カヤクグリとは? わかりやすく解説

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かや‐くぐり【×潜】

読み方:かやくぐり

イワヒバリ科全長14センチくらい。上面赤みがかった暗褐色に縦斑があり、下面暗灰色日本特産高山ハイマツ帯にすみ、低木の間を飛び回る。冬は平地にも下りる。《 夏》「—聴き近き尾根わたる/汀」


茅潜

読み方:カヤクグリ(kayakuguri)

燕雀目の小鳥


カヤクグリ

カヤクグリ
カヤクグリ

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茅潜

読み方:カヤクグリ(kayakuguri)

イワヒバリ科

学名 Prunella rubida


茅潜

読み方:カヤクグリ(kayakuguri)

イワヒバリ科高山

季節

分類 動物


カヤクグリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/16 22:26 UTC 版)

カヤクグリ
カヤクグリ Prunella rubida
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
亜目 : スズメ亜目 Oscines
: イワヒバリ科 Prunellidae
: カヤクグリ属 Prunella
: カヤクグリ P. rubida
学名
Prunella rubida
(Temminck & Schlegel, 1848)[2]
和名
カヤクグリ
英名
Japanese accentor[3]

カヤクグリ(茅潜、萱潜[4]学名Prunella rubida (Temminck & Schlegel, 1848)[2])は、イワヒバリ科カヤクグリ属[5]分類される鳥類の1

分布

日本北海道本州中部以北、四国九州)、ロシア南千島)に分布する[6][注釈 1][2][5][7]

漂鳥で夏季に四国の剣山や本州中部以北、南千島などで繁殖し、冬季になると低地[8]や本州、四国、九州の暖地へ南下して越冬する[7][4]。九州では冬鳥[5]

形態

全長が約14 cm[5][7][8]翼開長が約21 cm[7]スズメほどの大きさ[9]体重が15-23 g[10]。目立つ模様がなく色彩は地味[7][11]。雌雄同色で、頭部の羽衣は暗褐色[5][8]。体上面の羽衣は赤褐色で、暗褐色の縦縞が入る[5]は灰褐色で[8]、体側面から尾羽基部の下面(下尾筒)にかけての褐色の縦縞が入る[5]の辺りに薄い黄褐色の斑点模様がある[9]風切羽は暗褐色で外縁は茶色っぽい[6]。大雨覆と中雨覆先端に黄色の斑がある[5]尾羽は暗褐色[6]。初列風切羽は9枚(長さ52-63 mm、幅8 mm)、次列風切羽は6枚(長さ48-55 mm、幅7-10.5 mm)、三列風切羽は3枚、尾羽は12枚(長さ62-65 mm、幅7-8 mm)[12]

虹彩は茶褐色[5]の周囲に小さな白斑がある[5]は細く黒色[5][8]は橙褐色[8]

生態

繁殖期に昆虫を捕獲したカヤクグリ、乗鞍岳高山帯にて

亜高山帯から高山帯にかけてのウラジロナナカマドハイマツなどの林や岩場に生息する[8]。林の中にいることが多く、イワヒバリほどは岩場にで出てこない[4]。繁殖期にはハイマツの枝上[13]などの明るい場所に出てきてさえずったり、採食をする[6]。冬季には平地から低山地の林、灌木林、山間部の沿いの藪、集落の庭の藪、林縁などの標高の低い場所へ移動し[5][8]、単独もしくは数羽からなる小規模な群れを形成しひっそりと生活する[7][14]。繁殖期には「チリチリチリ」や「チーチーリリリ」[7]とさえずり、地鳴きは「ツリリリ」[6][8]で、ヤマヒバリの鳴き声に似ている[5]

食性は雑食で、灌木を縫うように移動しながら小型の昆虫幼虫類、クモ種子などを食べる[6][7][9]。夏季は昆虫、冬季は種子を主に食べる。樹上でも地上[6]でも採食を行う。

繁殖形態は卵生。繁殖期になるとオスとメスそれぞれ数羽からなる小規模な群れを形成し、オスとメスともに複数とかかわり繁殖する[14]一妻二夫で繁殖するとも考えられている[15]。形成した群れではオス間に順位があると見られている[15]。メスがオオシラビソ[10]キャラボク[16]ダケカンバ、ハイマツ[4]などの高さ1 mほどの樹上に枯草や苔などを組み合わせたお椀状のを作る[14][17]。メスが猫背になって尾羽を水平に伸ばし、細かく振動させてオスに対して求愛行動をする[15]。6-9月に1日1個ずつ1腹2-4個[10]を早朝に産む[15][17]。卵の長径は約2 cm、短径は約1.5 cmで青色無斑[17]。メスだけが13-14日間抱卵し、孵化後13-14日で巣立つ[17]。巣によっては同じ群れのオスが巣で抱卵中のメスに給餌を行う[15]

名前の由来

体色が似るミソサザイ

学名のPrunella rubidaは、「赤い褐色の小鳥」を意味し[11]、種小名rubidaは「赤い、赤みがかった」の意。和名は冬季に藪地(カヤ=ススキなどの総称)に潜むように生活し、なかなか姿を見せず藪の下を潜ることに由来する[4][11]。藪の中を好み体色がミソサザイに似ていることから江戸時代には、「おおみそさざい」、「やまさざい」と呼ばれていた[11]。「しばもぐり」、「ちゃやどり」の異名をもつ[11]。和名は季語となっている[11]

種の保全状況評価

国際自然保護連合(IUCN)により、レッドリスト軽度懸念(LC)の指定を受けている[1]。個体数は安定傾向にある[1]。日渡り鳥条約の指定種[18]

日本では以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている[19]

カヤクグリ属

カヤクグリ属(学名:Prunella Vieillot, 1816 )はイワヒバリ科に分類される唯一ので、以下の種が知られている[2][30]ヨーロッパサハラより北のアフリカ、南の半島部を除くアジアに分布し、低木林などの山地に生息する[30]。全長13-18 cm、体重18-26 g[30]。地上、低木の中、岩の隙間などにカップ形の巣を作る。3-6個の明るい青緑色から青色の模様がない卵を産む[30]。抱卵期間は11-15日、孵化後12-14日で巣立つ。夏は主に昆虫を食べ、冬に植物の種子や果実を食べる[30]

  • イワヒバリ P. collaris (Scopoli, 1769) - 南西、南中央、東ユーラシア大陸と北西アフリカから日本にかけて分布する。
  • ヒマラヤイワヒバリ P. himalayana (Blyth, 1842) - 中央アジアに分布する。
  • ムネアカイワヒバリ P. rubeculoides (Moore, F, 1854) - ヒマラヤに分布する。
  • アカチャイワヒバリ P. strophiata (Blyth, 1843) - ヒマラヤに分布する。
  • ヤマヒバリ P. montanella (Pallas, 1776) - ユーラシア大陸の北部と東部に分布する。まれに冬鳥として日本に飛来する[10]
  • ウスヤマヒバリ P. fulvescens (Severtsov, 1873) - ユーラシア大陸の中南部と東部に分布する。
  • コーカサルイワヒバリ P. ocularis (Radde, 1884) - ユーラシア大陸の中南部に分布する。
  • アラビアイワヒバリ P. fagani (Ogilvie-Grant, 1913) - アラビア半島南西部に分布する。
  • ノドグロイワヒバリ P. atrogularis (von Brandt, JF, 1843) - ユーラシア大陸の南西部と中部に分布する。
  • シロハライワヒバリ P. koslowi (Severtsov, 1887) - ユーラシア大陸の中南部と東部に分布する。
  • ヨーロッパカヤクグリ P. modularis (Linnaeus, 1758) - ユーラシア大陸の西部と南西部、アフリカ北西部に分布する。
  • カヤクグリ P. rubida (Temminck & Schlegel, 1845) - 日本(北海道、本州中部以北、四国、九州)、ロシア(南千島)に分布する。以下の2亜種に分類されることがある[10]
    • P. rubida rubida - 亜種カヤクグリ、本州と四国で繁殖する[10]
    • P. rubida fervida - エゾカヤクグリ、北海道の高山や南千島で繁殖する[10]
  • クリイロイワヒバリ P. immaculata (Hodgson, 1845) - ヒマラヤからブータン北部と中国中央部にかけて分布する。

近縁種

形態はイワヒバリやクロジなどに似る[9]

脚注

注釈

  1. ^ カヤクグリが日本の固有種(準日本固有種)とされることがある。
  2. ^ 兵庫県のカテゴリー「Aランク」は、環境省の絶滅危惧I類(CRまたはEN)相当。
  3. ^ 奈良県のカテゴリー「絶滅危惧種」は、環境省の絶滅危惧II類。
  4. ^ 大分県では、2001年版のレッドデータブックで準絶滅危惧の指定を受けていた。
  5. ^ 青森県のカテゴリー「希少野生生物Cランク」は、環境省の準絶滅危惧相当。
  6. ^ 千葉県のカテゴリー「一般保護生物(D)」は、環境省の準絶滅危惧相当。
  7. ^ 滋賀県のカテゴリー「希少種」は、環境省の準絶滅危惧相当。

出典

  1. ^ a b c Prunella rubida (Japanese Accentor) in IUCN Red List of Threatened Species. Version 2014.2” (英語). 国際自然保護連合(IUCN). 2014年10月21日閲覧。
  2. ^ a b c d IOC World Bird List 4.3 (Waxbills, parrotfinches, munias, whydahs, Olive Warbler, accentors & pipits)” (英語). 国際鳥類学会議(IOC). 2014年10月21日閲覧。
  3. ^ Prunella rubida (Temminck & Schlegel, 1845)” (英語). ITIS. 2014年10月21日閲覧。
  4. ^ a b c d e 真木 (2012)、187頁
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m 真木 (2014)、652頁
  6. ^ a b c d e f g 叶内 (2006)、463頁
  7. ^ a b c d e f g h 中川 (2010)、176頁
  8. ^ a b c d e f g h i 五百澤 (2014)、304頁
  9. ^ a b c d 高木 (2000)、71頁
  10. ^ a b c d e f g 日高 (1997)、94頁
  11. ^ a b c d e f 国松 (1995)、180頁
  12. ^ 笹川 (2011)、390頁
  13. ^ 梓川鳥類生態研究会 (1993)、11頁
  14. ^ a b c 梓川鳥類生態研究会 (1993)、12頁
  15. ^ a b c d e 日高 (1997)、95頁
  16. ^ a b レッドデータブックとっとり改訂版(動物)” (PDF). 鳥取県. pp. 67 (2012年). 2014年10月21日閲覧。
  17. ^ a b c d 小海途 (2011)、128-129頁
  18. ^ a b 青森県レッドデータブック(2010年改訂版)” (PDF). 青森県. pp. 208 (2010年). 2014年10月21日閲覧。
  19. ^ 日本のレッドデータ検索システム「カヤクグリ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2014年10月21日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
  20. ^ 兵庫県レッドデータブック「カヤクグリ」” (PDF). 兵庫県 (2003年). 2014年10月22日閲覧。
  21. ^ 愛媛県レッドデータブック「カヤクグリ」”. 愛媛県 (2003年). 2014年10月21日閲覧。
  22. ^ 徳島県版レッドデータブック” (PDF). 徳島県. pp. 86 (2011年8月). 2012年12月13日閲覧。
  23. ^ 奈良県版レッドデータブック(鳥類)”. 奈良県 (2002年). 2014年10月21日閲覧。
  24. ^ 栃木県版レッドリスト(2011改訂版)「カヤクグリ」”. 栃木県 (2011年3月). 2014年10月21日閲覧。
  25. ^ 福岡県の希少野生生物 RED DATA BOOK 2011 FUKUOKA「カヤクグリ」”. 福岡県 (2011年). 2014年10月21日閲覧。
  26. ^ レッドデータブックおおいた” (PDF). 大分県. pp. 326 (2001年). 2014年10月21日閲覧。
  27. ^ 千葉県レッドデータブック動物編(2011年改訂版)” (PDF). 千葉県. pp. 121 (2011年). 2014年10月21日閲覧。
  28. ^ いわてレッドデータブック 岩手の希少な野生生物 web版「カヤクグリ」”. 岩手県 (2014年3月). 2014年10月21日閲覧。
  29. ^ 福井県レッドデータブック(動物編)「カヤクグリ」”. 福井県 (2002年). 2014年10月21日閲覧。
  30. ^ a b c d e 黒田 (1986)、62頁
  31. ^ 五百澤 (2014)、302頁
  32. ^ 三省堂編修所・吉井正 『三省堂 世界鳥名事典』、三省堂、2005年、529頁。ISBN 4-385-15378-7

参考文献

  • 中村登流監修 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社1984年、39、62、183頁。
  • 真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、448頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館2002年、88頁。
  • 高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会2007年、234-235頁。
  • 安部直哉 『山渓名前図鑑 野鳥の名前』、山と渓谷社2008年、107頁。

関連項目

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