スト権ストの計画策定
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これを受けて公労協と傘下組合は闘争の具体的戦術を策定した。 国会の山場が11月下旬から12月上旬とみられることや専門委員懇談会の答申がやはり11月下旬頃と想定された。当時公労協は国労、全逓、全電通のトップが代表幹事となって意思決定を行っていた。全電通の書記長として代表幹事になっていた山岸章によれば10月22日、公労協参加組合の委員長・書記長会議にて、国労東京地本出身で日本労働組合総評議会(総評)事務局長だった富塚三夫が11月26日にストを開始する案を主張し始めたと言う。山岸はこの案に反対した。「政府に判断する余裕も与えずストに入るのは世論対策上プラスではない」というのが理由であった。しかし、他組合の首脳達は富塚案に賛成し、この方針が決定した。結局11月5日に「11月26日から10日間をめどにストに突入する」という方針が正式決定された。しかし富塚は11月10日に「ストは12月からに。情勢が変わった」と意見を変えた。このため山岸は「引っくり返すとはどういうことか」と憤り、「この際「もうやめてくれ」という声が下部から出てくるまで徹底的にやらせたほうが、力の論理では問題は解決できないことがよくわかる」と考え、当初案の26日決行を妥協せず、変更案は流れた。 富塚によると、当初予定していたスト戦術は「最初の4日間は全面スト、次の3日間は戦術ダウン(新幹線・国電は運行)して交渉をしやすくし、そこで折り合わなければ再び3日間全面ストをする」というものであった。また、全逓や全電通など他の組合は日ごとに別の場所でストをおこなう「波状スト」を計画した。公営交通の組合で作る都市交通労組も支援のため時限ストを構えることになった。その一方、富塚は自民党福田派に属する労働族の有力議員(倉石忠雄・山崎五郎ら)と接触し、「条件付き付与」に理解を示していた彼らを取り込んで、政府・自民党に影響を与えようと動いていた。特に倉石は自民党の公労法問題調査会の座長を務め、富塚はスト権問題での党内のキーマンと見ていた。スト突入の数日前、倉石は富塚に対し「自民党の各派閥や実力者を納得させるにはある程度のストに入らないと解決しないだろうが、三日以内のごく軽微なもので早い時期に解決させなければだめだ」と話したという。 政府側は(スト前日の)11月25日までにスト権問題の結論を出すことは困難と表明。前内閣総理大臣(当時)の田中角栄率いる田中派(七日会)は「違法ストに対して強硬に対処せよ」と公労協に対して強い反発を示し、自民党幹事長の中曽根康弘も強硬な姿勢を見せていた。11月22日には中曽根と三木が会談し、「違法ストには妥協せず、ストが決行されれば厳重に処置する」という方針を確認した。三木もすでにスト権容認を口にできない状況になっていた。 これらを受け、11月22日に公労協はストライキの突入を指令し11月26日、公労協は一斉にストに突入した。 なお、ストに突入した26日、公共企業体等関係閣僚協議会はようやく答申を提出し、国鉄に関し下記の様に述べた。 現状では経営・管理能力の限界を超えているのではないかという判断もあり、その分割による経営単位の縮小化やその旅客輸送のための幹線網の運行および中長距離大量貨物輸送以外の部門についてまで、これを国として所有する形での鉄道が必要であるか否か、また、住民の需要を充足する交通手段として国の所有する形での鉄道が必要であるかどうか等の問題も、十分検討するべきである。 — 公共企業体等関係閣僚協議会 専門委員懇談会答申(1975年11月26日) この内容は、川島の意向に沿って事実上スト権を容認せず、経営形態についての議論を優先し、その中で併せてスト権についても検討するべきというものであった。組合側は反発し、主な全国紙も社説でこの答申を批判した。泉専売公社総裁も「公社を無能力扱いするもの」と批判した。藤井国鉄総裁は「今の段階で内容をとやかく言う段階ではない」と述べ、持論の条件付付与論を繰り返した。一方、政府はこれを受けてスト権に関する見解の策定に入った。 なお、スト直近の報道などによれば各組合の組織比率は下記のようになっており、国労、動労を合計すると全体に占める割合が大きいことが理解できる。 「国鉄の労働組合」労働組合結成年月組合員数総評系 国鉄労働組合 1947.6 239,000 動力車労働組合 1951.5 47,000 同盟系 鉄道労働組合 1969.10 73,000 新産別系 全国鉄施設労働組合 1971.4 6,000 共産党系 全国鉄動力車労働組合連合会 1974.3 3,000 その他 国鉄職員組合 1963.5 70 国鉄労働協議会 1969.11 6 非組合員 推定非組合員 - 50,000 組合未加盟 - 10,000
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