エアバス・インダストリーの設立
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「エアバスA300」の記事における「エアバス・インダストリーの設立」の解説
最初の先導役だったイギリスが離脱したが、フランス・ドイツ両政府は2国だけでもエアバス計画を続行することを決定した。1969年5月29日、パリ航空ショーに出展していたA-300Bの客室モックアップの中で、仏独両政府の民間航空担当大臣により計画の正式決定の調印式が行われた。この時点での受注数は未だゼロだったが、初飛行を1972年、型式証明の取得を1973年春の予定で計画が進められることとなった。 フランスとドイツの両政府が開発資金を融資し、シュドとドイチェ・エアバスが継続してそれぞれの国の事業担当となった。イギリス政府は計画から離脱したことで、主翼開発に参画していたホーカー・シドレーが窮地に立った。ホーカー・シドレーは民間企業としてプロジェクト参加継続を希望したが、政府の援助なしには主翼開発が難しかった。主翼を開発できる代替企業もなかったことから、開発費の一部をドイツ政府が援助する条件でホーカー・シドレーは自社資金でプロジェクトに残ることになり、1969年6月にシュドおよびドイチェ・エアバスに対して参加契約を締結した。また、同年11月にはオランダのフォッカーもプロジェクトに加わった。1970年1月にはフランスでシュドとノールが合併してアエロスパシアルとなりエアバス担当企業の座を引き継いだ。 フランス・ドイツ両政府の積極的な支援のもと計画は前進し、1970年12月18日、共同事業を取りまとめるため企業連合「エアバス・インダストリー」が設立された。エアバス・インダストリーはフランス商法に基づく経済利益団体(英語版) (GIE) で、単独法人ではなく参加企業が共同で責任を持つ特殊会社であった。設立時はアエロスパシアルとドイチェ・エアバスが50対50で出資し、1971年12月23日にはスペインのCASA(英語版)もメンバーに加わり出資比率は表1のようになった。ホーカー・シドレーとフォッカーは協力会社として開発や生産を分担した。開発費は参加企業だけでなく各社を抱える各国政府による分担もあり、その内訳は表1の通りとなった。 表1: A300の生産・開発費分担と1978年までのエアバス・インダストリーへの出資比率国名企業名生産分担部位生産シェア†1開発費分担出資比率フランス アエロスパシアル 機首部、胴体中央下部、中央翼、パイロン、最終組み立て 36.1% 43%†2 47.9% 西ドイツ†3 ドイチェ・エアバス 胴体前方、胴体中央上部、胴体後方、尾部、垂直尾翼、非常口ドア、客室内装 36.1% 43%†4 47.9% イギリス ホーカー・シドレー 主翼 17.0% 6%†5 0% オランダ フォッカー 主翼の動翼 6.6% 6%†4 0% スペイン CASA(英語版) 水平尾翼、機首の乗降用ドア、降着装置の格納扉 4.2% 2%†6 4.2% 出典:松田 1981a, p. 55。 †1: 機体生産コスト比。エンジンや機器類を含んだ全ての生産コストの56.5%に相当するとされる。 †2: 100%政府負担。 †3: 1990年のドイツ再統一以降はドイツ。 †4: 90%政府負担、10%業界負担。 †5: 100%企業負担。政府助成が無かったホーカー・シドレーには開発費分担と比べて大きな生産シェアが割り当てられた。 †6: A300の設計がかなり進行してから参加したスペインは、生産シェアに対して開発費分担が少ない。 この間1970年6月にはエールフランスがA300Bの発注の意向を示していたが、同社はパリとロンドン、ジュネーヴ、コルシカ島などを結ぶ高需要路線に適した機材を求めており、A300の座席数をもう少し増やすよう要求した。そこで、A300Bの胴体を5フレーム(2.65メートル)延長したモデルを用意することとなり、A300Bの2番目のタイプということでA300B2と名付けられた。そして1971年11月3日、エールフランスはA300B2を正式に発注した。これがA300の初受注となり、注文数は確定6機、オプション10機であった。これにより原型機はA300B1と呼ばれるようになったほか、後に基本名称がA300BからA300に戻され、旅客型をA300Bとして貨客転換型をA300C、貨物型をA300Fとする型式名の整理が行われている。 1972年2月にはスペインのイベリア航空から確定4機、オプション8機の受注を獲得した。イベリア航空は4,000キロメートル以上の航続距離性能を求めていたが、A300B2の航続距離は3,430キロメートルだったため、航続距離延長型としてA300B4を開発することになった。
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