老化や脳血管障害の後遺症などによって、飲み込む機能(嚥下機能)や咳をする力が弱くなると、口腔内の細菌、食べかす、逆流した胃液などが誤って気管に入りやすくなります。その結果、発症するのが誤嚥性肺炎です。なかでも寝ている間に少量の唾液や胃液などが気管に迷入して起こる不顕性の誤嚥は、本人も自覚がないため、繰り返し発症することが多いのです。体力の弱っている高齢者では命にかかわるケースも少なくない病気です。誤嚥そのものは完治することが難しいので予防することが重要ですが、口腔ケアによって細菌や食べかすを減らし、口腔の清潔を保つことが安全かつ効果的な予防法です。
誤嚥性肺炎
食べ物などが気管および肺に入ってしまう「誤嚥」によって生じた肺炎。
気道に食べ物や飲み物、唾液、その他の異物などが入り込むと、通常はむせる。これは異物を外に排出しようとするはたらき(反射)である。うまくむせることができないと、異物は肺に入り込む。肺に入ると排出することはできない。
胃であれば異物に付着していた細菌などは胃液によって殺菌されるが、肺にはこうした殺菌機能はない。そのため雑菌が繁殖し、肺炎を引き起こしやすい。
誤嚥性肺炎は、嚥下力が衰える高齢者などに多くみられる。食事の際の誤嚥のほか、睡眠中に唾液が気管に入ったり、胃液が逆流して気管に流れ込んだりして生じることもあるとされる。
関連サイト:
嚥下障害と誤嚥性肺炎 - 総合南東北病院
誤嚥(ごえん)性肺炎について - 武田病院グループ
ごえんせい‐はいえん【誤×嚥性肺炎】
読み方:ごえんせいはいえん
誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/25 07:46 UTC 版)
誤嚥性肺炎 | |
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神経疾患のある高齢者における誤嚥性肺炎の顕微鏡画像。異物巨細胞がみられる。 | |
概要 | |
診療科 | 救急医学,呼吸器学 |
症状 | 発熱, 咳[1] |
発症時期 | 高齢者[2] |
原因 | 老化等で起きる嚥下機能障害のために唾液や食べ物、胃液などに含まれる細菌の気道への流入 |
危険因子 | 意識レベル低下、誤嚥障害、アルコール依存症、経管栄養、口腔衛生の欠如[1] |
診断法 | 既往歴、症状、胸部X線、培養[2][1] |
鑑別 | 化学性肺炎、結核[1][2] |
合併症 | 肺膿瘍[1] |
使用する医薬品 | クリンダマイシン、メロペネム、アンピシリン・スルバクタム、モキシフロキサシン[1] |
頻度 | 患者の~10%ほどは入院必要[1] |
分類および外部参照情報 |
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)は、嚥下障害が起きているために気道に口から唾液や食べ物などに含まれる細菌が流入するか、または胃から胃液が流入してしまったことによって肺に発生する炎症。肺炎の一種[3][1]。
細菌の流入のような「感染性の誤嚥性肺炎」だけでなく、酸性の胃の内容物や胃酸が肺に流入することで発症する化学性肺炎もある。これは「非感染性の誤嚥性肺炎」の亜型に分類される[1][2]。
診断・診察
感染は数種類の細菌が原因である可能性がある[2]。リスク要因には、意識レベルの低下、嚥下障害、アルコール依存症、経管栄養、口腔の健康不良などがあげられる[1]。診断は通常、既往歴、症状、胸部X線検査、培養検査に基づいて行われる[1][2]。他の種類の肺炎と区別するのが難しい場合もある[1]。
吐物が肺に大量流入してしまった際の胃酸による化学性肺炎は、メンデルソン症候群と呼ばれる[3]。よくある徴候や症状として、発熱と咳が流入から比較的早期にみられる[1]。合併症には肺膿瘍が挙げられる[1]。
処方
治療は通常、クリンダマイシン、メロペネム、アンピシリン・スルバクタム(商品名:ユナシンなど)、モキシフロキサシンなどの抗生物質が用いられる[1]。化学性肺炎のみの患者には、抗生物質は一般的に必要ない[2]。肺炎で入院した患者のうち、約10%は誤嚥によるものである[1]。特に介護老人ホームにいる高齢者に発症することが多い[2]。男女ともに等しく発症する[2]。
疫学
日本の高齢者においては、肺炎の80%以上を誤嚥性肺炎が占め、死亡統計では第3位の疾病である[4]。毎日2万人の70歳以上の高齢者が誤嚥性肺炎により入院しており、年間医療費は4450億円と試算されている[4]。
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p DiBardino, David M.; Wunderink, Richard G. (February 2015). “Aspiration pneumonia: a review of modern trends” (英語). Journal of Critical Care 30 (1): 40-48. doi:10.1016/j.jcrc.2014.07.011. PMID 25129577.
- ^ a b c d e f g h i Ferri, Fred F. (2017) (英語). Ferri's Clinical Advisor 2018 E-Book: 5 Books in 1. Elsevier Health Sciences. p. 1006. ISBN 9780323529570. オリジナルの2017-07-31時点におけるアーカイブ。
- ^ a b “A-12 誤嚥性肺炎|一般社団法人日本呼吸器学会”. 日本呼吸器学会. 2022年11月2日閲覧。
- ^ a b 道脇幸博、⻆保徳「70 歳以上の高齢者の誤嚥性肺炎に関する総入院費の推計値」『老年歯科医学』第28巻第4号、2014年、366-368頁、doi:10.11259/jsg.28.366、 NAID 130004553403。
外部リンク
誤嚥性肺炎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/25 02:19 UTC 版)
詳細は「誤嚥性肺炎」を参照 肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、嫌気性菌など口腔内常在菌によって起こる。嚥下性肺疾患には嚥下性肺炎(通常型)、びまん性嚥下性細気管支炎、メンデルソン症候群、人工呼吸器関連肺炎(VAP)が知られている。不顕性誤嚥、顕性誤嚥等に対する対策も必要となる。嚥下訓練、口腔ケア、頭位挙上、意識の改善なども並行して行う必要がある。肺炎が重症でなければアンピシリンで治療可能な場合が多い。
※この「誤嚥性肺炎」の解説は、「気道感染」の解説の一部です。
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誤嚥性肺炎と同じ種類の言葉
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