【V-22】(ぶいにじゅうに)
Bell Boeing V-22 Osprey(オスプレイ)
(Ospreyは鷹の一種である「鶚(みさご)」を意味する。)
「統合垂直離着陸機(JVX)」としてベル・ヘリコプター社とボーイング社が共同で開発を進めている大型双発ティルトローター機で、1989年3月19日に初飛行した。
迅速な兵力展開を必要とする海兵隊のために、XV-3やXV-15といった試作機から得られたノウハウをもとに開発された。
当初から開発が難航し、配線ミスやエンジントラブルによる試作機の墜落事故が相次いだため、一時は開発を中止するべきとの非難もあったが、量産型は機体の再設計によって安全性が向上したことから海兵隊へ正式に採用され、調達が続けられている。
2000年以降、機体要因による事故は起こしていないものの、運用上の問題(後述)が懸念されたことから試験が長期間続けられ、実戦配備の開始は2005年となった。
今後は徐々にCH-46などから置き換わってゆく。
実戦配備が始まったのに伴い、機体自体の問題だけでなく、運用上の問題も指摘されている。
これまで兵員輸送用のCH-46やCH-53を護衛していたのは、AIM-9を装備したAH-1だった。
しかしMV-22が実用化されると、AH-1Zでは300ktという通常のヘリコプターの1.5倍の速度で飛行するMV-22に追いつくことができず、さりとてAV-8Bでは逆に速すぎてしまう。
MV-22自身に空対空ミサイルを装備することなども検討されているが、もともとハードポイントを持たないため現実的ではなく、海兵隊当局はこの問題に頭を痛めているという。
また、サイドバイサイドローターの形式を採り、同クラスのヘリコプターに比べて小径のローターを持ち、それでいてダウンウォッシュが低速という特徴を持つ当機は、深刻なボルテックスリングを生じてしまうことも指摘されている。
これはダウンウォッシュによりローターの周囲に環状の渦流を生じるもので、機体を素早く降下させるとローターがダウンウォッシュを追い越してしまい、結果として揚力が失われてしまう危険がある。
緩やかな降下をすれば問題はないのだが、海兵隊などの強襲任務では素早い降下が要求されるため、本来の目的には適さないのではないかといわれている。
この問題は2000年に発生した墜落事故の原因であり、対策として急降下に対する警報装置が追加されたり、緊急時には水平推力モードへ移行する手順が定められたりした。
強襲作戦時にはヘリコプターよりも低空での侵入をすることになると見られる。
またヘリコプターに比べ緊急時のオートローテーションが難しいとされているが、ヘリコプターでオートローテーションが実施されるような高速巡航時に本機は飛行機モードで飛行するため滑空で不時着することが想定されており、米軍ではオートローテーション自体のメリットが薄いとしている。
日本では、2012年10月から沖縄の普天間基地に配備予定である。
関連:AW609
参考リンク:
ボーイング社のHP内にあるV-22のHP
http://www.boeing.com/rotorcraft/military/v22/
スペックデータ
乗員 | 4名+兵員24名 |
全長 | 17.47m(ピトー管含まず) |
全高 | 6.63m(VTOL時) |
全幅 | 25.54m(ローター含む) |
ローター直径 | 11.58m |
空虚重量 | 15,032kg |
最大離陸重量 | 23,981kg(垂直離陸時) 27,442kg(短距離離陸時) |
エンジン | ロールスロイスアリソン T406ターボシャフトエンジン(出力6,150shp)×2基 |
最高速度 | 305kt(通常時) 100kt(ヘリモード時) |
実用上昇限度 | 7,925m |
上昇率 | 11.8m/s |
航続距離 | 強襲揚陸時:515nm(953km) ペイロード4,536kg、垂直離陸: 350nm (648km) 以上 ペイロード2,721kg、垂直離陸):700nm (1,295km) 以上 ペイロード4,536kg、短距離離陸:950nm (1,758km) 以上 |
フェリー航続距離 | 1,940nm (3,593km)(補助燃料タンク使用時) |
作戦行動半径(最大) | 370nm(実用上はそれ以下(300~325nm)) |
派生型
- V-22A
初期試作型。墜落事故により凍結。
- MV-22B
海兵隊向けの強襲輸送型。360機導入予定。
- CV-22B
米空軍向けの輸送および特殊作戦型。50機導入予定。
- HV-22B
米海軍向けの戦闘捜索救難・特殊作戦型。48機導入予定だが、具体的な計画は示されていない。
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