スペイン王国成立前
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/10 04:51 UTC 版)
紀元前、古代ギリシャ人によってオリーブが、フェニキア人によってワインの原料となるブドウがイベリア半島に持ち込まれる。また、古代ギリシャ時代のスペインでは、肉、魚を塩漬けにして調理・保存する技術が発達していた。 ローマ帝国の時代に、スペイン料理の基盤が形成される。ローマ人によって、スペイン料理に欠かせないオリーブオイルの製法とニンニク、パンの原料となる小麦、ブタがイベリア半島にもたらされた。具の形が崩れるほど煮込んだ料理、加熱前に時間をかけて食材に下味をつけるスペイン料理の調理法には、ローマ人の影響が見られる。ローマ時代の記録には、ハモン・セラーノに連なる伝統的な肉の塩漬けの記述が現れている。 1世紀の地理学者ストラボンはトゥルデタニア(後世のアンダルシア地方)について、「ワイン、穀物、オリーブオイルの輸出地であり、多くの家畜が飼われている」と記し、これに対して内陸部の食生活について「ドングリとそれを加工したパンを食べ、ワインではなくビールを飲み、オリーブオイルの代わりにバターを使う」と記録している。 4世紀のゲルマン民族の大移動によって西ゴート族がイベリア半島に移り、彼らはビールの原料となるホップを持ち込んだ。 8世紀にイベリア半島に到達したイスラム教徒の手を経て、スペインに米がもたらされた。イスラム教徒は米のほかに灌漑農業、ナスやタマネギなどの蔬菜を伝え、パン食中心のキリスト教徒の食生活は大きく変化した。新大陸由来のものを除き、スペイン南部で使われる食材のほとんどはイスラム支配時代に起源を持つ。アラブ由来の菓子としては砂糖とアーモンドを使ったマサパン (Mazapán) があり、15世紀初頭のアラゴン王国では砂糖を使った菓子が名物として知られていた。 アッバース朝のハールーン・アッ=ラシードに仕えていた宮廷音楽家ジルヤーブ(英語版)(ズィリアーブ)がコルドバの宮廷に身を寄せた時、バグダードの料理書と大量のシナモンのほかに、食卓の調度品などのアラブ料理の文化がイベリア半島に伝わった。最初にスープ、次に肉類、最後にデザートを出す、スペインの庶民の間で一般的な三部構成のコースは、ジルヤーブの与えた影響が強いと考えられている。食材、料理、調度品以外に、アラビア語から食に関する言葉も輸入された。 ユダヤ教徒の食文化もスペイン料理に影響を与え、ユダヤ料理のアダフィナ(スペイン語版) (Adafina) は、オリャ・ポドリーダ (Olla podrida) などの煮込み料理の基礎となった。 カタルーニャ出身の料理人は中世ヨーロッパで高い評価を受け、1324年にイギリス宮廷に仕えていたカタルーニャの料理人が『サント・ソヴィの書』という料理書を著した。
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