場の空気 場の空気の概要

場の空気

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/22 01:18 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

「場の」はつけず、ただ「空気」と表現されることもある。

概要

現在では、集団や個々人の心情気分、あるいは集団の置かれている状況を指すことが多いが[2]、人によって指し示す範囲は若干異なる。社会心理学では「場の空気」が起こす集団心理の危険性に着目することが多く、ビジネス等では逆にコミュニケーション能力として肯定的に解釈することが多い。

「空気」をある種の時代の気分や流行文化や考え方の比喩として使用する例は古くからあり、夏目漱石は『三四郎』予告で「田舎の高等学校を卒業して東京の大学に這入つた三四郎が新しい空気に触れる」と記している[3][4]

社会心理学の観点からとらえた書籍としての初出は山本七平の著『「空気」の研究』(1977年)と考えられている[5]。山本は教育行政や戦争指導などの事例を挙げ、空気を読むことが時に集団の意思決定をゆがめ誤らせることを指摘し「水を差す」ことの重要性を提示した。

場の空気を読む、すなわち場の空気を意識することは暗黙知であり、心理学ではこのような能力を「社会的知能(ソーシャル・インテリジェンス)」と呼んでいる[6]としている。そのような能力は「EQ」(情動指数、心の知能指数)という呼び方でも知られ、習得可能なもの(=技能)として捉え、社会技能と呼んでいる。つまり、対人心理学においては、対人関係の巧拙を生得的なもの(=性格)としては捉えない。

また場の空気を読むことがすなわち協調であると考える者も多く、ある側面において日本特有の事象であるとする説もある。(下記参照)

2007年には、「空気を読めない」を略してKYという言葉が一部のマスメディアで取り上げられる様になり、同年の新語・流行語大賞候補にもなった[7]

相手の表情から気持ちを読むこと

「場の空気を読む」ということは、「顔色を窺う」ことと同義といってもよい。集団や社会への親和性という面から見れば、周囲の人の反応を意識することであり、他人の表情や言動から、自分の行動への評価を見つけ出すことである。

場の空気を読むことに長ける人は集団への親和性が高くなり、逆に場の空気を読めない人は集団内の人々からの評価が低くなる傾向が見られる。これは日本に限ったことではなく、他の国々でも同様の傾向があると思われる[8]

内藤誼人は自著『「場の空気」を読む技術』において、顔の表情を読むこと、なかでも相手の眼を見ることが重要だとしている。相手の言っていることと相手の表情とが一致しなかったら、表情のほうが相手の真情として優先させるということである。例えば相手が「怒っていないよ」と言っている時に怒っている表情をしていたら、相手は怒っていると捉えることである[9]。「場の空気」が読めない人は、相手の顔や眼元の表情を見ないで、うつむきがちに話したり、顔ではないところや、手元の資料を見ながら話す傾向がある。それにより耳から入ってくる言葉にばかり注意が向き、相手の真意・心情を理解し損ねているとされる[10]

しかしながら、「空気」を読んで理解したはずの相手の真意・心情は、本当にその相手の真情であるとは限らず、当人の勝手な先入観思い込みであることも多い。

「場の空気」を読んだうえでどのように振舞うか

「場の空気を読む」ことと、それを踏まえて「どのように振舞うか」ということは、また別の要素である。無数の主体的な選択肢が、各人の価値観道徳観哲学人生観などと呼ばれるものに応じて、その瞬間瞬間に存在している。

一般的に「場の空気を読む」とは、相手の表情に好ましいと感じている反応が出たら、行動を積極的に行い、否定的な反応が出た場合は、自分が直前に取ったような行動は抑制する、つまり「場の空気」を読んで発言や行動を左右するということである。

また逆に、主体的な振る舞いも存在する。例えば、「場の空気」が"陰鬱"と読んだら、自らその場を明るいものにする、「場の空気」が"いじめ"あるいは"犯罪的"と読んで適切・適法な行動を取る、などの選択肢も存在する。

しかしながら、一般的にはこのような振舞いは、「場をしらけさせる」「空気を読んでいない」とされることが非常に多い。


  1. ^ 林四郎ほか「例解新国語辞典第六版」2002年1月 「空気(くうき)」の項の2
  2. ^ 福田健『「場の空気」が読める人、読めない人―「気まずさ解消」のコミュニケーション術』2006年 PHP研究所, ISBN 4569654657 での「場の空気」の定義におおむね沿ったもの
  3. ^ 「田舎の高等学校を卒業して東京の大学に這入つた三四郎が新しい空気に触れる、さうして同輩だの先輩だの若い女だのに接触して色々に動いて来る、手間は此空気のうちに是等の人間を放す丈である、あとは人間が勝手に泳いで、自ら波乱が出来るだらうと思ふ、さうかうしてゐるうちに読者も作者も此空気にかぶれて此等の人間を知る様になる事と信ずる、もしかぶれ甲斐のしない空気で、知り栄のしない人間であつたら御互に不運と諦めるより仕方がない、たゞ尋常である、摩訶不思議は書けない。」岩波版漱石全集1993.12
  4. ^ 対象に含まれる精神(アリア)、あるいは卑近にその場面を支配する雰囲気を表現する主旨でのairの用法は英語にもあり、例えば1800年代の書籍には "Blackstone, a celebrated commentator on the laws of England, he it was, who first gave to the law the air of science." あるいは "(the) vulgar air and attitude・・"といった用例が見られる(RECOLLECTIONS OF CURRAN AND SOME OF HIS COTEMPORARIES. (CHARLES PHILLIPS, 1818))。
  5. ^ 山本七平『「空気」の研究』文藝春秋、1977年。
  6. ^ 内藤誼人『「場の空気」を読む技術』サンマーク出版, 2004年, ISBN 4763195948 p.36
  7. ^ ユーキャン新語・流行語大賞公式サイト 2007年度候補語解説
  8. ^ 内藤誼人の前掲書(p.26-27, p.31-32)。同書によると、カナダでの調査およびアメリカでの調査でも「場の空気」を読めない人に対する、集団からの評価は次第に低くなる、との結果が出ている。
  9. ^ 内藤誼人、前掲書 p.40
  10. ^ 内藤誼人、前掲書 p.41
  11. ^ 「日本的集団浅慮の研究・要約版」阿部孝太郎(小樽商科大学学術成果コレクション2006-12-25)[1]
  12. ^ 『「関係の空気」「場の空気」』23頁
  13. ^ 『「関係の空気」「場の空気」』30-32頁
  14. ^ 『「関係の空気」「場の空気」』61-66頁
  15. ^ 『「関係の空気」「場の空気」』120-150頁
  16. ^ 『「関係の空気」「場の空気」』157-162頁
  17. ^ 『「関係の空気」「場の空気」』180頁
  18. ^ 『「関係の空気」「場の空気」』180-183頁
  19. ^ 『「関係の空気」「場の空気」』180-210頁
  20. ^ 北田暁大 『嗤う日本の「ナショナリズム」』 日本放送出版協会、2005年、203頁など。ISBN 978-4140910245
  21. ^ 北田暁大「ディスクルス(倫理)の構造転換」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』 河出書房新社、2010年、159頁。ISBN 978-4309244426
  22. ^ a b 濱野智史「まえがき」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』4頁など。
  23. ^ 荻上チキ 『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』 PHP研究所、2008年、236頁。ISBN 978-4569701141
  24. ^ 「ポストised、変化したことは何か1」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』461頁。
  25. ^ 濱野智史 『アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか』 エヌ・ティ・ティ出版、2008年、135-136頁。ISBN 978-4757102453
  26. ^ 「流動化する社会の中で」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』447頁。
  27. ^ 山本『「空気」の研究』(文庫版)、文藝春秋、1983年、ISBN 4167306034、p.16, 22。
  28. ^ 白田秀彰の「インターネットの法と慣習」 意思主義とネット人格・キャラ選択時代:Hotwired [2]




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「場の空気」の関連用語

場の空気のお隣キーワード

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   
検索ランキング



場の空気のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの場の空気 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2020 Weblio RSS