メダイヨン【(フランス)médaillon】
メダイヨン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/17 18:29 UTC 版)
「システィーナ礼拝堂天井画」の記事における「メダイヨン」の解説
天井画のうち、5つの小画面の両脇に接して、10面の円形楯状のメダイヨンがあり、イニューディ(青年裸体像)がこれを支えている。これらのメダイヨンは赤銅製に見えるように描かれ、図柄の細部は金箔を使用して背景から浮かび上がるように表現されている。各メダイヨンはそれぞれ旧約聖書あるいは『マカバイ記』由来の図柄で装飾されている。描かれた主題は、聖書のエピソードの中でも残酷な、あるいは屈辱的な場面がもっぱら選ばれており、例外は、エリヤが火の戦車によって天に引き上げられる、『列王記』の場面のみである。いくつかの画面は殺人などの暴力行為に及ぶ人物たちで満たされており、ミケランジェロの『カッシーナの戦い』のための下絵に類似している。 ミケランジェロがこれらのメダイヨンに用いた技法は、フレスコ画では通常用いられないものである。彼はページェント用の楯の装飾に用いられるのと同様の技法を用いており、これは色付きの紙にメタルポイント(尖筆)と白チョークでドローイングする技法にも似ている。フレスコにこの技法を応用したのはミケランジェロのみではないが、これほどの規模で用いたのは彼だけであろう。地の色(ここでは黄土色に黒の筋が入る)が背景色となり、影と光との間の中間色ともなっている。陰になる部分の輪郭は、絵筆で「描く」というよりはドローイングされ、線的なタッチで描かれた影が事物の形態を浮き上がらせる。色付きの紙にドローイングする場合は、ハイライトや明色の部分は白チョークを用いるか、白の細い線を重ねて描かれる。これらのメダイヨンでは、その白線が金箔に完全に置き換えられており、暗部を黒線で描くのと同様のしかたで、明部は金箔を用いて「描いた」かのように表現されている。 こうした金箔の使用は、天井のフレスコ画と側壁のフレスコ画との間を結び付ける役割をある程度果たしている。側壁の壁画では、金箔が多くの細部においてふんだんに使われている。いくつかの画面、特にペルジーノの作品では、金箔が単に衣服の細部を飾るだけではなく、金色部分の密度によって衣服のひだの微妙な諧調を際立たせるように、巧妙に使われている。ミケランジェロはこうした技法を採用し、さらに一段階進んだものにした。また、側壁の「モーゼ伝」中のボッティチェッリの作品『コラ、ダタン、アビラムの懲罰』に描かれるローマの凱旋門のメダイヨンも参考にされたと思われる。 メダイヨンの図柄は以下のとおり。 エリヤの昇天(預言者エレミヤの上) イサクの犠牲(リビアの巫女の上) 父ダビデに反逆したアブサロムの死(木の枝に髪が引っかかり宙吊りになったアブサロムを描く)(預言者ダニエルの上) アハブ一族の滅亡(または「ニカルノ軍の全滅とユダ・マカバイの勝利」)(預言者エゼキエルの上) ダビデ王へのナタンの説諭(または「エルサレムの大祭司に跪くアレクサンドロス」)(クーマの巫女の上) 偶像破壊(エリュトライの巫女上) ウリヤの死(または「ヘリオドロスの懲罰」)(預言者イザヤの上) 戦車から逆さに放り出されるヨラム(または「アンティオコス・エピファネスの末路」)(預言者ヨエルの上) ヨアブによるアブネル暗殺(または「大祭司オニアと暗殺者アンドロニコス」)(デルフォイの巫女の上) 10面のうちの1面の図柄は跡形もなく消滅している。(ペルシャの巫女の上) (メダイヨンの主題については、若山映子『システィーナ礼拝堂天井画』、東北大学出版会、2005を参照した。)
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「メダイヨン」の例文・使い方・用例・文例
- 子牛の肉のメダイヨン
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