場の空気 相手の表情から気持ちを読むこと

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場の空気

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/03 04:24 UTC 版)

相手の表情から気持ちを読むこと

「場の空気を読む」ということは、「顔色を窺う」ことと同義といってもよい。集団や社会への親和性という面から見れば、周囲の人の反応を意識することであり、他人の表情や言動から、自分の行動への評価を見つけ出すことである。

場の空気を読むことに長ける人は集団への親和性が高くなり、逆に場の空気を読めない人は集団内の人々からの評価が低くなる傾向が見られる。これは日本に限ったことではなく、他の国々でも同様の傾向があると思われる[7]

内藤誼人は自著『「場の空気」を読む技術』において、顔の表情を読むこと、なかでも相手の眼を見ることが重要だとしている。相手の言っていることと相手の表情とが一致しなかったら、表情のほうが相手の真情として優先させるということである。例えば相手が「怒っていないよ」と言っている時に怒っている表情をしていたら、相手は怒っていると捉えることである[8]。「場の空気」が読めない人は、相手の顔や眼元の表情を見ないで、うつむきがちに話したり、顔ではないところや、手元の資料を見ながら話す傾向がある。それにより耳から入ってくる言葉にばかり注意が向き、相手の真意・心情を理解し損ねているとされる[9]

しかしながら、「空気」を読んで理解したはずの相手の真意・心情は、本当にその相手の真情であるとは限らず、当人の勝手な先入観思い込みであることも多い。

「場の空気」を読んだうえでどのように振舞うか

「場の空気を読む」ことと、それを踏まえて「どのように振舞うか」ということは、また別の要素である。無数の主体的な選択肢が、各人の価値観道徳観哲学人生観などと呼ばれるものに応じて、その瞬間瞬間に存在している。

一般的に「場の空気を読む」とは、相手の表情に好ましいと感じている反応が出たら、行動を積極的に行い、否定的な反応が出た場合は、自分が直前に取ったような行動は抑制する、つまり「場の空気」を読んで発言や行動を左右するということである。

また逆に、主体的な振る舞いも存在する。例えば、「場の空気」が"陰鬱"と読んだら、自らその場を明るいものにする、「場の空気」が"いじめ"あるいは"犯罪的"と読んで適切・適法な行動を取る、などの選択肢も存在する。

しかしながら、一般的にはこのような振舞いは、「場をしらけさせる」「空気を読んでいない」とされることが非常に多い。

「場の空気」を読む能力の習得

この能力は、これに関する訓練や実地体験の積み重ねによって伸ばすことができる。通常、このような訓練は主に成長過程において極めて自然な形式で行われているので、社会環境の影響を受けやすい。 また成人してから、マナー教育などを通して形式知として理知的にこれを理解しようとする場合もある。


  1. ^ 林四郎ほか「例解新国語辞典第六版」2002年1月 「空気(くうき)」の項の2
  2. ^ (福田健 2006)での「場の空気」の定義におおむね沿ったもの
  3. ^ 「田舎の高等学校を卒業して東京の大学に這入つた三四郎が新しい空気に触れる、さうして同輩だの先輩だの若い女だのに接触して色々に動いて来る、手間は此空気のうちに是等の人間を放す丈である、あとは人間が勝手に泳いで、自ら波乱が出来るだらうと思ふ、さうかうしてゐるうちに読者も作者も此空気にかぶれて此等の人間を知る様になる事と信ずる、もしかぶれ甲斐のしない空気で、知り栄のしない人間であつたら御互に不運と諦めるより仕方がない、たゞ尋常である、摩訶不思議は書けない。」岩波版漱石全集1993.12
  4. ^ 対象に含まれる精神(アリア)、あるいは卑近にその場面を支配する雰囲気を表現する主旨でのairの用法は英語にもあり、例えば1800年代の書籍には "Blackstone, a celebrated commentator on the laws of England, he it was, who first gave to the law the air of science." あるいは "(the) vulgar air and attitude・・"といった用例が見られる(RECOLLECTIONS OF CURRAN AND SOME OF HIS COTEMPORARIES. (CHARLES PHILLIPS, 1818))。
  5. ^ 内藤誼人 2004, p. 36.
  6. ^ ユーキャン新語・流行語大賞公式サイト 2007年度候補語解説
  7. ^ (内藤誼人 2004, p. 26-27, p.31-32)によると、カナダでの調査およびアメリカでの調査でも「場の空気」を読めない人に対する、集団からの評価は次第に低くなる、との結果が出ている。
  8. ^ 内藤誼人 2004, p. 40.
  9. ^ 内藤誼人 2004, p. 41.
  10. ^ 阿部孝太郎「日本的集団浅慮の研究・要約版」『商學討究』第57巻第2/3号、小樽商科大学、2006年12月、73-84頁、ISSN 04748638NAID 110004856535 
  11. ^ 冷泉彰彦「関係の空気」「場の空気」, p. 23.
  12. ^ 冷泉彰彦「関係の空気」「場の空気」, p. 30-32.
  13. ^ 冷泉彰彦「関係の空気」「場の空気」, p. 61-66.
  14. ^ 冷泉彰彦「関係の空気」「場の空気」, p. 120-150.
  15. ^ 冷泉彰彦「関係の空気」「場の空気」, p. 157-162.
  16. ^ 冷泉彰彦「関係の空気」「場の空気」, p. 180.
  17. ^ 冷泉彰彦「関係の空気」「場の空気」, p. 180-183.
  18. ^ 冷泉彰彦「関係の空気」「場の空気」, p. 180-210.
  19. ^ 北田暁大 『嗤う日本の「ナショナリズム」』 日本放送出版協会、2005年、203頁など。ISBN 978-4140910245
  20. ^ 北田暁大「ディスクルス(倫理)の構造転換」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』 河出書房新社、2010年、159頁。ISBN 978-4309244426
  21. ^ a b 濱野智史「まえがき」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』4頁など。
  22. ^ 荻上チキ 『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』 PHP研究所、2008年、236頁。ISBN 978-4569701141
  23. ^ 「ポストised、変化したことは何か1」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』461頁。
  24. ^ 濱野智史 『アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか』 エヌ・ティ・ティ出版、2008年、135-136頁。ISBN 978-4757102453
  25. ^ 「流動化する社会の中で」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』447頁。
  26. ^ 山本七平.「空気」の研究, p. 16, 22.
  27. ^ 白田秀彰の「インターネットの法と慣習」 意思主義とネット人格・キャラ選択時代:Hotwired [1]





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