アルカロイド 分類

アルカロイド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/08/11 07:49 UTC 版)

分類

ニコチン分子はピリジン環(左)とピロリジン環(右)を含む。

アルカロイドの大半はアミノ基イミノ基を持つ。

その他のほとんどの天然化合物の分類群と比較して、アルカロイドは大きな構造的多様性によって特徴付けられ、アルカロイドに関する統一的な分類は存在しない[24]。最初の分類法は歴史的にアルカロイドを共通の天然資源(例えば植物種)によって組み合わせてきた。この分類はアルカロイドの化学構造に関する知識の欠如によって正当化されていたが、現在は時代遅れと考えられている[5][25]。より最近の分類は炭素骨格の類似性(例えばインドール様、イソキノリン様、ピリジン様)あるいは生成前駆体(オルニチンリジンチロシントリプトファン等)に基づいている[5]。しかしながら、これらはどちらとも決めにくい場合には妥協を必要とする[24]。例えば、ニコチンピリジン断片はニコチンアミドに、ピロリジン部位はオルニチンに由来し[26]、ゆえにどちらの分類群にも割り当てることができる[27]

アルカロイドはしばしば以下の主要な群に分類される[28]

真正アルカロイド
真正アルカロイド (true alkaloid) は、複素環窒素を含み、アミノ酸に起源を持つ[29]。代表例はアトロピンニコチンモルヒネである。この分類群には、窒素複素環に加えてテルペン(例: エボニン[30])やペプチド(例: エルゴタミン[31])断片を含むアルカロイドもある。また、アミノ酸起源でないにもかかわらず[32]、ピペリジンアルカロイドであるコニインやコニセインもこの分類群に含まれる[33]
不完全アルカロイド
不完全アルカロイド (protoalkaloid) は、真正アルカロイドと同様に窒素を含み、アミノ酸に起源を持つが[29]、複素環を持たない。例としてはメスカリンアドレナリンエフェドリンがある。
ポリアミンアルカロイド
プトレシンスペルミジンスペルミンの誘導体。
ペプチドおよび環状ペプチドアルカロイド[34]
偽アルカロイド
偽アルカロイド(擬アルカロイド, プソイドアルカロイド, pseudo-alkaloid)は、窒素源がアミノ酸に由来するのではなく、アンモニア性窒素に由来するアルカロイド様化合物である[35]。この分類群は、テルペン様アルカロイドやステロイド様アルカロイド[36]カフェインテオブロミンテオフィリンといったプリン[要曖昧さ回避]様アルカロイドを含む[37]。一部の著者らはエフェドリンカチノンといった化合物を偽アルカロイドに分類している。これらはアミノ酸であるフェニルアラニンに起源を持つが、窒素原子はアミノ酸からではなくアミノ基転移によって獲得している[37][38]

一部のアルカロイドは分類群に典型的な炭素骨格を有していない。例えばガランタミンおよびホモアポルフィン類はイソキノリン断片を含んでいないが、一般的にイソキノリンアルカロイドとされる[39]

単量体アルカロイドの主要な分類を以下の表に示す。

分類 主要な群 主要合成段階
窒素複素環を含むアルカロイド(真正アルカロイド)
ピロリジン誘導体[40]
Pyrrolidine structure.svg
オルニチンあるいはアルギニンプトレシンN-メチルプトレシン → N-メチル-Δ1-ピロリン[41] クスコヒグリンヒグリン、ヒグロリン、スタキドリン[40][42]
トロパン誘導体[43]
Tropane numbered.svg
アトロピン類
3、6、7位に置換
オルニチンあるいはアルギニンプトレシンN-メチルプトレシン → N-メチル-Δ1-ピロリン[41] アトロピンスコポラミンヒオスシアミン英語版[40][43][44]
コカイン類
2位および3位に置換
コカイン、エルゴニン[43][45]
ピロリジジン誘導体[46]
Pyrrolizidine.svg
非エステル 植物: オルニチンあるいはアルギニンプトレシン → ホモスペルミジン → レトロネシン[41] レトロネシン、ヘリオトリジン、ラブルニン[46][47]
モノカルボン酸エステル インジシン、リンデロフィン、サラシン[46]
大環状ジエステル プラチフィリン、トリコデスミン[46]
1-アミノピロリジジン類(ロリン類英語版 真菌英語版: L-プロリン + L-ホモセリンN-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プロリン → ノルロリン[48][49] ロリン、N-ホルミルロリン、N-アセチルロリン[50]
ピペリジン誘導体[51]
Piperidin.svg
リジンカダベリン → Δ1-ピペリデイン[52] セダミン、ロベリン、アナフェリン、ピペリン[33][53]
オクタン酸 → コニセイン → コニイン [32] コニイン、コニセイン[32]
キノリジジン誘導体[54][55]
Quinolizidine.svg
ルピニン リジンカダベリン → Δ1-ピペリデイン[56] ルピニン、ヌファリジン[54]
シチシン シチシン[54]
スパルテイン スパルテイン、ルパニン、アナヒグリン[54]
マトリン マトリン、オキシマトリン、アロマトリジン[54][57][58]
オルサニン類 オルモサニン、ピプタンチン[54][59]
インドリジジン誘導体[60]
Indolizidine.svg
リジンα-アミノアジピン酸のδ-セミアルデヒド → ピペコリン酸 → 1-インドリジジノン[61] スワインソニンカスタノスペルミン[62]
ピリジン誘導体[63][64]
Pyridine.svg
ピリジンの単純な誘導体 ニコチン酸 → ジヒドロニコチン酸 → 1,2-ジヒドロピリジン[65] トリゴネリン、リシニン、アレコリン[63][66]
多環式非縮合ピリジン誘導体 ニコチンノルニコチンアナバシン、アナタビン[63][66]
多環式縮合ピリジン誘導体 アクチニジン、ゲンチアニン、ペジクリニン[67]
セスキテルペンピリジン誘導体 ニコチン酸イソロイシン[10] エボニン、ヒッポクラテイン、トリプトニン[64][65]
イソキノリン誘導体および類縁アルカロイド[68]
Isoquinoline numbered.svg
イソキノリンの単純な誘導体[69] チロシンあるいはフェニルアラニンドーパミンあるいはチラミン(アマリリスアルカロイドの場合)[70][71] サルソリン、ロホセリン[68][69]
1- ならびに3-イソキノリンの誘導体[72] N-メチルコリダルジン、ノルオキシヒドラスチニン[72]
1- ならびに4-フェニルテトラヒドロイソキノリンの誘導体[69] クリプトスチリン[69][73]
5-ナフチル-イソキノリンの誘導体[74] アンシストロクラジン[74]
1- ならびに2-ベンジル-イソキノリンの誘導体[75] パパベリンラウダノシン英語版、センダベリン
クラリン類[76] クラリン、ヤゴニン[76]
パビン類およびイソパビン類[77] アルゲモニン[77]
ベンゾピロコリン類[78] クリプタウストリン[69]
プロトベルベリン類[69] ベルベリンカナジン、オフィオカルピン、メカンブリジン、コリダリン[79]
フタリドイソキノリン類[69] ヒドラスチン、ナルコチン(ノスカルピン)[80]
スピロベンジルイソキノリン類[69] フマリシン[77]
イペカクアンハアルカロイド[81] エメチン、プロトエメチン、イペコシド[81]
ベンゾフェナントリジン類[69] サングイナリン、オキシニチジン、コリノロキシン[82]
アポルフィン英語版[69] グラウシン、コリジン、リロイデニン[83]
プロアポルフィン類[69] プロヌシフェリン、グラジオビン[69][78]
ホモアポルフィン類[84] クレイシギニン、ムルチフロラミン[84]
ホモプロアポルフィン類[84] ブルボコジン[76]
モルヒネ[85] モルヒネコデインテバインシノメニン[86]
ホモモルヒネ類[87] クレイシギニン、アンドロシンビン[85]
トロポロイソキノリン類[69] イメルブリン[69]
アゾフルオランテン類[69] ルフェシン、イメルテイン[88]
アマリリスアルカロイド[89] リコリン、アンベリン、タゼッチン、ガランタミン、モンタニン[90]
エリスリナ英語版アルカロイド[73] エリソジン、エリトロイジン[73]
フェナントレン誘導体[69] アテロスペルミニン[69][79]
プロトピン類[69] プロトピン、オキソムラミン、コリカビジン[82]
アリストラクタム[69] ドリフラビン[69]
オキサゾール誘導体[91]
Oxazole structure.svg
チロシンチラミン[92] アンヌロリン、ハルホルジノール、テキサリン、テキサミン[93]
イソオキサゾール誘導体
Isoxazole structure.png
イボテン酸ムッシモール イボテン酸、ムッシモール
チアゾール誘導体[94]
Thiazole structure.svg
1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸 (DOXP)、チロシンシステイン[95] ノストシクラミド、チオストレプトン[94][96]
キナゾリン誘導体[97]
Quinazoline numbered.svg
3,4-ジヒドロ-4-キナゾロン誘導体 アントラニル酸あるいはフェニルアラニンあるいはオルニチン[98] フェブリフギン英語版[99]
1,4-ジヒドロ-4-キナゾリン誘導体 グリコリン、アルボリン、グリコスミニン[99]
ピロリジンおよびピペリジンキナゾリン誘導体 バジシン(ペガニン)[91]
アクリジン誘導体[91]
Acridine.svg
アントラニル酸[100] ルタクリドン、アクロニシン[101][102]
キノリン誘導体[103][104]
Quinoline numbered.svg
2-キノロンおよび4-キノロンのキノリン誘導体の単純な誘導体 アントラニル酸 → 3-カルボキシキノリン[105] クスパリン、エキノプシン、エボカルピン[104][106][107]
三環性テルペノイド フリンデルシンe[104][108]
フラノキノリン誘導体 ジクタムニン、ファガリン、スキンミアニン[104][109][110]
キニーネ トリプトファントリプタミン → ストリクトシジン(with セコロガニン) → コリナンテアール → シンホニノン [71][105] キニーネキニジンシンコニン、シンホニジン[108]
インドール誘導体[86]
Indole numbered.svg
非イソプレンインドールアルカロイド
単純なインドール誘導体[111] トリプトファントリプタミンあるいは5-ヒドロキシトリプトファン[112] セロトニンシロシビンジメチルトリプタミン (DMT)、ブフォテニン[113][114]
β-カルボリンの単純な誘導体[115] ハルマン、ハルミンハルマリン、エレアグニン[111]
ピロロインドールアルカロイド[116] フィゾスチグミン(エセリン)、エテラミン、フィソベニン、エプタスチミン[116]
セミテルペノイドインドールアルカロイド
麦角アルカロイド英語版[86] トリプトファン → カノクラビン → アグロクラビン → エリモクラビン → パスパル酸 → リゼルグ酸英語版[116] エルゴタミン、エルゴバシン、エルゴシン[117]
モノテルペノイドインドールアルカロイド
コリナンセ英語版型アルカロイド[112] トリプトファントリプタミン → ストリクトシジン(with セコロガニン[112] アジマリシン、サルパギン、ボバシン、アジュマリンヨヒンビンレセルピンミトラギニン英語版[118][119]ストリキニーネ類(ストリキニーネブルシン、アクアミシン、ボミシン)[120]
イボガ型アルカロイド[112] イボガミンイボガインボアカンギン英語版[112]
アスピドスペルマ英語版型アルカロイド[112] ビンカミン英語版ビンカアルカロイド英語版、ビンコチン、アスピドスペルミン[121][122]
イミダゾール誘導体[91]
Imidazole structure.svg
ヒスチジンから直接[123] ヒスタミン、ピロカルピン、ピロシン、ステベンシン[91][123]
プリン誘導体[124]
9H-Purine.svg
キサントシン(プリン生合成において形成)→ 7-メチルキサントシン → 7-メチルキサンチンテオブロミンカフェイン[71] カフェインテオブロミンテオフィリンサキシトキシン[125][126]
側鎖に窒素を有するアルカロイド(不完全アルカロイド)
β-フェネチルアミン誘導体[78]
Phenylethylamine numbered.svg
チロシンあるいはフェニルアラニン → ジオキシフェニルアラニン → ドーパミンアドレナリンおよびメスカリンチラミン → 1-フェニルプロパン-1,2-ジオン → カチノンエフェドリンおよびプソイドエフェドリン[10][38][127] チラミンエフェドリンプソイドエフェドリンメスカリンカチノンカテコールアミン類(アドレナリンノルアドレナリンドーパミン[10][128]
コルヒチンアルカロイド[129]
Colchicine.svg
チロシンあるいはフェニルアラニンドーパミン → アウツムナリン → コルヒチン [130] コルヒチン、コルカミン[129]
ムスカリン[131]
Muscarine.svg
グルタミン酸 → 3-ケトグルタミン酸 → ムスカリン(with ピルビン酸[132] ムスカリン、アロムスカリン、エピムスカリン、エピアロムスカリン[131]
ベンジルアミン[133]
Benzylamine.svg
フェニルアラニンバリンロイシンあるいはイソロイシン[134] カプサイシンジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン[133][135]
ポリアミンアルカロイド
プトレシン誘導体[136]
Putrescine.svg
オルニチンプトレシンスペルミジンスペルミン[137] パウシン[136]
スペルミジン誘導体[136]
Spermidine.svg
ルナリン、コドノカルピン[136]
スペルミン誘導体[136]
Spermine.svg
ベルバセニン、アフェランドリン[136]
ペプチド(環状ペプチド)アルカロイド
13員環ペプチドアルカロイド[34][138] ヌンムラリンC型 異なるアミノ酸から[34] ヌンムラリンC、ヌンムラリンS[34]
ジジフィン型 ジジフィンA、サチバニンH[34]
14員環ペプチドアルカロイド[34][138] フラグラニン型 フラグラニン、スクチアニンJ[138]
スクチアニンA型 スクチアニンA[34]
インテゲリン型 インテゲリン、ジスカリンD[138]
アンフィビンF型 アンフィビンF、スピナニンA[34]
アンフィビンB型 アンフィビンB、ロツシンC[34]
15員環ペプチドアルカロイド[138] ムクロニンA型 ムクロニンA [31][138]
疑アルカロイド(テルペンおよびステロイド
ジテルペン [31]
Isoprene.svg
リコクトニン型 メバロン酸イソペンテニル二リン酸ゲラニル二リン酸[139][140] アコニチンデルフィニン英語版[31][141]
ステロイド[142]
Cyclopentenophenanthrene.svg
コレステロールアルギニン[143] ソラソジン、ソラニジン、ベラルカミン、バトラコトキシン[144]



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  12. ^ Hesse, pp. 1–3
  13. ^ a b Hesse, p. 5
  14. ^ 接尾辞 "ine" はギリシャ語の女性父称を作る接尾辞であり、「〜の娘」を意味する。すなわち、アトロピンは「Atropa(ベラドンナ)の娘」を意味する。[1]
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