ゴールデンエイジのヒーローたち
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「アメリカン・コミックスにおけるクリエイターの権利」の記事における「ゴールデンエイジのヒーローたち」の解説
1934年、ジェリー・シーゲルとジョー・シュスター(英語版)は最初のスーパーヒーローとされるスーパーマンのコミックを制作し、シンジケート(配信会社)を通じて新聞社に売ろうとしたが、結果ははかばかしくなかった。唯一現れた買い手はコミックブック出版社ナショナル(現DCコミックス)だった。13ページの作品 “Superman, Champion of the Oppressed” は1938年に『アクション・コミックス』第1号に掲載された。その際、作者らがページあたり10ドルの原稿料ですべての権利を譲り渡したことは後年までの語り草になっている。 関係者らの予想に反して、スーパーマンはコミック界を牽引する大ヒット作となり、ヒーローコミックの一大ブーム(ゴールデンエイジ(英語版))を生み出した。DC社の他誌でもスーパーマンが使われ始めたのに加え、シーゲルとシュスターによるコミック・ストリップ版も全米160紙に配信された。コミックブック『スーパーマン』から得られる利益は1941年時点で年間95万ドル(2019年現在の価値は約1700万ドル)に上り、発行者ドーネンフェルドは同誌関連だけで年間50万ドルの報酬を得たと伝えられている。しかし、DCに雇用されて作品を描いていたシーゲルとシュスターは推定15万ドルの収入しか得られず、これに不満を抱いた。DCが1944年に作者らの許可を得ることなくスーパーボーイという派生キャラクターを登場させたことも争いの種となった。シーゲルとシュスターは著作権の奪還を求めて1947年に訴訟を起こした。しかし裁定は二人にとって不利なものであり、10万ドルの和解金と引き換えにすべての権利を手放すことを余儀なくされた。 1909年法は著作権の保護期間を28年間と定めるとともに、更新手続きによりさらに28年間の延長を認めていた。これにはクリエイターの権利を保護する意図があった。実作者が権利を手放した後に大きな価値を生むようになった作品に関して、出版社と再交渉する機会を与えていたのである。1973年、シーゲルとシュスターはDCが行ったスーパーマンの著作権更新を無効化しようと試みた。この時も二人の訴えは法的に認められず、1947年の権利放棄が改めて確認された。しかし、二人の窮状は一般マスコミやコミック界の同情を集めた。コミッククリエイターの権利向上を目指して活動していた人気作画家ニール・アダムスや、新聞漫画家の協会で会長を務めたこともあるジェリー・ロビンソン(英語版)(ジョーカーの作者)のような支援者も現れ、DC社に強硬に圧力をかけた。映画『スーパーマン』の公開を控えていたワーナー(DCの親会社)は、『ニューヨーク・タイムズ』紙の追及に応えて「道義的責任」を認めた。結果的に、シーゲルとシュスターは1975年に作者としてのクレジットと生涯にわたる年金2万ドルを獲得した。 バットマンの共作者の一人ボブ・ケインは抜け目のない人物だった。シーゲルとシュスターは最初の著作権訴訟の直前、同様の境遇にあったケインに共闘を持ちかけていた。しかしケインは交渉を有利に運ぶため抜け駆けしてDC社と接触し、公式の作者としての地位を認めさせた。もう一人の共作者ビル・フィンガー(英語版)の存在は葬り去られた。コミック作家がアシスタントを使うことは当時も珍しくなかったが、ケインはゴーストライターに全面的に制作を任せることがあった。ケインはまた二次利用に関する権利も一部獲得し、1966年のドラマ化(『怪鳥人間バットマン』)の際には相応のロイヤルティを得た。 ジャック・カービーとともにキャプテン・アメリカを創作したジョー・サイモンはビジネス交渉に長けていた。サイモンはマーベル・コミックスの前身タイムリー(英語版)の発行人マーティン・グッドマン(英語版)に同作を売り込み、コミックブックの収益から15%(25%とも)の印税を支払うという異例の好条件を取り付けた。1941年に発刊された『キャプテン・アメリカ』誌は100万部を超す大ヒットとなった。しかしグッドマンが収益を低く見せかけて印税を値切ったため、サイモンらは同誌を残して他社に移った。1960年代にカービーがマーベル・コミックスに復帰してトップ作画家となるころには、印税の支払いは忘れられていた。1966年、サイモンはマーベル社がキャプテン・アメリカの著作権更新を行うのを阻止しようと試みたが、示談により権利を放棄する結果となった。
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