ティリヤ・テペ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 05:04 UTC 版)
アフガニスタン北部、シバルガンの北5キロメートルに位置するティリヤ・テペは、紀元後1世紀の古墓群である。「ティリヤ・テペ」は「黄金の丘」の意で、ここには大月氏国ないしクシャーナ朝初期に属する古墓6基が残る。1978年から旧ソ連によって行われた発掘により、これらの古墓からは約2万点の黄金製品が出土した。墓はいずれも土坑墓で遺体は木棺に納められていた。6基のうち第4号墓の被葬者は男子、他5基は女子である。墓の構造は単純だが、副葬品は黄金製品を中心とする豪華なもので、黄金製あるいは黄金にトルコ石を象嵌した冠、ネックレス、装飾品、留金具、短剣の柄と鞘などがある。副葬品のモティーフにはアフロディーテのような明らかなヘレニズム的要素のほか、パルティア、スキタイ、インドなどのアジア的要素も見られる。副葬品にはローマのティベリウス金貨や中国・前漢の銅鏡などもあった。 有翼女神像(画像参照) ティリヤ・テペ出土、紀元前1世紀後半から紀元後1世紀前半、金製、高さ5センチメートル。ティリヤ・テペの6号墓の被葬者である女性の遺体の胸元にあった下げ飾りである。左肘を背後の柱にもたせかけ、右手を腰に当てて立つこの女神像は、豊穣と美の神アフロディーテと思われるが、翼をもつ表現はアジア的である。インド風の腕輪や眉間のウルナー(白毫相)なども非ヘレニズム的要素で、この小像のなかにも東西の造形要素の融合がみられる。 こめかみ飾り(画像参照) ティリヤ・テペ出土、紀元前1世紀後半から紀元後1世紀前半、金、トルコ石、ラピスラズリ、ザクロ石。ティリヤ・テペの2号墓から出土したもので、用途は、女性が冠から左右のこめかみに垂らす飾りである。中央の人物が左右に怪獣を従える意匠は、紀元前3000年頃から西アジアに広く見られるものである。中央の人物が着用している、筒袖で丈の短い上着やベルトは、スキタイなど騎馬遊牧民のそれを思わせるが、下半身にズボンではなくスカート状のものを穿くのは非スキタイ的要素である。人物の両側の動物は、頭部は馬に似ているが、角と翼をもつ想像上の産物である。動物が体を180度ひねるのはサカ美術に見られる特色である。以上のように、この作品には西アジア的要素と北ユーラシア草原の要素が混在している。 ティリヤ・テペ出土の黄金の遺物(アフガニスタン国立博物館蔵) 短剣の鞘 4号墓 牡羊像 4号墓 法輪を表したメダイヨン 4号墓 アフロディテとエロス 2号墓 戦士像の留金具 3号墓 メダイヨン付き腰帯 4号墓
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