ベノナ ベノナの概要

ベノナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/19 06:37 UTC 版)

後年解読された暗号電文を元に様々な研究が行われた結果、1930年代から第二次大戦後の1940年代末までに米国国内の政府機関、諜報機関、軍関係、民間組織などに数百人単位のソ連のスパイ、スパイグループ及びスパイネットワークが存在し、当時の米国政府の政策や意思決定をソ連有利に歪め、世論などがこれらの様々な工作活動によって多大な影響を受けていた間接侵略シャープパワー)の可能性があることが明らかになった。

概要

本作戦開始以来、半世紀以上に渡って極めて高度な機密として秘匿されてきたが、米ソ冷戦の終結、1991年のソビエト連邦の崩壊などの状況の変化を受け、1995年7月にこれらソビエトスパイの暗号解読文書の一部が公開され、さらなる公開で約3000に上る解読文書が公開された[3]。 現在、これら解読文書の多くは米国CIAやNSAのホームページにて公開されている。 また後年、研究家達によってミトロヒン文書とのすり合わせ検証が行われた。 先立っては「JADE」、「BRIDE」、「DRUG」という名が使用されていた[4]

詳細

ソ連が一般に採用していた暗号法は、元の文の単語や文字を数字に変換するとともに暗号文解読のためのワンタイムパッド法の場合には本文と同じ量になる)を付加する方法であった。正しい使用法をすれば、ワンタイムパッド法で暗号化された文は決して解読できないことが理論的に知られている。しかし、ソ連関係者の一部が暗号化に際して誤りを犯し、一度使用した鍵を再利用してしまった(一度使用した鍵をただちに廃棄するのがワンタイムパッド法の原則である)。これにより、膨大な通信文の一部、又は文書の一部分に限られたが解読が可能になった。

第二次世界大戦末期の1945年5月に、アメリカ軍情報部がドイツザクセンおよびシュレースヴィヒでソ連の暗号書を発見した[5]。これはドイツ軍フィンランドのソ連領事館を制圧した[6]際に、半分焼け焦げた暗号書を発見しドイツへ送られたものだった。1944年末フィンランド将校から別の暗号書もアメリカに送られたがOffice of Strategic Servicesがソ連に返還した[7]。これがアメリカで活躍するソ連国家保安委員会(当時は内務人民委員部、NKVD)のスパイ網で使用されているものと関連があることがわかった。

また1942年初頭に、ソ連NKVD通信センターは、使い捨て暗号表(ワンタイムパッド)を35,000ページ複製し2組の暗号表を作った。これにより同一暗号で暗号化された通信文が2つあることになった。そのため、アメリカ国家安全保障局(NSA)のメレディス・ガードナーほかの解読者は暗号を破ることができた。

解読は極秘であったが、秘密情報部(SIS) のアメリカ駐在連絡代表キム・フィルビーがソ連に情報を流したため、ソ連は解読が実施されていることを知っていた。しかし当時フィルビーはSIS長官候補であったため、彼を温存するためにこの情報を利用しなかったという。

暗号突破

暗号突破時に判明したこと。


注釈

  1. ^ 1945年9月5日、在カナダソ連大使館に勤務していたイゴーリ・グゼンコ英語版が亡命し、ソ連の諜報活動を暴露した。

出典

  1. ^ 『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』に学ぶ「今そこにある危機」” (日本語). アゴラ 言論プラットフォーム. 2019年10月20日閲覧。
  2. ^ 「日本を降伏させるな」米機密文書が暴いたスターリンの陰謀” (jp). オピニオンサイト「iRONNA(いろんな)」. 2019年10月20日閲覧。
  3. ^ a b VENONA Archived 2014年6月28日, at the Wayback Machine. National Security Agency Central Security Service
  4. ^ a b Benson, Robert L.. “The Venona Story”. National Security Agency. 2004年4月30日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2006年6月26日閲覧。
  5. ^ NSA VENONA公式サイト VENONA Chronology
  6. ^ 1941年6月22日にペツァモ市の領事館。
  7. ^ a b c ヘインズ&クレア 2010
  8. ^ 元谷 2008、p.156以降
  9. ^ 連邦議会でもソ連のスパイ工作が追及されていた - エキサイト
  10. ^ 真珠湾攻撃77年目の真実 ルーズベルトは知っていた!? ~日米ソの壮絶”スパイ戦争 ザ・スクープスペシャル 終戦企画 2018年8月12日(日)午後1時55分~3時20分放送(一部地域を除く) テレビ朝日 ザ・スクープ
  11. ^ FBIの情報公開法文書 - アルジャー・ヒスの名がある。
  12. ^ 対日最後通牒ハル・ノートの原案を作成した元米国財務次官補 日本戦略研究フォーラム(JFSS)
  13. ^ ソ連に操られていた...アメリカが隠していた「不都合な真実」 新刊JP編集部
  14. ^ ニコラス・グリフィン 『ピンポン外交の陰にいたスパイ』柏書房。 
  15. ^ John Lowenthal. “Venona and Alger Hiss”. New York University. 2022年6月26日閲覧。
  16. ^ John Lowenthal (1976年6月26日). “What the FBI knew and hid”. The Nation. 2022年7月4日閲覧。
  17. ^ Alger Hiss (1957年). “In the Court of Public Opinion”. HarperCollins. pp. 363-409. ISBN 9780060902933. https://archive.org/details/incourtofpublico00hiss/page/363/mode/1up 
  18. ^ Supplemental Affidavits in re U.S. v. Alger Hiss”. The Black Vault (1976年6月26日). 2022年7月4日閲覧。
  19. ^ Russell R. Bradford; Ralph B. Bradford (1992年). “A History of Forgery by Typewriter”. Nelson-Hall Publishers. https://archive.ph/rA8z 2022年7月4日閲覧。 
  20. ^ Anthony Summers (2000年). “The Arrogance of Power: The Secret World of Richard Nixon”. Penguin Books. pp. 73-75. ISBN 9780670871513. https://archive.org/details/arroganceofpower00summ/page/75/mode/1up 
  21. ^ Walter Schneir; Miriam Schneir (2009年4月16日). “Cables Coming in From the Cold”. The Nation. https://www.thenation.com/article/archive/cables-coming-cold-0/ 2022年6月26日閲覧。 
  22. ^ Robert L. Benson. “The Venona Story”. NSA. p. 32. 2022年6月25日閲覧。PDF p.34
  23. ^ Jeff Kisseloff (2009年). “The Alger Hiss Story » Spies: Fact or Fiction?”. New York University. 2022年6月28日閲覧。
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  25. ^ Julius N. Kobyakov. “Alger Hiss”. Michigan State University. 2022年6月27日閲覧。
  26. ^ Jon Wiener (2004年5月2日). “Allen Weinstein: A Historian with a History”. George Washington University. 2022年7月4日閲覧。
  27. ^ "Costly Error for Hiss Historian: Weinstein Pays for Mistake" Jon Wiener (2005年). “Historians In Trouble: Plagiarism, Fraud, And Politics In The Ivory Tower”. New Press. pp. 31-57. ISBN 9781565848849
  28. ^ Victor Navasky (2001年6月20日). “Cold War Ghosts”. The Nation. https://www.thenation.com/article/archive/cold-war-ghosts/ 2022年6月27日閲覧。 
  29. ^ Rehabilitating Joseph McCarthy?”. TFN Insider. 2022年6月28日閲覧。
  30. ^ Athan Theoharis (2002年). “How the FBI failed in counterintelligence but promoted the politics of McCarthyism in the Cold War years”. Ivan R. Dee. ISBN 9781566634205. https://archive.org/details/chasingspieshowf00theo/mode/1up 
  31. ^ Allen Weinstein (1997年). “Perjury: The Hiss-Chambers Case”. PENGUIN RANDOM HOUSE. p. 512. ISBN 9780394728308 
  32. ^ Eduard Mark (Summer 2009). “In Re Alger Hiss: A Final Verdict from the Archives of the KGB”. 11. p. 50. doi:10.1162/jcws.2009.11.3.26 
  33. ^ 須藤眞志 『ハル・ノートを書いた男 : 日米開戦外交と「雪」作戦』文藝春秋文春新書〉、1996年2月19日、165頁。ISBN 4166600281 
  34. ^ R. Bruce Craig (2012年4月12日). “Setting the Record Straight: Harry Dexter White and Soviet Espionage”. George Washington University. 2022年6月28日閲覧。
  35. ^ Benn Steil (2013年2月25日). “The Battle of Bretton Woods: John Maynard Keynes, Harry Dexter White, and the Making of a New World Order”. Princeton University Press. pp. 4,23. ISBN 9780691149097. https://archive.org/details/battleofbrettonw0000stei/page/4/mode/1up 
  36. ^ a b c d “ローゼンバーグ事件の元受刑者、半世紀以上前のスパイ行為認める”. ニューヨーク: AFP. (2008年9月13日). http://www.afpbb.com/articles/-/2517117 
  37. ^ In Search of History Spies Among Us Documentary, http://docuwiki.net/index.php?title=Spies_Among_Us 





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