スピードガラージ
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スピードガラージ | |
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様式的起源 | |
文化的起源 | 1990年代前期 - 中期、![]() |
派生ジャンル |
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関連項目 | |
UKハードハウス |
スピードガラージ (speed garage)[時にプラス8(プラスエイト、plus-8)の名でも知られる[1]]は、UKガラージの始まりと言われる音楽の様式。1997年前後に流行した。[2]
特徴
スピードガラージを特徴づける要素の1つは、テンポを若干速めたNYガラージ (NY garage) の4つ打ちのビートとブレイクビーツ的な趣向を取り合わせたリズムである[3]。スネアドラムは4分の4拍子のドラムパターン上で2拍目と4拍目のバスドラムと重なる位置に加え別の位置にも配置される[4]。もう1つはジャングル[5]やレゲエ[6]の影響を受けた重量感のあるベースラインである。発音後、ピッチが上下いずれかに滑らかに変化する、またはフィルターのカットオフ周波数が高方に移動し倍音成分が増加して音が明るめになる、もしくはこれらの特徴を併せもつ「スウィーピング・ベース」(sweeping bass) と呼ばれるベース音は、本ジャンルで典型的に使用される音色である[7]。また多くの場合、曲中にブレイクダウンが出現する[8]。タイムストレッチ処理を施したボーカルも時に特色となる[9]。加えてジャングルの強い影響から、銃声やサイレン音などジャングルやダブで聴かれる効果音も多く使用される[10][11]。
スピードガラージの先駆者としては音楽プロデューサー・DJ・リミキサーのアーマンド・ヴァン・ヘルデン (Armand Van Helden) が広く認められる。スニーカー・ピンプス (Sneaker Pimps) の楽曲「スピン・スピン・シュガー」(Spin Spin Sugar) のヘルデンによる1996年の "Dark Garage" リミックス[2ステップ (2-step) のうちダブステップ (dubstep) の前身となるダークな作風を備えるものに対する呼称の1つとしてのダーク・ガラージ (dark garage) との混同に注意]は本ジャンルがもつスタイルの主流化を促進した[12]。
来歴
主なアーティスト・楽曲/リミックス
- アーマンド・ヴァン・ヘルデン (Armand van Helden)
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- "Spin Spin Sugar (Armand's Dark Garage Mix)"
- "Digital (Armand Van Helden's Speed Garage Mix)"
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- トッド・エドワーズ (Todd Edwards)
- 187ロックダウン (187 Lockdown)
- シリアス・デンジャー (Serious Danger)
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- "Deeper"
- "God Is a DJ (Serious Danger Remix)"
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- ダブル99 (Double 99)
- ループ・ダ・ループ (Loop Da Loop)
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- "Something Goin' On (Loop Da Loop Uptown / Downtown Mix)"
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脚注
- ^ DJ magazine, 1996–97, "Raggage": "...earning the scene the slightly mocked nick-names of 'plus-8' or 'speed garage'."
- ^ “【コラム】リバイバルを果たしたUKガラージ/2ステップの現在と歴史”. FNMNL (フェノメナル) (2020年4月28日). 2024年2月5日閲覧。
- ^ History of Speed garage: "Speed garage can be broadly defined as a mixture of slightly sped up garage beats..."
- ^ 2Step: "In the original 1997 speed garage, the snares are fussy and clattering over the stomping 4-to-the-floor kickdrum."
- ^ History of Speed garage: "Speed garage can be broadly defined as a mixture of slightly sped up garage beats with a heavy almost junglistic bassline"
- ^ (2004) "Popular Music Genres: An Introduction", ISBN 0-7486-1745-0, 978-0-7486-1745-6, p.216: "Speed garage basslines were drawn from Jamaican reggae..."
- ^ (2004) "The Dance Music Manual", ISBN 0-240-51915-9, 978-0-240-51915-9, p.157: "The sweeping bass is typical of UK garage and speed garage tracks and consists of a tight yet deep bass that sweeps in pitch and/or frequencies"
- ^ articles/speedgarage.html History of Speed garage: "Speed garage can be broadly defined as a mixture of slightly sped up garage beats [...], and usually with a break in the middle where the beat is stripped down and then builds up for a long period of time."
- ^ History of Speed garage: "Speed garage can be broadly defined as a mixture of slightly sped up garage beats [...], sometimes with timestretched vocals"
- ^ (2004) "Popular Music Genres: An Introduction", ISBN 0-7486-1745-0, 978-0-7486-1745-6, p.216: "Jungle and ragga-style sound effects, such as the rash of gun shot volleys heard on popular speed garage tracks,..."
- ^ (2004) "Popular Music Genres: An Introduction", ISBN 0-7486-1745-0, 978-0-7486-1745-6, p.216: "Overall, two-step [..], less relied on the dub sound effects [...] of speed garage"
- ^ “The 15 Greatest Remixes of All Time”. Magnetic Magazine (2016年2月19日). 2017年9月10日閲覧。
外部リンク
スピードガラージ
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スピードガラージにはすでに、サブベースの帯域で演奏されるベースライン、ラガ風のボーカル、バックスピン、ドラムサウンドの逆再生など、今日のUKガラージサウンドがもつ要素の多くが組み込まれた。いわゆる2ステップ (2-step) サウンドが浮上するまで時とともに加わったのが、R&Bスタイルのボーカル、よりシャッフルを効かせたビート、違ったドラムパターンなど、より一層ファンキーな要素であった。スピードガラージから2ステップへの最も根本的な変化は、各小節の2番目・4番目のキックドラムの消失であった。単純に4つ打ちからこれらを間引いたパターンをもつトラックの場合、キックドラムの演奏周期が2倍に引き伸ばされた状態であり、4つ打ちのトラックより遅いものとして知覚されうるが、シンコペーションを使用したベースラインの導入や、パーカッション以外のサウンドをパーカッションのように使用するアプローチがリスナーの興味を保つ。 スピードガラージのトラックは、テンポを上げたハウス・スタイルのビート、そして当時ドラムンベース・プロデューサーたちに人気のあった、スネアドラムの細かい連打、逆再生風のニュアンスや湾曲的なピッチ変化を付けた[訳語疑問点]ベースラインといった要素が特徴であった。 スピードガラージのサウンドを磨いたとされる人物の中でも、トッド・エドワーズ (Todd Edwards) はUKガラージのサウンドに大きな影響を与えた存在としてよく引き合いに出される。ニュージャージー出身のプロデューサーであるエドワーズは、新たな方法でボーカルを扱った。完全なヴァースとコーラスに代わって、エドワーズはサンプリングの技術を用いボーカルフレーズを選び出して、楽器のように演奏した。個々の音節はしばしば逆再生されたりピッチを変更されたりすることもあった。このようなボーカルの取り扱い方は今もなおUKガラージの様式上の大きな特徴である。スニーカー・ピンプス (Sneaker Pimps)「スピン・スピン・シュガー」(Spin Spin Sugar) のアーマンド・ヴァン・ヘルデン (Armand Van Helden) による1997年のスピードガラージ・リミックスは、スピードガラージというジャンルをさらに普及させた(スピードガラージはこの時メインストリームに食い込んだものとしばしばみなされる)。スピードガラージ・デュオのダブル99 (Double 99)、187ロックダウン (187 Lockdown)、インダストリー・スタンダード (Industry Standard) は、1997年の大きなクラブヒットを生んだ。前2組は1997年・1998年にいずれも全英トップ20ヒットを記録しており、ダブル99は「リップグルーヴ」(RipGroove) が第14位(再リリース時)、187ロックダウンの「ガンマン」(Gunman) と「カンフー」(Kung-Fu) はそれぞれ第16位、第9位となっている。インダストリー・スタンダードは「Vol. 1(ホワット・ユー・ウォント・ホワット・ユー・ニード)」[Vol. 1 (What You Want What You Need)] が1998年1月に最高第34位となりトップ40ヒットを手にしている。また、インダストリー・スタンダード (Industry Standard)、ラムゼイ&フェン (Ramsey & Fen)、R・I・P・プロダクションズ (Double 99)、シリアス・デンジャー (Serious Danger) によるリミックスを収録して1997年にXLレコーディングス (XL Recordings) からリリースされたソモア フィーチャリング デイモン・トゥルーイット (Somore featuring Damon Trueitt) の「アイ・リフューズ(ホワット・ユー・ウォント)」[ I Refuse (What You Want)] も同じ1998年1月に第21位となっている。イギリスでトッド・エドワーズに相当する人物が、オーボエとピアノでクラシック音楽の教育を受けたMJコール (MJ Cole) であり、「シンシア」(Sincere) や「クレイジー・ラヴ」(Crazy Love) など1990年代後期 - 2000年代前期にチャートヒット/アンダーグラウンドヒットを連発している。MJコールはまた、BBCの「ヤング・ミュージシャン・オブ・ザ・イヤー」(Young Musician of the Year) を受賞している。
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