CD不況の原因・背景(日本)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/11 06:01 UTC 版)
「CD不況」の記事における「CD不況の原因・背景(日本)」の解説
CD不況の原因や背景としては、以下のような事柄が挙げられている。 音楽市場そのものの縮小 コンテンツ市場の多様化・音楽への無関心 インターネット・携帯電話などの普及によって人々の消費様式が多様化し、それによって人々が音楽のために使う消費の割合が下がったと考えられる。特に若者はCDの購入よりも、携帯電話の通話料金に消費を回すようになった。 音楽流通市場の変遷 レンタル・中古市場の隆盛 レンタル店(かつては貸しレコード屋)・中古レコード古物商と伴に、20世紀から存在していたが、レンタルによる著作権料の支払いは一説にレンタル市場約600億円のうちの90億円(15%)程度に過ぎず、交易条件として、新品CD店(売上の70%程度がレコード会社への原価に消える)よりも有利であった。このような中で、特に2000年代以降は、株式上場などを通じて資本力を蓄えた一部の大型レンタル店が、新品CD実売の10分の1程度の料金で大量にレンタルを行い、また需要期を過ぎた後には同様に10分の1程度の価格で中古市場へ売り払う等の市場行動に出たため、「消費者にとっては価格弾力性の高い」「しかし権利者にとっては十分な対価が支払われない」状況を生む結果となった。中古市場ではECサイトやインターネット検索による技術革新により、遠方からも最安値の中古盤を容易に手に入れられる状況となったが、価格暴落と需要の長期低迷に苦しんでいる。 違法アップロードの蔓延 動画サイトなどで音楽ファイルが違法にアップロードされ、事実上無料で視聴できる状況になったことも、CDの売上が減じた一因とされている。そのため後述する規格が導入された。 ネット配信の普及 2010年代後半以降、前述したようにサブスクリプションサービスの普及によるビジネスモデルの変化も、CD売上減少の大きな要因となっている。当初はサブスクサービスに消極的だった日本の音楽業界であるが、エイベックスが出資する「AWA」やソニー・ミュージックエンタテインメントが出資する「LINE MUSIC」などのサービスが2015年に相次ぎ開始された。しばらくしてから、多くの邦楽アーティストの配信が解禁されたことで、徐々にサブスクに頼らざるを得ない状況に変化している。音楽コンサルタントの榎本幹朗は、日本は再販制度により元々CDの価格が高かったことから音楽に対する消費額も高く、「欧米と異なり、サブスクへの移行だけでは稼ぎが足りない」と指摘している。 CDと言うメディアが抱えた問題 コピーコントロールCDの導入 コピーコントロールCD(以下「CCCD」)は、前述した違法アップロードの蔓延の防止を目的として、鳴り物入りで企画されたものである。しかし、再生保証プレーヤーが全く無く(万一の場合の故障時に保証が効かない)、なおかつ音質も通常のCDより劣っていた。レコード会社は、CCCDは音楽市場に受け入れられたと早合点したが、実際にはCCCDはリスキーな規格であるため、多くの音楽ファンが買わなくなり、そのまま市場から去った。コピーコントロールCD#問題点も参照。 次世代規格の失敗 1999年よりCDに代わる次世代オーディオ規格としてSACD対DVD-Audioが争ってきたが、どちらもメディア交代するだけの普及には至らず、普及推進のためにテコ入れの策を図るも定着すらならなかった。そもそもがCDより高音質であることを消費者は望んでいなかった。やがて当時としてはCDより圧縮された音源になるiPod・iTunesなどのデジタル音楽配信主体へと流通形態が変化していった。また日本の音楽ビジネスが物理媒体(CD)中心による音楽保護主義に偏り、デジタル音楽配信に対する取り組みのまずさも指摘されている。
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