数より実測値が多い時に大規模な連立方程式問題のもっとも一致する解を決定する最小二乗法を考案した。 今日、測量のための大規模な三角網は1980年代以来確立した衛星測位システムにおおむね置き換えられている。しかし初期の測量の基準点はなお、1936年から1962年にかけてのグレートブリテン島再三角測量のために造られたコンクリート製三角点や、1816年から1855年にかけてのシュトルーヴェの測地弧の三角測量のために造られた、現在はユネスコの世界遺産に登録されている三角点のように、価値のある歴史遺産として残されている。 天文学において地球から星までの距離計測に用いられているが、距離が離れると年周視差が小さくなることから1万光年程度が限界となるため、他の計測法を併用する。 宇宙探査機は通信用アンテナを地球に向け続けるために2つの恒星を使った三角測量で位置を計算しているが、地球に近く非常に明るい恒星として太陽とカノープスが使われている。
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