小切手 小切手の決済

小切手

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/04 00:38 UTC 版)

小切手の決済

当座取引契約と当座預金口座

小切手を利用するには、まず取引銀行と当座取引契約を結び、その銀行に当座預金口座を開設する必要がある[1]。これにより取引銀行から小切手帳(小切手用紙が綴りになったもの)を購入できるようになり、小切手の発行(振出)が可能となる[1]

アメリカでは個人小切手が普及しており銀行から小切手帳冊子を買う代わりに、専門業者からメールオーダーで注文印刷した小切手帳冊子を安価で購入することが多い(銀行も自分で印刷するわけではなく、結局同じような専門業者に発注するので品質や安全性に何ら変わりはないと言われる)。銀行の識別番号、口座番号、小切手連番などは磁気粉を混入したインクでMICR印刷される。

なお、自己宛小切手や送金小切手のように当座預金口座の開設を必要としない小切手もある[2]

小切手の振出

小切手の発行[1](必要的記載事項とされる事項を記載して書面を作成して相手に交付する行為)を振出(ふりだし)という[4]

金額は数字の書き換えを防ぐためにチェックライターを用いることがある[4]

振出人の署名には自署(サイン)による方法と、ゴム印の記名判と振出人の印章を利用する記名捺印による方法がある[4]

欧米など押印の習慣がない地域では、事業用小切手や銀行小切手でも担当職員・行員が自分で署名するか、保険金や年金小切手のように大量に発行される小切手には予め責任者の署名が印刷されている。

小切手の譲渡

小切手は有価証券であるから券面に「裏書禁止」の文言がない限り宛先人は他人に譲渡でき、更に譲渡された人もまた他人に譲渡できる。譲渡するときは、小切手券面の裏面に「××(被譲渡人)にお支払いください」と言う裏書文言と譲渡人の記名・押印若しくは署名をする。最後に小切手を譲渡された人(所持人)が支払いを受けるが、もし当該小切手が不渡りになった時は、所持人は振出人のみならずどの裏書人にも遡及的に支払いを求めることができる。

小切手も手形と同じく、受取人名と第一裏書人名が同一で、第一裏書人から所持人までの裏書が連続していなければ、裏書不備となり振出人から支払いを拒絶される[4]。他方、裏書が連続しているなら所持人は正当な権利者と推定される[4]。なお、白地式裏書の場合は裏書が連続しているものとみなされる[4]

手形と比較すると小切手はいつでも現金化できるため譲渡される例は多くはない[4]。なお、裏書が禁止されるわけではないが事実上制限される小切手に線引小切手がある[5]

小切手の支払

小切手を現金化するには、支払銀行に小切手の現物を呈示する必要がある(支払のための提示)[4]。支払のための提示は原理的には支払銀行に対して支払を請求する行為であるが、実際には小切手所持人が自らの取引銀行(小切手所持人が普通預金口座を開設している銀行等)に支払銀行への取立を委任して行われる[4]。支払銀行が小切手の所持人に直接支払を行うのは、両者間に普段から取引がある場合に限られる[4]

実務上、小切手の振出日付欄に未来の日付を記入して事実上約束手形と同じように支払を先延ばしする「先日付小切手」が用いられることもあるが、この日付は法的には効力は無く支払地の銀行は先日付前でも支払いを拒むことが出来無い[6][7]。逆に、振出日付から一定日数(例えば30日、180日など)以上経過した小切手は、支払地銀行と振出人との間の特約により支払いを拒まれることもある[8]

日本では小切手の支払のための提示は、振出日から10日目(振出日を含めると11日)で、最終日が銀行の休業日にあたるときは翌営業日までとされている[4]

取立を委任された銀行は手形交換所に小切手を持ち込んで決済し(自行が支払銀行であるときは手形交換所を通さない行内交換で処理し)、依頼人の口座に入金する手続をとる[4]

小切手の不渡り

支払銀行が支払のための呈示を受けたものの、当座預金残高が不足しているなどの理由で支払ができない状態のことを不渡りという[4]。小切手が不渡りになった場合、小切手の所持人は振出人に対して直接請求でき、裏書人に対しても遡求できる[4]


  1. ^ a b c d e 豊島 正治『書き込み式で経理実務が身につく本 第5版』TAC出版、2007年、80頁
  2. ^ a b c d e f g h 手形・小切手の基礎知識1 全国銀行協会(2022年7月4日閲覧)
  3. ^ 預金(貯金)小切手、送金小切手、一覧払手形を含む
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n 手形・小切手の利用方法 全国銀行協会(2022年7月4日閲覧)
  5. ^ a b c d e 高濱 和博「小切手の問題とペイメント・カードへの移行 フランスにおける事例」『経営研究』第54巻第3号、大阪市立大学経営学会、2003年11月、51-71頁。 
  6. ^ 但し、振出人と被振出人の間に「先日付まで取り立てない」旨の約束があれば信義則違反として振出人は被振出人に対して責任を追及できる可能性はある。
  7. ^ また、当該小切手が裏書譲渡されている場合には被譲渡人にその責任は問えない。
  8. ^ いわゆる「資金繰り」である
  9. ^ 自己宛小切手とは”. マネーフォワード クラウド会計. マネーフォワード (2020年6月9日). 2021年5月7日閲覧。
  10. ^ 【手形・小切手の基礎知識①】お金に代わる働きをする手形・小切手”. 全国銀行協会. 2021年5月7日閲覧。
  11. ^ a b 自己宛小切手のご利用のお勧めについて”. 中日信用金庫. 2021年5月7日閲覧。
  12. ^ a b 自己宛小切手を活用した金融犯罪防止対策(通称:預手プラン)について”. 香川銀行. 2021年5月7日閲覧。
  13. ^ a b 金融機関での被害防止対策”. 埼玉県警察本部 (2020年5月13日). 2021年5月7日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g 木村恵子『アメリカの心と暮らし』冨山房インターナショナル、2008年、187頁。 
  15. ^ 「銀行等」とは、銀行のほか、「小切手法ノ適用ニ付銀行ト同視スベキ人又ハ施設ヲ定ムルノ件」(昭和8年12月28日勅令第329号)に掲げられた金融機関を指す。詳しくは「小切手法」の項を参照のこと。






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